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第二章

53ーコッコちゃん

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「あれ? そう言えば、ピアもいるのによく蹴りにきたな」
「ピー?」
「アレは全然本気じゃないもの。挨拶みたいなものよ」
「モモさん、そうなのか? 挨拶にしては怖すぎる!」
「殿下は試されてるのね。ルルの事をご主人だと思ってるみたいだから」
「「ご主人!」」
「そうね、ルルには敵わないとちゃんと理解しているわ」
「ルルさん、スゲーな……」
「…………。」
「あれ? 嬢様、若、こんなとこで何してんスか?」

 イワカムが手に寸胴の様な容器を持ってやって来ました。

「イワカム、コッコちゃん見に来たのよ」
「イワカムは何しに来たんだ?」
「乳搾りッスよ」
「そんな事までしてるの?」
「若いのにさせると蹴り入れられるんッスよ。舐めてるんスね」

 また!? コッコちゃんの時も言ってたわよね。

「モーモーちゃんも!?」
「モーモーちゃんて呼んでますが、あれも魔物なんで」
「イワカム、もしかしてルルが小さい頃に捕獲してきたのか?」
「そうッスよ。ミルクでバター作るんだ! て言って坊ちゃん達とボロボロになって捕まえて来たんッスよ」
「ルル、少しは自重しような」

 だってバターは必要じゃない?

「嬢様も若ももうすぐ昼飯ッスよ」
「分かったわ。有難う」
「ピピー!」
「ピア、もう腹減ってるのか?」
「ピー!」
「食堂に行きましょうか」
「おぉ、なんかもう気持ちが疲れた……」

 なんでよ。失礼だわ。それよりコッコちゃんにもモーモーちゃんにも蹴られないイワカムて凄くない!?

 食堂で皆で昼食です。コッコちゃんの卵が美味しい。

「レオン、午後から双剣を試してみるか?」
「ジュード、いいのか?」
「ああ、試してみるだけでもな。ルル、手本を見せてやったらどうだ?」
「ジュード兄様も使えるじゃないですか」
「俺はもう長い事使ってないからなぁ」
「良いですよ。じゃあ午後から鍛練場に行きますか?」
「ああ!」
「ピー」
「ピア、水か?」
「ピピー」
「ほら」
「ングングング……プファー!」
「本当に美味そうに飲むな」
「ピピュー!」
「殿下、双剣なら私がお相手致しましょうか?」

 え、お母様?

「公爵夫人がですか?」
「あら、私だとご不満かしら?」
 「いや、とんでもないです!」
「では殿下、宜しくお願い致しますわ」
「では私は魔道具を作っていても構いませんか? ピアの分を作りたいので」
「ええ、ルル。構わないわ」
「レオン様、頑張って下さいね」
「えぇー……」
「ピー?」
「ピアも、モモとルビと一緒にお部屋に行きましょうね」
「ピー」

 さて、自室でピアの魔道具を作ってます。

「ルル様、そろそろお茶入れましょうか?」
「ええ、リアンカお願い。甘いものはないかしら?」
「イワコフに聞いて参りましょうか?」
「ええ、少し欲しいわ」
「畏まりました。お待ち下さい」

 ――ピーヒュルル……ピーヒュル……

 ピアの寝息? です。モモもルビもお昼寝中です。モモとルビはくっついて丸くなってるけど、ピアは大の字になってお腹に両手を置いて寝ています。これがデフォなのかしら?

「可愛いわね……」

 ――コンコン……

「ルル様、出来上がりましたか?」

 ユリウスがピアの魔道具の様子を見に来てくれました。

「ユリウス、あと少しで出来上がりよ」
「おや、皆さんお昼寝中ですか」
「そうなの。こうしていると可愛いわ」
「そうですね。ルビちゃんはおとなしいですが、ピアちゃんはヤンチャ盛り、て感じですからね」
「そうね。でも、表情が豊かだから分かりやすいわ」
「ルル様、お待たせ致しました。そこでマーリソン様と一緒になりました」

 今日のオヤツは大学芋! この前ニコラが収穫してたものね!

「ルルーシュア様、私もお茶をご一緒しても宜しいですか?」
「もちろんよ。どうぞ」
「有難うございます。光栄でございます!」

 後半の言葉はスルーです。リアンカがお茶を入れてくれてます。

「ユリウスも一緒にどうぞ」
「…ピ……?」

 あ、ピア起きちゃった。

「ピア、オヤツ食べる?」
「ピピュー!」
「ルビも食べるのー」

 あらあら、みんな起きちゃった。もしかして匂いで起きた?

 ――ゴンゴン……

「あら? 何かしら? リアンカ、見てきてちょうだい」

 リアンカがササッとドアに向かい開けます。

「ルル……」 
「まあ、レオン様! どうしたんですか?」

 ボロボロのレオン様でした。

「ルルのお母上に……コテンパンに……やられた……」

 ドサッとソファーに倒れ込むレオン様。
あー、まあ仕方ないわね。

「リアンカ、レオン様にお水差し上げて。お母様、強いでしょ?」
「強いなんてもんじゃないよ。宰相の血筋はコワイ! 超コワイ!」
「レオン殿下、公爵はもっとお強いですよ」
「ユリウス、マジかぁ……」
「剣術だけで言うと、ルル様が1番弱いのですよ」
「えっ……」
「そうよ。私は家族の誰にも勝てないわよ。剣術だけならね」
「ガンバリマス……」

 レオン様、撃沈ね。


 さて、晩ご飯食べて皆んなでサロンでお茶してます。

「ジュード、今日王都から使いが来たの。マールス・クロノス様が、ジュノー様と一緒に領地に来られるそうよ」
「母上、我家に滞在されるのですか?」
「そうなるわね」

 なんでお母様、ジュード兄様を名指しなの?

「ジュード、お前……」
「え? 俺は何もしてませんよ。兄貴、そんな目はやめて下さい。母上も」

 でもなぁ……

「なんだよ? ルル、レオンまで」
「ジュード兄様、確か王城で別れる時に、ジュノー様の頭をポンポンてしてませんでした? 案内するから遊びにおいで、て言ってませんでした?」
「……そうだったか?」
「うん、ジュードは言ってたな」

 うんうん、レオン様も見てたわよね。頭ポンポンはヤバイわよね。

「ジュード……」
「いや、兄貴。不可抗力だろ!」

 どんな不可抗力よ。

「まぁ、その件は置いておいてだな。マールス・クロノス殿が城の役職を辞職されたんだそうだ」

 あら! お仕事辞められたのね。

「またどうして?」
「ジュノー様の婚約破棄の件で、王家に仕えるのが嫌になったらしいわ。辞職理由はご令嬢に静養が必要な為と申告されたそうですけどね」

 お母様、なんだか目が鋭いわ。

「そりゃあ堂々と嫌ですとは言えないよな」

 そう、ラウ兄様普通は言えないわよね。

「あら、お母様ならハッキリ言うわよ」

 ほら、普通じゃないお母様がいるわ。
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