99 / 137
第二章
99ー知らなかった真実 2
しおりを挟む
驚愕の事実でした。私は只々驚いてマリー様とリングソン様のお話を聞いていました。マリー様は続けられました。
「私の夫、リングソンの父は旦那様の乳兄弟でした。私は夫の母が以前ご奉公しておりましたお邸でメイドをしており、義母を通じて知り合ったのです。婚姻し、私はお邸をお暇致しました。リングソンも生まれ細やかながら幸せに暮らしておりました。しかし、リングソンが2歳の頃です。旦那様がお城から帰りの馬車で何者かに襲われ、夫は斬り付けられた旦那様を庇って亡くなりました。それを旦那様は……自分はこの性格のせいで敵が多いと、ご自分のせいだと責任を感じておられずっと気にかけて下さっていたのです。奥様が偶然その事をお知りになり、それからは奥様まで。奥様が亡くなられた時も私共の所へ来られる途中だったとお伺いしました。その馬車の事故もシャーロットが引き起こした物に間違いありません。シャーロットの住んでいた家は、同じ区画にあり挨拶をする程度だったのですがシャーロットの噂は知っておりました。シャーロットは悪魔の子だと。シャーロットを戒めたり苦言を呈した者は皆殺されると。だから関わるなと。ある日偶然、旦那様が来られているところを見られてしまい……それから悪夢が始まりました。シャーロットが、旦那様に近付こうとしているのを無理矢理止めたのが、事故の際に御者をしていた者です。シャーロットはついでに奥様もいなくなって手間が省けたと、私にこれから後妻に入れと、それはシナリオだから決まっている事なのだと訳の分からない事を言いながら笑ったのです。私はゾッと致しました。しかし、その時はシャーロットが魅了を使う事など、誰も思いもしませんでした。恐らく、その頃に旦那様や私、リングソンも魅了を掛けられていたのでしょう。最初はそれ程でも御座いませんでした。記憶も御座います。しかし、少しずつ確実に日を追う毎に魅了が深くなって行った様に思います。この1年間は具体的な事は殆ど覚えておりません。シャーロットが関わらなければ後妻に入るつもりもありませんでした。抵抗する術がなかったとは言え、大恩ある旦那様や奥様に恩を仇で返す様な事になってしまい、この命をもって償っても償いきれせん。本当に大変な事を仕出かしてしまい、申し訳ございません。マーリソン様には何とお詫びして良いか……!」
マリー様が涙で言葉を詰まらせられたので、リングソン様が続けられます。
「シャーロットは、旦那様を取り込み第1王子殿下を失脚させるつもりです。自分は第2王子殿下と婚姻し、第2王子殿下を王太子にして将来自分は王妃になるのだと言っていました。自分はヒロインだと。自分に楯突く者は罰を受けると口癖の様に言っていました。義兄上、私は小さい頃から奥様や旦那様に義兄上のお話しを良く聞いておりました。捉えどころのない人だけれど、優しく思いやりのあるお方だと。父が旦那様に仕えていた様に、私も義兄上に仕えるのが小さい頃からの夢でした。その夢を旦那様や奥様は喜んで下さいました。義兄上、あなたは私の憧れでした。能力も魔力も高く剣術迄習得されている義兄上に恥ずかしくない様、勉学に励んできました。なのに……なのにこんな事になってしまい……申し訳ございません!」
お二人は涙を流しながら告白されました。膝をついて頭を下げておられます。お二人もシャーロットの被害者だったのです。いったい何人の人生を狂わせているのでしょう。
「マリー殿、一つ伺っても宜しいか?」
お父様が聞かれました。
「公爵様、なんなりと」
「ダスピルク伯爵とは、どういったご関係で?」
「亡くなった夫の母が若い頃にお仕えしておりました。私自身も夫と婚姻するまでお仕えしておりました。伯爵様は情に厚いお方で、亡くなった義母にもよく仕えてもらったからと仰って下さって、その関係で今もお世話になっております。しかし、この騒ぎが終息しましたら、リングソンと二人伯爵家を出るつもりです。元の平民に戻ります。マーリソン様……いえ、坊っちゃま。旦那様はシャーロットに操られております。どうか、旦那様を悪く思わないで下さい。白黒ハッキリなさらないと気の済まない性格でいらっしゃるので誤解をされがちですが、旦那様はいつも坊っちゃまの自慢をされてました。リングソンに将来息子の役に立ってやってくれと、柔かに仰ってました。全てシャーロットの計略です。どうか、どうか坊っちゃま、旦那様を助けて差し上げて下さい」
マリー様はマーリソン様の事を、坊っちゃまと呼ばれました。きっとこうなる前は、そう呼ばれていたのでしょう。そしてリングソン様が私に向かわれました。
「ルルーシュア様、シャーロットはルルーシュア様のせいでシナリオが狂ってしまったと言っておりました。第2王子殿下の婚約者はルルーシュア様の筈だと。卒業パーティーに出席なさらなかったので、婚約破棄が遅くなってしまってシナリオが変わったと。ルルーシュア様、お気をつけ下さい。シャーロットはルルーシュア様を逆恨みしているかも知れません」
お二人は最後に深々と頭を下げられ、寄り添う様にして帰って行かれました。結局マーリソン様は……
「シャーロットに魅了を掛けられていたとは言え、あなた方がした事が無くなる訳ではありません。私は母が亡くなった時に家を捨てたのです。あなた方もシャーロットの被害者なのでしょう。どうか、私の知らない所で生きて下さい。ご自分の人生を真っ当して下さい。私の事はもうお忘れ下さい」
と、仰りました。でも、マーリソン様の、生きて下さい。と仰った言葉があの親子の生きて行くきっかけになれば良いなと思います。
「モーガン様、アーデス様、ルルーシュア様、一緒に聞いて下さり有難うございました」
「マーリソン殿、あの二人もお父上も被害者だ」
「公爵様…… 」
「そうだな。お父上は一番酷い思いをされた被害者なのだな。シャーロットに奥方を殺された様なものだ」
「マーリソン様がご存知なかった事が見えて参りました。これからゆっくり納得のいくまで考えられると良いでしょう。どう結論を出されても、マーリソン様はティシュトリア領の大事な魔道士ですよ。さあ、ユリウスが待っています。行きましょう」
「ルルーシュア様、はい! 参りましょう!」
私に出来る事は、変わらず接する事だけだ。
「私の夫、リングソンの父は旦那様の乳兄弟でした。私は夫の母が以前ご奉公しておりましたお邸でメイドをしており、義母を通じて知り合ったのです。婚姻し、私はお邸をお暇致しました。リングソンも生まれ細やかながら幸せに暮らしておりました。しかし、リングソンが2歳の頃です。旦那様がお城から帰りの馬車で何者かに襲われ、夫は斬り付けられた旦那様を庇って亡くなりました。それを旦那様は……自分はこの性格のせいで敵が多いと、ご自分のせいだと責任を感じておられずっと気にかけて下さっていたのです。奥様が偶然その事をお知りになり、それからは奥様まで。奥様が亡くなられた時も私共の所へ来られる途中だったとお伺いしました。その馬車の事故もシャーロットが引き起こした物に間違いありません。シャーロットの住んでいた家は、同じ区画にあり挨拶をする程度だったのですがシャーロットの噂は知っておりました。シャーロットは悪魔の子だと。シャーロットを戒めたり苦言を呈した者は皆殺されると。だから関わるなと。ある日偶然、旦那様が来られているところを見られてしまい……それから悪夢が始まりました。シャーロットが、旦那様に近付こうとしているのを無理矢理止めたのが、事故の際に御者をしていた者です。シャーロットはついでに奥様もいなくなって手間が省けたと、私にこれから後妻に入れと、それはシナリオだから決まっている事なのだと訳の分からない事を言いながら笑ったのです。私はゾッと致しました。しかし、その時はシャーロットが魅了を使う事など、誰も思いもしませんでした。恐らく、その頃に旦那様や私、リングソンも魅了を掛けられていたのでしょう。最初はそれ程でも御座いませんでした。記憶も御座います。しかし、少しずつ確実に日を追う毎に魅了が深くなって行った様に思います。この1年間は具体的な事は殆ど覚えておりません。シャーロットが関わらなければ後妻に入るつもりもありませんでした。抵抗する術がなかったとは言え、大恩ある旦那様や奥様に恩を仇で返す様な事になってしまい、この命をもって償っても償いきれせん。本当に大変な事を仕出かしてしまい、申し訳ございません。マーリソン様には何とお詫びして良いか……!」
マリー様が涙で言葉を詰まらせられたので、リングソン様が続けられます。
「シャーロットは、旦那様を取り込み第1王子殿下を失脚させるつもりです。自分は第2王子殿下と婚姻し、第2王子殿下を王太子にして将来自分は王妃になるのだと言っていました。自分はヒロインだと。自分に楯突く者は罰を受けると口癖の様に言っていました。義兄上、私は小さい頃から奥様や旦那様に義兄上のお話しを良く聞いておりました。捉えどころのない人だけれど、優しく思いやりのあるお方だと。父が旦那様に仕えていた様に、私も義兄上に仕えるのが小さい頃からの夢でした。その夢を旦那様や奥様は喜んで下さいました。義兄上、あなたは私の憧れでした。能力も魔力も高く剣術迄習得されている義兄上に恥ずかしくない様、勉学に励んできました。なのに……なのにこんな事になってしまい……申し訳ございません!」
お二人は涙を流しながら告白されました。膝をついて頭を下げておられます。お二人もシャーロットの被害者だったのです。いったい何人の人生を狂わせているのでしょう。
「マリー殿、一つ伺っても宜しいか?」
お父様が聞かれました。
「公爵様、なんなりと」
「ダスピルク伯爵とは、どういったご関係で?」
「亡くなった夫の母が若い頃にお仕えしておりました。私自身も夫と婚姻するまでお仕えしておりました。伯爵様は情に厚いお方で、亡くなった義母にもよく仕えてもらったからと仰って下さって、その関係で今もお世話になっております。しかし、この騒ぎが終息しましたら、リングソンと二人伯爵家を出るつもりです。元の平民に戻ります。マーリソン様……いえ、坊っちゃま。旦那様はシャーロットに操られております。どうか、旦那様を悪く思わないで下さい。白黒ハッキリなさらないと気の済まない性格でいらっしゃるので誤解をされがちですが、旦那様はいつも坊っちゃまの自慢をされてました。リングソンに将来息子の役に立ってやってくれと、柔かに仰ってました。全てシャーロットの計略です。どうか、どうか坊っちゃま、旦那様を助けて差し上げて下さい」
マリー様はマーリソン様の事を、坊っちゃまと呼ばれました。きっとこうなる前は、そう呼ばれていたのでしょう。そしてリングソン様が私に向かわれました。
「ルルーシュア様、シャーロットはルルーシュア様のせいでシナリオが狂ってしまったと言っておりました。第2王子殿下の婚約者はルルーシュア様の筈だと。卒業パーティーに出席なさらなかったので、婚約破棄が遅くなってしまってシナリオが変わったと。ルルーシュア様、お気をつけ下さい。シャーロットはルルーシュア様を逆恨みしているかも知れません」
お二人は最後に深々と頭を下げられ、寄り添う様にして帰って行かれました。結局マーリソン様は……
「シャーロットに魅了を掛けられていたとは言え、あなた方がした事が無くなる訳ではありません。私は母が亡くなった時に家を捨てたのです。あなた方もシャーロットの被害者なのでしょう。どうか、私の知らない所で生きて下さい。ご自分の人生を真っ当して下さい。私の事はもうお忘れ下さい」
と、仰りました。でも、マーリソン様の、生きて下さい。と仰った言葉があの親子の生きて行くきっかけになれば良いなと思います。
「モーガン様、アーデス様、ルルーシュア様、一緒に聞いて下さり有難うございました」
「マーリソン殿、あの二人もお父上も被害者だ」
「公爵様…… 」
「そうだな。お父上は一番酷い思いをされた被害者なのだな。シャーロットに奥方を殺された様なものだ」
「マーリソン様がご存知なかった事が見えて参りました。これからゆっくり納得のいくまで考えられると良いでしょう。どう結論を出されても、マーリソン様はティシュトリア領の大事な魔道士ですよ。さあ、ユリウスが待っています。行きましょう」
「ルルーシュア様、はい! 参りましょう!」
私に出来る事は、変わらず接する事だけだ。
応援ありがとうございます!
16
お気に入りに追加
967
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる