人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
330 / 910
四章 異世界旅行編 1 オリーブ王国を離れ東へ

316 兇食植物系モンスター と 朽ちた村

しおりを挟む
 伸びてくる枝を切って埒が明かない、本体に攻撃しないと。
 だがここから攻撃しても、枝を重ねて盾にされたら本体にダメージが入らないか。
 接近するしかない。
 威力を上げれば離れた所からでも倒せるだろうが、あまり大きな音を立てると、他のモンスターが寄って来るかもしれない。
 そうすると、皆を危険にさらす事になるからな。
 さて、どうやって近付くかだ。
 日が落ちてから行動ってことは、夜行性か? なら明るくしたら。

 カズが〈ライト〉の魔法を使うと、強い光がレッドトレント本体を照らし出す。
 ゆっくりと動き出すレッドトレントの根本には、前日大量発生した蛭がうじゃうじゃと蠢いていた。

 あの蛭の量を見ると、俺達は昨日から狙われてたって事か……近付きたくねぇ。

 カズが近付くのを躊躇っていると、レッドトレントの赤黒い枝が無数に伸び、それと同時に根本で蠢いていた蛭が、一斉にカズに向かって飛び掛かる。

「この蛭跳ねるのかよ! 蛭まみれなんて冗談じゃない〈エアーバースト〉〈ウィンドカッター〉」 

 迫る大量の蛭を突風で暗い森の奥へと吹き飛ばし、赤黒い枝を風の刃で切る。
 続けて伸びる赤黒い枝を避け、レッドトレントに間合いを詰める。
 2m程手前まで接近すると、レッドトレント本体から、今まで以上に太い枝がニ本生えてきた。
 その太い枝の先から更に細い枝が数多く伸び、カズを絡め捕らえようとする。

「あくまでも俺を生きたまま捕まえて、血を吸うつもりか。〈スラッシュトルネード〉」

 カズが放った小さな竜巻は伸びる枝をへし折りながら移動し、レッドトレントを中心に渦巻き、多数の風の刃で切り刻む。
 スラッシュトルネードの効果が切れると、レッドトレントから伸びていた細い枝はバラバラになり辺りに散乱し、本体とニ本の太い枝には多くの切り裂かれた傷が出来ていた。
 ギシギシと動き、新たな枝を生やそうとするが、それをカズが待つわけない。
 レッドトレント本体に付けられた傷の中で、最も深い傷に触れて〈ファイヤーボール〉放ち、すぐさま後方へと距離を取る。
 多くの傷から炎が噴き出すとレッドトレントは動かなくなり、倒れて燃え尽き灰となった。
 すると建物とその周囲を侵食していた殆どの木々が急速に枯れ、バラバラと朽ち果てていった。
 これにより隠れていた他の建物全てを目視できるようになった。
 カズは一旦馬車へと戻り、三人に事情を説明して、建物全てを一人で調べると伝えた。

「アレナリアさん、私達も手伝いましょう」

「そうね。亡骸があれば、手厚く埋葬してあげましょう」

「その気持ちだけでいいよ。建物はいつ崩れてもおかしくない状態だし、たぶん原形をとどめたのは……」

「そう、分かったわ。私達はここから、安らかに眠るよう祈っておくわ。ビワもそれでいい」

「はい」

 アレナリアとビワは両手を胸の前で握り、建物の方を向いて目を閉じ、少し頭を下げ祈った。
 横で見ていたレラも同じ様にして、この場所に住んでいた人々に、安らかな眠りをと祈る。
 カズは合掌してから、建物の調査に移った。
 建物を調べている最中に、亀裂が入り重さに耐えきれず崩れる建物もあった。
 建物の下敷きにならぬように、気を付けながら崩れてない建物を全て調べ終えた。
 崩れた建物は後回しにして、カズは皆の待つ馬車に戻った。

「どうでしたか?」

 ビワの質問にカズは顔を横に振った。

「この森がこんなに密集して広がった理由は、トレント系のモンスターが多く住み着いたからのようね」

「ハルチアさんが砂漠を抜けたら、村の一つでもあるようなことを言ってたのに、森の道がこんな状態だから変だとは思ったんだ」

「見るからにニ、三年前には既に村の人々は、レッドトレントの餌食になってしまったんでしょうね。オリーブ王国に東からの商人や冒険者が殆どが来なくなったのも、森がこんな状態になってしまったのが原因かもしれないわね」

「森を抜けるまでに、兇食植物を見かけたら、できるだけ倒してこうと思う」

「カズがそう思うなら、良いんじゃないかしら。レラとビワと馬車は、私が守るから安心して。二人もそれでいい?」

「このような村が増えるのは、とても悲しい事です。私もそれに賛成です」

「あちしもそれに賛成でいいんだけど」

「だけど?」

「そろそろごはんにしない? あちしお腹空いた」

 ふわふわと浮かんでいたレラは疲れたと言い、ホースの背中に座って自分のお腹をさする。

「いつもより遅くなったから、作り置きしてあるのでいいか?」

「なんでもいいから、早く食べよ」

「分かった分かった。俺は崩れた建物を少し調べてくるから、ごはんは三人で食べててくれ(レラはブレないな)」

 カズは馬車内に〈ライト〉を使って、小さな光の玉を出現させて明るくすると【アイテムボックス】から幾つかの料理を出した。
 食事の用意をしたカズは、一人馬車を離れた。
 崩れた建物の瓦礫を退かしながら、情報になりそうな物を探す。
 崩れてしまっている建物は三軒、その内ニ軒は何も見つからなかった。
 最後は他よりも小さめ建物。
 倒れて砕けた壁を退かしていると、錆びた装備品が出てきた。
 更に瓦礫を退かしいると、折れ曲がったギルドカードを発見した。
 傷と汚れで書かれている内容を、判別することはできなかった。
 カズはそのギルドカードを回収して、〈クリーン〉を使ってから馬車へと戻った。
 
「カズの分、残してあるよ。食べるでしょ」

「ああ」

「収穫はあった?」

「ギルドカードを見つけて回収してきた。ただし傷が多くて殆ど読み取れないが」

「ギルドに持って行けば、誰の物か判別できるはずよ。しっかり管理をしていればだけど。それに消滅してないってことは、Bランク以上じゃないかしら」

「Bランク以上か、なるほど。とりあえず先決は、この森を抜けることだ。明日からは一気に進もう。今日と同じ様に、俺が馬車の少し先に進み、邪魔な草木と現れたモンスターを倒して進む」

「なら馬車の操作はビワに任せて、私は周囲を警戒するわ」

「ビワ、馬車の操作は大丈夫?」

「大丈夫です。アレナリアさんに教わりましたから」

「なら明日は頼むよ」

 翌日の事を決めると、レラ、アレナリア、ビワの三人は馬車で横になり、カズはいつものように外で夜を過ごした。


 ◇◆◇◆◇


 少し先に二体、そこから更に先にゆっくりと移動するのが四体か。
 この道を目指して、移動してるようだな。
 俺が先に行き道を確保してから、皆には後から来てもらう方が安全か。
 アレナリアには、よりいっそう警戒してもらわないと。

「おはようカズ。朝から難しい顔して、問題でも?」

「おはよう、アレナリア。今日は早いじゃないか」

「たまにはね。それでカズは考え事?」

「昨日レッドトレントを倒した事に気付いたのか、道の先にモンスターが移動してきてるんだ」

「って事は、待ち伏せしてるモンスターも、トレントの可能性は高いわね」

「レッドトレントは群れないらしいんだけど」

「レッドトレントはそうでも、他のトレントは違うわ」

「アレナリアはトレントに詳しいのか?」

「詳しいってほどじゃないけど、これでも元サズマスだから」

「ああ!」

「忘れてたの?」

「そ、そんな訳ないよ(忘れてた)」

「……まあいいわ。私が知ってることを、手短に説明するわ。トレントは──」

 トレントには幾つかの種類があり、それぞれ特徴があるとアレナリアは説明する。
 ・レッドトレントは、生物の血を求めて単体で夜に行動する。
 ・グリーントレントは、主に他の植物からマナを吸収して、辺り一帯を縄張りにしてしてしまい、最も広範囲に広がり、数体で同じ縄張りもつ。
 ・ブルートレントは、多くの水を吸い上げ吸収するため、水場に現れることが多く、小さな池なら十体程で枯渇させてしまう。
 ・シルバートレントは、金属を取り込むことで、本体が鉄のような表面をもつ変わったトレント、より良い金属を求めて人々が暮らす村や街に現れる事もある。
 ・幻のトレントと言われるのがゴールドトレント、金を体内に溜め込み不純物を排出するため、純度の高い金を保有してる。

「──とまあ、こんなところね。冒険者なら一攫千金を夢見て、一度はゴールドトレントを探し求めるでしょうね」

「イエローやピンクなんかもいたら、特撮ネタとしか思えん」

「とくさつ?」

「いや、なんでもない」

「因みにこんな話があったのを思い出したわ。三人組の冒険者がゴールドトレントを偶然見つけたら、地中の深い場所にある金鉱石に根を伸ばし取り込んでいたから、隠れて終わるのを待っていたんですって」

「じゃあそのパーティーは、運良く大金を手にしたんだ。まさに一攫千金」

「それがね」

「違うの?」

「ゴールドトレントを倒して体内の金を回収しようと意気込んで出ていったら、そこに金を好むモンスターが集まって乱闘になって、命からがら逃げたんですって。欲をかくと、ろくな事ないって話」

「俺達は欲に負けて、そうならないようにしよう」

「そうね」

「朝と昼のごはんはここに出しておくから、レラとビワの二人と一緒に食べてくれ」

「カズは?」

「俺は先に行って、馬車が通れるようにするから。二人と馬車の護衛は、アレナリアに任せる。朝ごはんを食べたら、道なりに馬車を進めて来てくれ。昨日の予定とは変わっちゃったけど」

「私達の安全を考えてのことでしょ。護衛は任せて」

「一応俺もマップを見て、用心はしておく」

「信頼してカズ。二人と馬車は、私が守るわ。のアレナリアが」

「あ…あぁ、うん。頼りにしてる(適当に流すと、後々面倒そうだからなぁ)」
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム) 目を覚ますとそこは石畳の町だった 異世界の中世ヨーロッパの街並み 僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた 案の定この世界はステータスのある世界 村スキルというもの以外は平凡なステータス 終わったと思ったら村スキルがスタートする

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...