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|序《はじまり》
|道程《みちのり》 陸
しおりを挟む『ぞぅーさん、ぞぉーさん、お~はなが長いのね!』
「ぱおーん」
『そーよ! かあさんも、な~がいのよぉ~』
「ぱおーん」
のっしりのっしりと、砂漠から出て早々にのんびり移動していた象と呼ばれる生物の群れに遭遇し、興奮した神がノコノコと勝手に群れを追い始めてから結構な日にちが経っていて、本来予定していた旅路から丸っきり逸れ、目的地からどんどん遠ざかるようにますます南下していた。
何故か、象の子と神たちが遊んでいるうちに群れの一員として象たちに認識されてしまったらしい。少しでも群れから離れようと動くと、即座に長い鼻を巻き付けるようにして強制的に群れの中に戻されてしまっていた。面倒な……。
その行動に可愛い可愛いと神とアホな魔女は当初だけはしゃいでいたが、さすがにもうそろそろ飽きて来たらしい。象の背で器用に寝転がったまま、ここ数日は特に壊れたように同じ言動を繰り返していた。……合いの手らしきものを入れているアホな魔女に関しては、もはや既に狐から象に鞍替えし始めていた。狐なのに。いや、魔女だが。……いちいち感化されやすいアホだ。
そもそもこんな状況に陥ってしまったのは、人の子ではない神や魔女の類が侵してはならない絶対的な領分がある為だ。人の子みたいに少しでも薄汚れでもしていれば一思いに葬り去れたが、残念ながらそれは許されていない。神がほいほい追いかけていなければ、今頃こんな面倒なことには……チッ、クソうぜぇ。
ガオオオオオオオオオ!!!!
「――お迎えに来たぞ! わっはっは!」
神が『s、o、s! へるぷみー!』と定期的に叫んで呼んでいたらしい迎えがやっとやってきたようだ。人の子にとっては猛獣と言われる生物に乗った、実体の肌にまで力を浄化しきれず溜め込んでる証が漏れて蝕んでるというのに、やたらと能天気で活発な魔女だった。どことなくアホな魔女と同類の匂いがするな……。
神が歓喜して象の背から飛ぶように滑り落ちた。アホな魔女がそんな神に続こうとして飛び、盛大に地に転がった。飛べない実体であることを忘れていたらしい。アホだ。
「よーしよし! 君たち御苦労! 後はボクが引き受けるぞー!」
ぱおお~ん。
新手の魔女の一声で、あれほどしつこかった象たちが挨拶代わりに鼻を巻き付けてからあっさりと去っていった。その際、アホな魔女は内臓が出そうなほど悶絶したような声で、最後の別れにきつく締め上げられ可愛がられていた。自分から巻きつかれに行ったからな。アホだ。
そんな灰になりかけてるアホな魔女とのっしのっしとゆっくり去って行く象の群れを後目に、新手の魔女と神が『助かったよ、ガザニアちゃん』「わっはっは」と会話? をしていた。
そんなこんなで流されるように新手の魔女の住まう村に暫く滞在することになった、が――。
「わーっはっは! 手合わせだぞ!」
「断る」
「わーっはっは! とうっ!」
などと、昼夜問わず問答無用で襲い掛かってきてアホな魔女とは違う方面で面倒な魔女であった。おそらく、人の子相手では決して出来ないだろう浄化代わりの行為なのだろうが、滞在費代わりと勝手に神たちに決められて付き合わされるこちらは迷惑極まりない。毎回毎回たった一発で沈められるとはいえ、何度も何度も来られると相手をするのは非常に面倒である。なので出来れば早々に出発したかったのだが……なにせ時期が少々どころではなく悪かった。
聞けば、どうやらちょうど動物達の行動が活発になる時期と重なっているらしい。せっかくあの群れから離れられたのに、また別の群れに捕まった、なんてことになったらまたしても余計に無駄な時間を潰すことになる。
……出発を強行してもいいだろうが、あの神たちのことだ、絶対確実にどこぞの群れに捕まるに違いない。仕方がないので、今は待ち時であった。
「ボクは立派な腰蓑がいいぞ!」
『それ、ただの原始人では?』
「原住民かもしれません、主よ」
もちろん、相変わらずチラチラとこちらを伺いながら為される、非常にアホな会話の輪に加わることはしない。
「これは原点回帰だぞ! わーっはっは!」
『じゃあ色々ミックスしちゃう? 原色で』
「なるほど。何やら趣き深い選択ですね、主よ」
絶対に。
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