13 / 119
13.新しい記憶へ
しおりを挟む
咲恵の突然の提案に、ボクは戸惑いながら彼女に言った。
「それは、どういう意味ですか」
「弟にしたような行為を瑞樹さんとして、記憶を上書き出来ないかなと思ったんです。今は弟とした行為の記憶しかないので、そのことを思い出してしまうしいつまでもそれじゃ辛いばかりだと考えました」
「でも、今日はそんなつもりでお誘いしたわけでもないし・・・」
「わたし、ここに来る前に言いましたよね。お話が出来たなら、何をされてもいいと」
「それは聞きましたが、それは出来ません。まるで、咲恵さん告白を人質に取ってるみたいで後ろめたいです」
咲恵は、クスッと笑って言った。
「真面目なんですね」
「そんなことはないのですけど」
「あー、わたし、瑞樹さんに振られてしまいましたね。弟にあんなことした女ですもんね。仕方ないです」
「そんなことないですよ。勇気を出して告白してくれたんだから。ただ、それを否定するためにボクとやろうとしてるように思えて。咲恵さんは、そんなことで自分の大事なものを捨てなくていいと思います。ボクは、大事にしたいんですよ。咲恵さんのことを」
「じゃあ、ひとつだけお願いがあります」
「なんです」
「わたしを抱きしめてくれませんか。次にまた会えることの約束として」
咲恵は、向かいのソファーから立ち上がり、ボクの前に来て高さを揃えるために膝を折って背中に手を回した。ボクも、咲恵の背に手を回し引く寄せた。ボクの胸に、咲恵の胸が重なっていく。
「また、会ってください。そして今度こそ・・・」
「わかりました。また今度ですね」
その後、ボクたちはホテルを出て駅に向かって歩き出した。
「次は、いつ会ってくれるんですか」
咲恵は、ここに来る前とは違って、どこか吹っ切れたように感じる。
「そうだなぁ、来週でもいいですよ。もう決めておかないと行けないですか」
「女性は、次にいつ会えるか決めておくと安心するんですよ。わたしも瑞樹さんが逃げてしまうんじゃないかと、少し不安です。改めて考えても、すごいカミングアウトをしたと思ってますし、なんか普通の人間じゃないと思われたりしてないかと」
咲恵は、また少し顔を曇らせて言った。
「そんなことはないですよ。弟さんにだからこそ、そういうことをしてしまったんじゃないかとも思ってます。だから、逃げたりなんてしませんよ」
「本当ですか」
「わかりました。じゃあ来週の週末にしましょう。咲恵さんの都合に合わせませから」
駅に着くまでの間、咲恵はスケジュール帳を出し来週の土曜日を指差してボクに確認する。
「じゃあ、土曜日で。今日と同じ時間でいいですか」
「はい、じゃあそれでお願いします。何か食べたいものを考えて置いてください」
「あっ、今日ホテルでルームサービスのメニューがあったので見たんですが、美味しそうだったんでホテルで食事しましょうよ。その方がゆっくり出来るし」
「いいんですか?それで」
「はい。楽しみにしてます」
しっかりと約束をして、二人は駅で別れた。咲恵の言葉にウソはないのだろう。でも、このままそういう関係を持ってもいいのかと迷ってしまう。それは、自分が望んでいた事なのに。
「それは、どういう意味ですか」
「弟にしたような行為を瑞樹さんとして、記憶を上書き出来ないかなと思ったんです。今は弟とした行為の記憶しかないので、そのことを思い出してしまうしいつまでもそれじゃ辛いばかりだと考えました」
「でも、今日はそんなつもりでお誘いしたわけでもないし・・・」
「わたし、ここに来る前に言いましたよね。お話が出来たなら、何をされてもいいと」
「それは聞きましたが、それは出来ません。まるで、咲恵さん告白を人質に取ってるみたいで後ろめたいです」
咲恵は、クスッと笑って言った。
「真面目なんですね」
「そんなことはないのですけど」
「あー、わたし、瑞樹さんに振られてしまいましたね。弟にあんなことした女ですもんね。仕方ないです」
「そんなことないですよ。勇気を出して告白してくれたんだから。ただ、それを否定するためにボクとやろうとしてるように思えて。咲恵さんは、そんなことで自分の大事なものを捨てなくていいと思います。ボクは、大事にしたいんですよ。咲恵さんのことを」
「じゃあ、ひとつだけお願いがあります」
「なんです」
「わたしを抱きしめてくれませんか。次にまた会えることの約束として」
咲恵は、向かいのソファーから立ち上がり、ボクの前に来て高さを揃えるために膝を折って背中に手を回した。ボクも、咲恵の背に手を回し引く寄せた。ボクの胸に、咲恵の胸が重なっていく。
「また、会ってください。そして今度こそ・・・」
「わかりました。また今度ですね」
その後、ボクたちはホテルを出て駅に向かって歩き出した。
「次は、いつ会ってくれるんですか」
咲恵は、ここに来る前とは違って、どこか吹っ切れたように感じる。
「そうだなぁ、来週でもいいですよ。もう決めておかないと行けないですか」
「女性は、次にいつ会えるか決めておくと安心するんですよ。わたしも瑞樹さんが逃げてしまうんじゃないかと、少し不安です。改めて考えても、すごいカミングアウトをしたと思ってますし、なんか普通の人間じゃないと思われたりしてないかと」
咲恵は、また少し顔を曇らせて言った。
「そんなことはないですよ。弟さんにだからこそ、そういうことをしてしまったんじゃないかとも思ってます。だから、逃げたりなんてしませんよ」
「本当ですか」
「わかりました。じゃあ来週の週末にしましょう。咲恵さんの都合に合わせませから」
駅に着くまでの間、咲恵はスケジュール帳を出し来週の土曜日を指差してボクに確認する。
「じゃあ、土曜日で。今日と同じ時間でいいですか」
「はい、じゃあそれでお願いします。何か食べたいものを考えて置いてください」
「あっ、今日ホテルでルームサービスのメニューがあったので見たんですが、美味しそうだったんでホテルで食事しましょうよ。その方がゆっくり出来るし」
「いいんですか?それで」
「はい。楽しみにしてます」
しっかりと約束をして、二人は駅で別れた。咲恵の言葉にウソはないのだろう。でも、このままそういう関係を持ってもいいのかと迷ってしまう。それは、自分が望んでいた事なのに。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。


久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる