不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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14.その日

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 咲恵の、衝撃的な告白を聞いてボク自身色々考えるところもあって、あっという間に一週間がたってしまった。その間にも、メールで咲恵とは連絡を取っていたのだけれど、約束の具体的な事はお互いに触れないまま過ぎてしまった。期待というと何か不謹慎に思えてしまう。不安というと自分の力不足を感じてしまう。もう少し時間が欲しかったというと結局は考えはまとまらないのだろうなと思う。

 少し時間に余裕を持って自宅を出て、電車に乗り待ち合わせの駅に着いた。改札口を出て駅前の広場に目をやると、咲恵の姿が見えた。思わずスマホと時計を見る。まだ、待ち合わせに時間まで30分以上ある。咲恵は薄ピンク色のワンピース姿で、風に髪を揺らしながら目線を少しあげて空を見ているようだった。初めて会った時よりも一層、清楚で可憐に見えた。ボクは、これから起こるであろう事を考えて、後ろめたさで心がいっぱいになりそうだ。電動車椅子のスティックを多めに倒して、わざと真正面のポジションから近づく。

「あっ、瑞樹さん。こんにちは」

 そんなに近づく前に咲恵は気づいてくれて、ぴょこんと頭を下げた。

「どうしたんですか、こんなに早く待ってるなんて。ぼくが、時間を間違えたのかとビックリしましたよ」

「すみません。なんか早く目が覚めてしまって。支度が出来たら落ち着かなくて、早く来てしまいました。でも、瑞樹さんだって十分早いと思いますけど」

「そうですよね。ははは、ボクも落ち着かなくて」

 二人とも、照れ隠しのように笑い合った。

「お昼ご飯、ほんとにホテルのルームサービスでいいのですか」

「はい。ルームサービスなんてしたことないし。初めてのことはドキドキしませんか」

「高級ホテルのルームサービスではないですけどね」

「いいんです。それでも」

「わかりました。じゃあ、行きましょうか」

「ええ」

 咲恵は、ボクの隣に立ち歩き出した。駅の横のガードをくぐると、駅前の喧噪から一気に静かになる。隣を歩く咲恵の靴音と、木漏れ日を揺らす風の音が耳に届いた。

 いつものホテルに着くと、前と同じルームナンバーを選択して部屋に入る。ソファーに腰を下ろした咲恵が、ルームサービスのメニューを開いて何を頼もうかと迷っている横でボクは落ち着かない鼓動を気づかれないように鎮めていた。二人は軽めのメニューを頼み、おしゃべりをしながらゆっくりと食事をした。食べ終わった後、少しの気まずい沈黙を破ったのは咲恵だった。

「あのぉ、お風呂に入りましょうか」

「ほんとにいいの?」

「この前にも言いましたが、わたしはやっぱり記憶の上書きをしたいと決めてきましたから」

「ボクも、咲恵さんの希望は、叶えてあげたいと思ってる。でも、これでいいのかなとも思ってる」

「いいんです。これで、わたしのなにかが変わる気がしてますから。お風呂はお湯を入れるんですよね」

「うん、わかるかな」

「はい、たぶん。入れてきますね。わかんなかったら聞きに来ますから」

 咲恵は立ち上がって、バスルームに向かう。少しすると、お湯を入れる音がして咲恵が戻ってきた。

「瑞樹さん、服を脱ぐの手伝っていいですか」

「咲恵さん、ボクも咲恵さんの服を脱がしてもいいですか」

「じゃあ、脱がしっこしましょうか。その方が恥ずかしくなさそうですし」

「いや、もっと恥ずかしいかもしれないですよ」

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

 咲恵は自分に言い聞かせるように言った。

「じゃあ、わたしからね」 

 そう言ってボクのTシャツに手をかけて、ゆっくりと上にめくりあげた。

「じゃあ、次はボクだね。ちょっと後ろ向いて」

 上半身を裸にされたボクは、咲恵のワンピースのファスナーに手をかけた。何をされるのか理解した咲恵は、少ししゃがんでボクの高さに合わせてくれた。一番上のフックを外してファスナーを降ろしていくと、白い背中とピンクのブラジャーが露わになる。最後までファスナーを降ろすとおそろいの色をしたパンティーが見えた。ボクは、咲恵の肩からワンピースを外して足下に落とした。思っていたよりはっきりとしたウエストのくびれが現れて、ボクは息をのんだ。

「咲恵さん、こちらを向いてくれる」

 そう言うと、紅潮した咲恵の顔がこちらを向いた。
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