8 / 33
|序《はじまり》
|道程《みちのり》 陸
しおりを挟む『ぞぅーさん、ぞぉーさん、お~はなが長いのね!』
「ぱおーん」
『そーよ! かあさんも、な~がいのよぉ~』
「ぱおーん」
のっしりのっしりと、砂漠から出て早々にのんびり移動していた象と呼ばれる生物の群れに遭遇し、興奮した神がノコノコと勝手に群れを追い始めてから結構な日にちが経っていて、本来予定していた旅路から丸っきり逸れ、目的地からどんどん遠ざかるようにますます南下していた。
何故か、象の子と神たちが遊んでいるうちに群れの一員として象たちに認識されてしまったらしい。少しでも群れから離れようと動くと、即座に長い鼻を巻き付けるようにして強制的に群れの中に戻されてしまっていた。面倒な……。
その行動に可愛い可愛いと神とアホな魔女は当初だけはしゃいでいたが、さすがにもうそろそろ飽きて来たらしい。象の背で器用に寝転がったまま、ここ数日は特に壊れたように同じ言動を繰り返していた。……合いの手らしきものを入れているアホな魔女に関しては、もはや既に狐から象に鞍替えし始めていた。狐なのに。いや、魔女だが。……いちいち感化されやすいアホだ。
そもそもこんな状況に陥ってしまったのは、人の子ではない神や魔女の類が侵してはならない絶対的な領分がある為だ。人の子みたいに少しでも薄汚れでもしていれば一思いに葬り去れたが、残念ながらそれは許されていない。神がほいほい追いかけていなければ、今頃こんな面倒なことには……チッ、クソうぜぇ。
ガオオオオオオオオオ!!!!
「――お迎えに来たぞ! わっはっは!」
神が『s、o、s! へるぷみー!』と定期的に叫んで呼んでいたらしい迎えがやっとやってきたようだ。人の子にとっては猛獣と言われる生物に乗った、実体の肌にまで力を浄化しきれず溜め込んでる証が漏れて蝕んでるというのに、やたらと能天気で活発な魔女だった。どことなくアホな魔女と同類の匂いがするな……。
神が歓喜して象の背から飛ぶように滑り落ちた。アホな魔女がそんな神に続こうとして飛び、盛大に地に転がった。飛べない実体であることを忘れていたらしい。アホだ。
「よーしよし! 君たち御苦労! 後はボクが引き受けるぞー!」
ぱおお~ん。
新手の魔女の一声で、あれほどしつこかった象たちが挨拶代わりに鼻を巻き付けてからあっさりと去っていった。その際、アホな魔女は内臓が出そうなほど悶絶したような声で、最後の別れにきつく締め上げられ可愛がられていた。自分から巻きつかれに行ったからな。アホだ。
そんな灰になりかけてるアホな魔女とのっしのっしとゆっくり去って行く象の群れを後目に、新手の魔女と神が『助かったよ、ガザニアちゃん』「わっはっは」と会話? をしていた。
そんなこんなで流されるように新手の魔女の住まう村に暫く滞在することになった、が――。
「わーっはっは! 手合わせだぞ!」
「断る」
「わーっはっは! とうっ!」
などと、昼夜問わず問答無用で襲い掛かってきてアホな魔女とは違う方面で面倒な魔女であった。おそらく、人の子相手では決して出来ないだろう浄化代わりの行為なのだろうが、滞在費代わりと勝手に神たちに決められて付き合わされるこちらは迷惑極まりない。毎回毎回たった一発で沈められるとはいえ、何度も何度も来られると相手をするのは非常に面倒である。なので出来れば早々に出発したかったのだが……なにせ時期が少々どころではなく悪かった。
聞けば、どうやらちょうど動物達の行動が活発になる時期と重なっているらしい。せっかくあの群れから離れられたのに、また別の群れに捕まった、なんてことになったらまたしても余計に無駄な時間を潰すことになる。
……出発を強行してもいいだろうが、あの神たちのことだ、絶対確実にどこぞの群れに捕まるに違いない。仕方がないので、今は待ち時であった。
「ボクは立派な腰蓑がいいぞ!」
『それ、ただの原始人では?』
「原住民かもしれません、主よ」
もちろん、相変わらずチラチラとこちらを伺いながら為される、非常にアホな会話の輪に加わることはしない。
「これは原点回帰だぞ! わーっはっは!」
『じゃあ色々ミックスしちゃう? 原色で』
「なるほど。何やら趣き深い選択ですね、主よ」
絶対に。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
烙印騎士と四十四番目の神
赤星 治
ファンタジー
生前、神官の策に嵌り王命で処刑された第三騎士団長・ジェイク=シュバルトは、意図せず転生してしまう。
ジェイクを転生させた女神・ベルメアから、神昇格試練の話を聞かされるのだが、理解の追いつかない状況でベルメアが絶望してしまう蛮行を繰り広げる。
神官への恨みを晴らす事を目的とするジェイクと、試練達成を決意するベルメア。
一人と一柱の前途多難、堅忍不抜の物語。
【【低閲覧数覚悟の報告!!!】】
本作は、異世界転生ものではありますが、
・転生先で順風満帆ライフ
・楽々難所攻略
・主人公ハーレム展開
・序盤から最強設定
・RPGで登場する定番モンスターはいない
といった上記の異世界転生モノ設定はございませんのでご了承ください。
※【訂正】二週間に数話投稿に変更致しましたm(_ _)m
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!
SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、
帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。
性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、
お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。
(こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる