30 / 41
7章 三人暮らし
30話
しおりを挟む
「リヒトー! 一緒に食べよー!」
お昼休み、椎木が隣のクラスから大きな声を上げて入ってくる。
もちろんクラスにいる人はみんな、何事かとそちらを注目する。
けれど椎木は構うことなく、さも当然のように志田の前の席に座る。
「なんだよお前、自分のクラスで食えよ……」
「いーじゃん、家族なんだし!」
いちいち大声で言うので、クラスメイトは嫌でもそれを聞いてしまい、歓声を上げることになる。
「家族?」
「付き合ってるってこと!?」
あちこちで二人の関係を想像して話し始める。
学校で起きるエンターテインメントとしては最大級のものに違いない。美男美女のスキャンダル。
「あらあら、浮気許していいの、奥さん?」
そうやって、真理子をからかってくるのは美紀。
「奥さんじゃないし……」
心持ちはまったく穏やかではない。
といってここで間に入って邪魔するのも何か違う。
真理子と志田が付き合っているのは美紀しかしらない。高校生が一緒に暮らしていることが明らかになったら、いろいろ具合が悪いからだ。
「じゃあ、あたしが文句言ってこようか?」
美紀が言う。
美紀には椎木のことを話してある。そうじゃないと、こんなときにまっさきに飛び込むかもしれないから。
「いいよ、別に」
椎木が人の話を聞くとはとうてい思えない。
「ホントにいいの?」
よくない。よくないけど……。
こんなことを気にして不機嫌になる自分が嫌だった。
「え? なにこれ……あり得ないんだけど……」
今日は志田宅で三人での夕食。
出されたものに椎木は絶句する。
そう、志田の特製カツシチューである。
「嫌なら食べなくていいよ」
真理子は冷たくいい放つ。
椎木はかつての自分の姿なのだけど、弁護する気にはまったくならない。
「だって、シチューにご飯だよ? それにカツ? カレーじゃないんだからさー!」
志田は何も言わず、カツシチューは食べ始める。
「なんか汚くない? 生理的にマジ無理」
さすがにそのセリフに、志田はぴくっとまゆを動かすが、なんとかスルーした。
「あたしいらない。外で食べてくるね」
椎木はがたっと席を立つ。
「ちょっとお! 志田くんが作ってくれたのに残すの?」
「え? 食べなくていいって言わなかった?」
言った。確かに言った。
でもまさか、その通りに返されるとは思わなかった。
先生が「嫌なら帰っていいぞ」と言ってほんとに帰ってしまうやつだ。
「そういうことじゃなくてさ……」
「じゃなくてなに?」
「人が作ってくれたものを残すなんて失礼でしょ」
「なにそれ、説教? あんたはあたしのお母さんなの?」
真理子の怒りのボルテージが一段階上がる。
相手の乗りに絶対に合わせちゃいけない。ここは冷静に、冷静に。
「……ただの敬意の問題。あなたがどうしようと勝手だけど、志田くんを傷つけるのは絶対に許さない」
「へー、かっこいい! さっすが彼女!」
怒りはさらに高まる。でも我慢。なんとか我慢。死ぬ気で我慢。
「あのね……。茶化さないでくれる? 私は真剣に言ってるんだけど」
「あたしも真剣だけど? あたしはこんなの食べたくないと言ってるの。わかる? あんたはリヒトが好きだからヒスってるだけ。マジ迷惑なんだけど」
怒りゲージはマックス。
もう怒りはためられない。上限振り切って血管が千切れてしまう。
感情任せに動くのはみっともないとわかっているけれど、もはや抑えが効かなかった。椎木のために憤死するよりか、怒りをぶつけたほうがいい。
「だからなに!? ここは志田くんの家でしょ! あなたは何か言える立場にない! 嫌なら出ていきなさいよ!!」
心の限り、声の限り叫んでしまった。
感情任せに言い放っただけだけど、自分の本意とほぼ一緒だと思う。
でも、気持ちを解放したからといってまったく気持ちよくなかった。
椎木はまさか真理子が反撃してくると思っていなかったようで、もともと大きな目をさらに大きく開けて呆然としている。
「あっそ……。じゃあ出て行くわ」
椎木はそう言ってスマホだけ持つと、出て行ってしまう。
けろっとしている。その行動に迷いはまったくない。
「おい、アイラ!」
これまで静観していた志田だったが、さすがに立ち上がって椎木を追う。
だが立ち止まって真理子を見る。
困惑の表情。さっきまで真っ赤だった顔が今では真っ青になっている。明らかに普通じゃなかった。
志田は迷う。このまま椎木を追うか、真理子をフォローするべきか。
「くっ……!」
時は一刻を争う。志田は悩んだあげく、椎木を追って外に出てしまった。
部屋に残された真理子は力なく床に崩れ落ちる。
「ああ……ダメだ、私……」
すさまじい自己嫌悪。
一番やってはいけないと思っていたことをやってしまった。
それは感情のままに怒鳴り、人を非難すること。
「なにやってんだ……。これじゃお母さんと一緒……」
この世で一番なりたくない自分になってしまった。心の奥底、深層心理、遺伝にレベルで嫌っているもの。それと同じことをしてしまっている。
私はやはりあの母の子なんだと、ぶわっと冷や汗が吹き出してくる。
いったい何の呪いなのか。あの地獄である家を飛び出して天国に来たのに、いまだ自分を苦しめてくる。
「はあはあはあ……」
過呼吸になりそうだった。
(落ち着いて落ち着いて……。もう前とは違うんだから……)
床に寝転がって落ち着くまでに安静にする。
志田は椎木を追いかけて外に出たまま、まだ帰って来ない。
「志田くん……」
ようやく意識がそっちに向けられるようになる。自分は志田に置いて行かれてしまった。
その事実を認識して、今度は自然と涙があふれてきた。
圧倒的な絶望感に襲われる。
あの状況であれば、飛び出していった椎木を追うのがベストなのは、ちゃんと考えればわかること。椎木は住む家がないからここにいる。そこを飛び出したらどこへ行くのか。
でも、真理子にその冷静さはない。
志田は真理子より椎木を選んだ。
そうじゃないのにそう思ってしまう。そんな考え捨てよう、振り切ろうとしても、すぐに頭に浮かんできてしまう。
涙が止まってもまたすぐ流れてくる。永遠のループ。
(そうだ。シチュー食べなきゃ)
何かを食べる気分じゃないはずなのに、不思議と志田の作ってくれたカツシチューを食べないといけないと思った。
出されたものを食べるのは当たり前のことでもあるし、それができるのは椎木との違いでもある。
そして真理子との数少ない志田とのつながりでもあった。
真理子は志田の帰りを待ちつつ、カツシチューを食べ続けた。
(なにやってんだろ、私……)
幸せになるためにここに来たのに、ずっと涙を流し続けている。これじゃまた目がはれあがってしまう。
こんな情けない姿を志田には見せられないので、食器を洗うとすぐに自分の部屋に戻った。
布団をかぶって横になっていると、しばらくして志田が帰って来る。
「アイザワ?」
部屋のドアを志田がノックする。
「ごめん。お腹いっぱいで横になってる」
わかりやすい言い訳。
そしてしゃくりあげるような声なので、泣いているのはすぐにバレる。
志田もそれをわかっていて、中に入ることなく、ドア越しにしゃべり始める。
「アイラは友達の家に泊まるって」
「そうなんだ……」
「荷物はここにあるし、すぐ戻ってくるとは思うけど」
椎木にはすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
自分がヒステリックになってしまったため、結果的に家から追い出してしまった。
(嫉妬なのかな……)
自分の気持ちがよくわからなかった。
志田を独占したい気持ちはあるし、でもそれが強すぎて椎木とぶつかってしまっている感じもする。
(私、八方美人なんだ……)
どこにでもいい顔をする人のこと。
まさに自分が学校でやっていたことだったりする。誰に対しても好かれるように行動して、何一つダメなところがないように見せかける。ダメなところばかりだし、美人でもないのに。
そして今度は、志田に対して好かれるいい子になりたいし、椎木が嫌なのに志田のことも助けてあげたいと思っている。
でも全方位いい顔ができず、困ってしまっている。そんないい子ちゃんをしたがる自分に嫌気が差す。
自分の感情をどこにおいていいのか。完全に迷子になってしまった。
お昼休み、椎木が隣のクラスから大きな声を上げて入ってくる。
もちろんクラスにいる人はみんな、何事かとそちらを注目する。
けれど椎木は構うことなく、さも当然のように志田の前の席に座る。
「なんだよお前、自分のクラスで食えよ……」
「いーじゃん、家族なんだし!」
いちいち大声で言うので、クラスメイトは嫌でもそれを聞いてしまい、歓声を上げることになる。
「家族?」
「付き合ってるってこと!?」
あちこちで二人の関係を想像して話し始める。
学校で起きるエンターテインメントとしては最大級のものに違いない。美男美女のスキャンダル。
「あらあら、浮気許していいの、奥さん?」
そうやって、真理子をからかってくるのは美紀。
「奥さんじゃないし……」
心持ちはまったく穏やかではない。
といってここで間に入って邪魔するのも何か違う。
真理子と志田が付き合っているのは美紀しかしらない。高校生が一緒に暮らしていることが明らかになったら、いろいろ具合が悪いからだ。
「じゃあ、あたしが文句言ってこようか?」
美紀が言う。
美紀には椎木のことを話してある。そうじゃないと、こんなときにまっさきに飛び込むかもしれないから。
「いいよ、別に」
椎木が人の話を聞くとはとうてい思えない。
「ホントにいいの?」
よくない。よくないけど……。
こんなことを気にして不機嫌になる自分が嫌だった。
「え? なにこれ……あり得ないんだけど……」
今日は志田宅で三人での夕食。
出されたものに椎木は絶句する。
そう、志田の特製カツシチューである。
「嫌なら食べなくていいよ」
真理子は冷たくいい放つ。
椎木はかつての自分の姿なのだけど、弁護する気にはまったくならない。
「だって、シチューにご飯だよ? それにカツ? カレーじゃないんだからさー!」
志田は何も言わず、カツシチューは食べ始める。
「なんか汚くない? 生理的にマジ無理」
さすがにそのセリフに、志田はぴくっとまゆを動かすが、なんとかスルーした。
「あたしいらない。外で食べてくるね」
椎木はがたっと席を立つ。
「ちょっとお! 志田くんが作ってくれたのに残すの?」
「え? 食べなくていいって言わなかった?」
言った。確かに言った。
でもまさか、その通りに返されるとは思わなかった。
先生が「嫌なら帰っていいぞ」と言ってほんとに帰ってしまうやつだ。
「そういうことじゃなくてさ……」
「じゃなくてなに?」
「人が作ってくれたものを残すなんて失礼でしょ」
「なにそれ、説教? あんたはあたしのお母さんなの?」
真理子の怒りのボルテージが一段階上がる。
相手の乗りに絶対に合わせちゃいけない。ここは冷静に、冷静に。
「……ただの敬意の問題。あなたがどうしようと勝手だけど、志田くんを傷つけるのは絶対に許さない」
「へー、かっこいい! さっすが彼女!」
怒りはさらに高まる。でも我慢。なんとか我慢。死ぬ気で我慢。
「あのね……。茶化さないでくれる? 私は真剣に言ってるんだけど」
「あたしも真剣だけど? あたしはこんなの食べたくないと言ってるの。わかる? あんたはリヒトが好きだからヒスってるだけ。マジ迷惑なんだけど」
怒りゲージはマックス。
もう怒りはためられない。上限振り切って血管が千切れてしまう。
感情任せに動くのはみっともないとわかっているけれど、もはや抑えが効かなかった。椎木のために憤死するよりか、怒りをぶつけたほうがいい。
「だからなに!? ここは志田くんの家でしょ! あなたは何か言える立場にない! 嫌なら出ていきなさいよ!!」
心の限り、声の限り叫んでしまった。
感情任せに言い放っただけだけど、自分の本意とほぼ一緒だと思う。
でも、気持ちを解放したからといってまったく気持ちよくなかった。
椎木はまさか真理子が反撃してくると思っていなかったようで、もともと大きな目をさらに大きく開けて呆然としている。
「あっそ……。じゃあ出て行くわ」
椎木はそう言ってスマホだけ持つと、出て行ってしまう。
けろっとしている。その行動に迷いはまったくない。
「おい、アイラ!」
これまで静観していた志田だったが、さすがに立ち上がって椎木を追う。
だが立ち止まって真理子を見る。
困惑の表情。さっきまで真っ赤だった顔が今では真っ青になっている。明らかに普通じゃなかった。
志田は迷う。このまま椎木を追うか、真理子をフォローするべきか。
「くっ……!」
時は一刻を争う。志田は悩んだあげく、椎木を追って外に出てしまった。
部屋に残された真理子は力なく床に崩れ落ちる。
「ああ……ダメだ、私……」
すさまじい自己嫌悪。
一番やってはいけないと思っていたことをやってしまった。
それは感情のままに怒鳴り、人を非難すること。
「なにやってんだ……。これじゃお母さんと一緒……」
この世で一番なりたくない自分になってしまった。心の奥底、深層心理、遺伝にレベルで嫌っているもの。それと同じことをしてしまっている。
私はやはりあの母の子なんだと、ぶわっと冷や汗が吹き出してくる。
いったい何の呪いなのか。あの地獄である家を飛び出して天国に来たのに、いまだ自分を苦しめてくる。
「はあはあはあ……」
過呼吸になりそうだった。
(落ち着いて落ち着いて……。もう前とは違うんだから……)
床に寝転がって落ち着くまでに安静にする。
志田は椎木を追いかけて外に出たまま、まだ帰って来ない。
「志田くん……」
ようやく意識がそっちに向けられるようになる。自分は志田に置いて行かれてしまった。
その事実を認識して、今度は自然と涙があふれてきた。
圧倒的な絶望感に襲われる。
あの状況であれば、飛び出していった椎木を追うのがベストなのは、ちゃんと考えればわかること。椎木は住む家がないからここにいる。そこを飛び出したらどこへ行くのか。
でも、真理子にその冷静さはない。
志田は真理子より椎木を選んだ。
そうじゃないのにそう思ってしまう。そんな考え捨てよう、振り切ろうとしても、すぐに頭に浮かんできてしまう。
涙が止まってもまたすぐ流れてくる。永遠のループ。
(そうだ。シチュー食べなきゃ)
何かを食べる気分じゃないはずなのに、不思議と志田の作ってくれたカツシチューを食べないといけないと思った。
出されたものを食べるのは当たり前のことでもあるし、それができるのは椎木との違いでもある。
そして真理子との数少ない志田とのつながりでもあった。
真理子は志田の帰りを待ちつつ、カツシチューを食べ続けた。
(なにやってんだろ、私……)
幸せになるためにここに来たのに、ずっと涙を流し続けている。これじゃまた目がはれあがってしまう。
こんな情けない姿を志田には見せられないので、食器を洗うとすぐに自分の部屋に戻った。
布団をかぶって横になっていると、しばらくして志田が帰って来る。
「アイザワ?」
部屋のドアを志田がノックする。
「ごめん。お腹いっぱいで横になってる」
わかりやすい言い訳。
そしてしゃくりあげるような声なので、泣いているのはすぐにバレる。
志田もそれをわかっていて、中に入ることなく、ドア越しにしゃべり始める。
「アイラは友達の家に泊まるって」
「そうなんだ……」
「荷物はここにあるし、すぐ戻ってくるとは思うけど」
椎木にはすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
自分がヒステリックになってしまったため、結果的に家から追い出してしまった。
(嫉妬なのかな……)
自分の気持ちがよくわからなかった。
志田を独占したい気持ちはあるし、でもそれが強すぎて椎木とぶつかってしまっている感じもする。
(私、八方美人なんだ……)
どこにでもいい顔をする人のこと。
まさに自分が学校でやっていたことだったりする。誰に対しても好かれるように行動して、何一つダメなところがないように見せかける。ダメなところばかりだし、美人でもないのに。
そして今度は、志田に対して好かれるいい子になりたいし、椎木が嫌なのに志田のことも助けてあげたいと思っている。
でも全方位いい顔ができず、困ってしまっている。そんないい子ちゃんをしたがる自分に嫌気が差す。
自分の感情をどこにおいていいのか。完全に迷子になってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
翡翠の歌姫-皇帝が封じた声【中華サスペンス×切ない恋】
雪城 冴 (ゆきしろ さえ)
キャラ文芸
宮廷歌姫の“声”は、かつて皇帝が封じた禁断の力? 翠蓮は孤児と蔑まれるが、才能で皇子や皇后の目を引き、後宮の争いや命の危機に巻き込まれる――
その声の力に怯えながらも、歌うことをやめられない翠蓮(スイレン)に近づくのは、真逆のタイプの二人の皇子。
優しく寄り添う“学”の皇子・蒼瑛(ソウエイ)と、危険な香りをまとう“武”の皇子・炎辰(エンシン)。
誰が味方で、誰が“声”を利用しようとしているの――?声に導かれ、三人は王家が隠し続けた運命へと引き寄せられていく。
【中華サスペンス×切ない恋】
ミステリー要素あり、ドロドロな重い話あり、身分違いの恋あり
旧題:翡翠の歌姫と2人の王子
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる