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第二章

98ー知らなかった真実 1

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 それから……。ディアナは解呪薬を作り続け、私達は肉まんとアイスクリームを配りまくった。同時にお母様や、ユリウスとマーリソン様と手分けして魔法で解呪しまくった。ついでに下町やスラムはクリーンしまくった。
 元男爵令嬢シャーロットは、貴族や平民、兵士に教師牧師、多岐に渡り魅了を使っていた。
 王都で解呪をし始めて3日程経った頃です。お祖父様のお邸に一人の女性がご子息と一緒に訪ねていらした。
 名前をマリー・モルドレッド。ご子息がリングソン・モルドレッド。マーリソン様の義母様と義弟様です。
 客間にお二人をお通して、私達はご遠慮する事にしました。

「ルルーシュア様、アーデス様、モーガン様。ご迷惑でなければ、同席して頂けませんか?」
「マーリソン様、でもお身内の事ですから」
「いいえ、ルルーシュア様。既に身内だけの事とは言えません。どうか、ご迷惑でなければですが」
「マーリソン殿、迷惑な事などあるものか」
「アーデス様、有難うございます」
「そうだな。ルル、アーデス行くぞ」
「はい、お祖父様」

 マーリソン様に付いて客間に入るとお二人は膝をついて頭を下げられました。それでも、マーリソン様は……

「お二人共、何をなさっているのですか? 今更、白々しいにも程があります」
「マーリソン様、どうか、どうかお話を聞いて頂けませんか?」
「義兄上、どうか母上の話を聞いて下さい。お願い致します」
「…… 」
「マーリソン様、お聞きしませんか? 話が進みませんわ。マーリソン様が、ご存知なかった事を知る事も必要です」
「ルルーシュア様」
「宜しいですかな? マーリソン殿は我が領では欠かせない人物です。ご本人の希望もあり同席致します。私はアーデス・ティシュトリア、父のモーガン・ オーベロン、これは娘のルルーシュアです。どうぞお掛け下さい」
「突然訪ねて参り申し訳ございません。王都で魅了の解呪をなさっていると聞き、居ても立っても居られず押しかけて参りました。失礼をお詫び致します。私はリングソン・モルドレッド、母のマリー・モルドレッドで御座います。本日はお詫びと真実をお話ししたく参りました。此度は大変なご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございません。私と母も魅了に掛かっていた様で、正気に戻った時に一時は死んでお詫びするしかないと考えておりました。しかし、義父上がまだ捉えられていない以上、真実を義兄上にお話ししておかなければと決心し訪ねて参りました。どうかお話する事をお許し下さい」
「今更、真実も何もありません。貴方方が、父が沢山の人を貶めた事には変わりありません」

 マリー・モルドレッド様は話されます。

「マーリソン様、その通りでございます。しかし私が話しておきたい真実とはそれではないのです」
「では何を? 私には話してもらう事など何もありません」

 マーリソン様。いつも場を和まし、飄々としていらしたけれど。傷付いてらして当然だった。私はなんで気づかなかったんだろう。

「ルルーシュア様…… 」
「マーリソン様大丈夫です。続けて下さい」
「何のお話しでしょう?」

 マーリソン様がマリー様に問いかけられました。

「マーリソン様のお母上の事です」
「あなたが殺したも同然ではないですか? 私はそう思っております。あなたがシャーロットを引き入れなかったら、こんな事にはならなかった」
「その通りでございます。なんの反論も御座いません。ただ、マーリソン様のお母上に、奥様にして頂いた沢山の事を御子息であるマーリソン様にお話ししておかなければと思ったのです」
「母が……?」
「はい。初めて奥様にお目にかかったのはリングソンが4歳になる直前でした。私達が住んでいた家に、突然リングソンへの誕生日プレゼントを持って訪ねて来られたのです。驚きました。奥様は私とリングソンの事を心配して下さいました。毎月必ず1度は訪ねて来て下さって、いつもいつもお心を掛けて下さいました。知識は生きていく上で武器になると仰り、リングソンに教育を施して下さいました。感謝こそすれ、奥様を恨んだり妬んだりする様な事は決して御座いません。なのに、あのシャーロットに魅了を掛けられ、絶対に忘れてはならない御恩まで心の奥に閉じ込めてしまい分からなくなっておりました。お詫びのしようも御座いません」
「母が何故父の愛人のあなたを気遣っていたのかは分かりませんが、どうぞもうお忘れ下さい。私も貴方方はいないものだと思っております」
「マーリソン様、違うのです。旦那様は確かに援助して下さいましたが、私は愛人ではなかったのです」
「そんな筈ないでしょう。実際に貴方は母が亡くなって直ぐに父と婚姻した。その上、リングソンもいるではないですか」
「義兄上、私の父は旦那様ではありません。私の父は旦那様と乳兄弟だったのです。私が2歳の頃まで旦那様の従者をしておりました」
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