人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
331 / 801
四章 異世界旅行編 1 オリーブ王国を離れ東へ

317 森を抜けた先は

しおりを挟む
 アレナリアに任せて、カズは道の雑草雑木刈りと、モンスターの討伐をする為に、一人先へと向かった。
 カズに頼られたアレナリアは、やる気に満ちあふれていた。
 ビワは既に起きていたのでレラを揺すって起こし、三人で朝食にした。
 そこでカズが先行した事を、アレナリアは二人に伝えた。
 カズが一人先へと向かってから一時間程して、馬車をビワが操作し、草木が刈られた道を馬車が進む。

 一方馬車の進路を確保するのに先に進んだカズは、既に五体目のモンスターを倒したところだった。
 待ち伏せていた五体のモンスターは、全てグリーントレント。
 レッドトレントは違い単体行動はせず、地中の根を伸ばして、互いの情報を得ていた。
 実際本体に近づいても、周囲の木々と同色になっており、動き出さなければ見分けるのは難しとい。
 これも擬態スキルの効果だろう。
 そうこうするうちに、カズは六体目のモンスター近くまでたどり着いていた。
 今朝マップで確認した最後のモンスターも、今までの五体と同じグリーントレント。
 即座に《分析》を使い、ステータスを調べるカズ。


 名前 : グリーントレント
 種族 : 兇食植物
 ランク: B
 レベル: 40
 力  : 621
 魔力 : 274
 敏捷 : 292
 全長 : 4m80㎝(本体)~50m(枝)
 スキル: 擬態 
 魔法 : ソーン・スプラッシュ
 補足 : 数体で行動し、地中の根を繋げて情報のやり取りをする。
 ・マナを吸収した樹木を支配して、縄張りを広げる。
 ・多くの魔力を保有してない限り、他の生物を狙う事はほぼないため、トレントの中では比較的おとなしい種類。
 ・一つの林や森に他の種のトレントが生息していると、縄張り争いをする事もある。


 今までの五体はレベル30ちょっとだったが、この六体目はレベル40か、少し強いな。
 だか昨夜のレッドトレントに比べれば、昼間なだけ戦いやすい。
 補足情報すると、俺達を狙うというより、俺の魔力を感知して来たのかも知れないな。
 レッドトレントを倒す時に、もっと魔法の威力を落とすべきだった。
 今、言っても後の祭りだ。
 第一森の木々をこんなに密集させた原因がトレントなら、討伐して数を減らさないと、この森が通れないままだからな。
 とはいうものの、無理矢理森を切り開いて、トレントの住み家を奪ったていたなら……なんて、この状況でモンスターの立場になって考えても、か。

 擬態して周囲の木々に紛れるグリーントレントだが、カズの《魔力感知》と《気配感知》で見つけるのはたわいない。
 一直線に向かってくるカズに、擬態が通用しないと理解したグリーントレントは、動きだし攻撃に転じた。
 接近するカズを捕らえようと、支配する周りの木々に命令を下し、数えきれない程の枝を伸ばす。
 本体のグリーントレントは、葉の一枚一枚の根本から生える、太く長いトゲを高速で飛ばす。

 コイツのソーン・スプラッシュは、今までの五体に比べて数が多い、しかも周囲の木々も使って三方向からの同時攻撃か。

 グリーントレントに接近していたカズは、後ろに飛び退くと同時に〈スラッシュトルネード〉を放つ。
 渦巻く風の刃で、左右から伸びる枝をバラバラにし、グリーントレント本体から飛来する太いトゲを強い風で弾き返し、そのままグリーントレント本体に向けて、渦巻く風の刃は突き進む。
 攻撃を防がれたグリーントレントは、迫る渦巻く風の刃から身を守るために、本体周囲の木々から、限界まで太い枝を無数に伸ばして木の盾を作った。
 カズが放ったスラッシュトルネードは、無数の枝で作られた木の盾を破壊していくが、本体に届く前に魔法の効果が消える。
 周りには切れ刻まれて、破壊されバラバラになった枝が大量に散乱していた。

 威力が弱かったか…いや違う、 周りの木々を犠牲にして耐えたか。
 ここまで枯れ枝が増えると、森林火災になるから火系の魔法は使えない、こともないか、要はやりようだ。
 長引かせると侵食される植物が増えかねん、一気に攻める。

 カズは力強く地面を蹴り、一気にグリーントレントに接近する。
 近付けさせまいと、枝だけではなく、根も地上に伸ばしカズを拘束しようとする。
 先程までより早く移動するカズを、グリーントレントは捕らえる事ができない。
 目前に迫るカズ目掛けて〈ソーン・スプラッシュ〉を打ち放すが、時既に遅し。
 カズか放った〈ウィンドカッター〉がグリーントレントを真横に切断。
 切り離されたグリーントレントを〈アースハンド〉を使い、巨大な手で上空へと打ち上げる。
 木々の遥か上へと飛ばされたグリーントレント本体に向けて、カズは〈ファイヤージャベリン〉を放った。
 火の槍がグリーントレント本体に刺さると、一気に燃え上がる。
 降下する際に火が消え、地面に落ちるとバラバラになり、真っ黒な炭となっていた。
 グリーントレントが侵蝕し、支配していた周囲の木々の殆どがマナを失い、急速に枯れてしまった。
 視界が広がっていき、道の先には森の切れ目も見えた。
 木々が枯れるのが止まると、今朝馬車が停まっていた辺りから、先に見える森の切れ目まで、道の左右20m程が荒地状態になっていた。
 この状態を見る限りでは、グリーントレントがかなりの範囲を侵蝕していた事が分かる。
 
 気配もない、マップを見ても近くにモンスター反応もないから大丈夫だろ。
 お、馬車が見えた、ここまで来るの待つか。

 ビワが操作する馬車がカズの居る所まで来ると、中からレラが飛び出してきた。

「ねぇねぇカズ、これどーなってるの? 急に木が枯れたんだけど」

「グリーントレントってモンスターを倒したからだよ」

 レラの疑問に答えながら、カズは馬車に乗り込む。

「代わるよビワ」

「大丈夫です。カズさんは休んでください」

「そう、じゃあもう少し頼むよ」

「はい」

 馬車の操作を引き続きビワに任せて、カズは馬車の揺れに身をゆだね、楽にする。

「アレナリアの言った通り、全部グリーントレントだった」

「でしょ。私の知識はカズの役に立つわよ」

「この先も期待してる」

 カズの期待してるの一言で、笑顔になって喜ぶアレナリア。

「今朝から合流するまで、何もなかった?」

「なんにも。モンスターどころか、小さな虫さえもよって来なかったわ」

「それは良かった。この先に森の切れ目が見えたから、もう少し馬車を走れば、森を抜けられるだろう。俺はそれまで休憩させてもらう」

 カズは腕を組み目を閉じて、力を抜く。

「カズ、休むならこっち」

「ん?」

 片目を開けてアレナリアを見ると、その細いひざをポンポンと叩いて手招きをする。

「ひざ枕してあげる」

「少しだけだから、このままでいいよ」

「そ…そう……」

 アレナリアは残念そうに項垂うなだれる。

「あちしが代わりに乗っかってあげるから」

「これじゃあ、いつもと同じじゃない(カズがよかったのに)」

「まあまあ。今日はあちしで我慢して、また今度誘ってみなよ」

「うん」

「……(俺は何も聞こえない)」

 眠気がさし、うとうととしてきた頃、馬車は森の切れ目に差し掛かろうとしていた。

「カズさん……カズさん」

「……ん?」

「寝てましたか? ごめんなさい」

「少しうとうとしてただけだから。それでどうしたの?」

「もうちょっとで、森を抜けそうです」

 カズは眠気を振り払い、ビワの横に移動する。
 木々が徐々に少くなり森を抜けると、そこには草原が広がっていた。
 森から続く荒れた道は草で隠れ、どこを通っていいのか分かりずらい状態になっていた。
 しかし薄暗い森の中よりは、遥かにましだ。
 しかも森の中を通っていたときの、じめじめした感じが嘘のように消え、草原は春のような気持ちの良い風が吹いていた。

「っん~気持ちィ~」

 レラは目の前に広がる草原の風に乗り、空中を気持ち良さそうに飛び回る。

「おーいレラ、あまり遠くに行くなよ」

「レラを好きにさせて大丈夫なのカズ?」

「周囲にモンスターは居ないから大丈夫。草原の草も長くはないから、見渡しもいいしね」

「トレントの森を抜けて一段落ね」

「ああ。森の近くで休むのもなんだから、少し先に見える丘まで行って休憩しよう」

「そうね。あの丘まで行けば、先が見えるかも知れないから」

「それまでにレラが戻ってくれば、先がどうだったか聞けるんだけど」

「念話で聞けばいいじゃない」

「せっかく気持ち良さそうに飛んでるんだから、そのままにしてやろう。馬車の操作変わるよ、ビワ」

「私ならまだ」

「いいから、いいから。あんな状態の森で、馬車を操作してきたんだから疲れたでしょ」

「そうですか……。では、お言葉に甘えて」

「草で道が見づらいが、行けそうか? ホース」 

「『少しですが、道の形跡が分かります。走ると道を外れるかも知れませんが、このスピードなら大丈夫です』」

「なら任せるから頼む」

「『任せてください。だんな』」

「慣れないビワの操作に無理してなかったか?」

「『無理なんかしてません。ビワさんは上手くなりましたよ』」

「そうか、ありがとう。こられからもよろしく頼むよ」

「『荷引きの馬なんかに礼なんて、だんなは変わってる。でも、礼を言われるのってのは、何回言われも嬉しいもんです』」

「さっきから、ぶつぶつと独り言?」

「ちょっとな」

「ふ~ん。それでねビワ……」

 たまにあるカズの独り言を気にせず、ビワと話を進めるアレナリア。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

【二度目の異世界、三度目の勇者】魔王となった彼女を討つために

南風
ファンタジー
かつて竜魔王を討ち、異世界を救った勇者イサム。 使命を果たし、現代でつまらない日々を送っていた彼は、再び異世界に転移をする。 平和にしたはずの異世界で待ち受けていたのは、竜魔王の復活。 その正体は――かつての仲間だった彼女が、竜魔王と化した姿だった。 狂愛と許されざる罪を抱えた彼女を前に、イサムは新たな戦いへと身を投じる。 命を懸けたその戦いの果てに、彼が掴むのは平和か、それとも赦しなき運命か――。

異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜

藤*鳳
ファンタジー
 楽しく親子4人で生活していたある日、交通事故にあい命を落とした...はずなんだけど...?? 神様の御好意により新たな世界で新たな人生を歩むことに!!! 冒険あり、魔法あり、魔物や獣人、エルフ、ドワーフなどの多種多様な人達がいる世界で親子4人とその親子を護り生活する世界最強のドラゴン達とのお話です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...