12 / 175
~第1部~ 第1章 別れと出会い

第12話 自問自答 ~優香SIDE~ 1

しおりを挟む
~優香SIDE~

 その日の夜。
 お風呂の浴槽に深々と肩まで浸かった私は、今日という日に起こった一連の出来事を思い返していた。

 川で溺れた美月を、同じクラスの男子が助けてくれた。

「紺野蒼太くん……」
 小さなつぶやきはしかし、静かな浴槽内だからか私の耳に妙に大きく届いた。

 そんな蒼太くんとは2年生になって初めて同じクラスになったけど、半月経っても話したことはなくて。
 どちらかというとクラスではあまり目立たない方だけど、隣のクラスの葛谷くずがやさんって綺麗な女の子と付き合っていることだけはなんとなく知っていた。

 そんな程度の薄い関係しかなかった蒼太くんが今日、美月を助けて家まで送り届けてくたことで偶然仲良くなったのだ。

「美月がすっごく懐いてたよね。おかげで初めて話したのにすっごく話が弾んじゃった」

 美月はかなりの甘えんぼさんだけど、それはあくまで家族限定の話だ。
 家族以外の、しかも会ってすぐの男の子にあんなに懐く美月を見るのは初めてだった。

「いつの間にか蒼太おにーちゃんとか呼んじゃってるし……それじゃほんとのお姉ちゃんの私の立場がないじゃないの。なんてね、ふふっ」

 もちろん今のは冗談だ。
 姉の自分が言うのもなんだけど、美月はとてもよくできた妹だった。
 明るくて礼儀正しくて、しかも可愛くて愛嬌があって。
 きっと将来はモテることだろう。

「蒼太くんかぁ……今まで話したことがなかったから知らなかったけど。優しくて、誠実そうで。なんかいい感じだったな……結構好きかも?」

 …………
 ……

「――って、何を言ってるのかな私!? 初めて話した男の子を好きになっちゃうとか、さすがにお尻が軽すぎでしょ!?」

 なんだかものすごい答えに行きつきかけた私は、思わず大きく目を見開くと浴槽の中で勢いよく立ち上がってしまう。

 ザバァン!
 大きな音を立てて浴槽のお湯が大量に流れていった。

「はぅ、やっちゃった……」

 もう一度、湯船につかり直すと追い炊きボタンを押す。
 すぐにお湯が供給されはじめ、浴槽は瞬く間に元の深さを取り戻した。

「だ、だいたい蒼太くんには葛谷くずがやさんって彼女がいるんだし――あ、でも振られたって言ってたよね……?」

『あいつ、俺だけじゃなくてイケメン医大生とも付き合ってたみたいでさ。向こうがデートしてる時に偶然鉢合わせたら速攻で振られちまったんだ』

 別れ際、蒼太くんが言っていたのを思い出す。
 その時垣間見た蒼太くんの切ない表情を思い出すだけで、私の胸はなぜかキュッと強く締め付けられてしまった。

「なんだろうこの気持ち……」

 自分の気持ちなのによく分からない。
 だけど嫌な気持ちでないことだけは確かで。

「でもでも。ってことはだよ? 蒼太くんは今フリーってことなんだよね?」

 葛谷さんとよりを戻したりはしない……よね?
 たしかに葛谷さんは美人だけど、でもでも二股かけた相手とよりを戻すなんて普通はしないもんね?

「でも実際のところはどうなんだろ……」

 私は浮気や二股どころか、そもそも男子とお付き合いすらしたことがないから、そういう男女関係について疎いんだよね……。

「――って、私ってばさっきから何を勝手なことばっかり考えてるのかな!? 振られたばかりの蒼太くんの気持ちとかぜんぜん考えてないし。何より悲しくないわけがないんだから。そこに付け込むなんて私、最悪女になっちゃうし」

 あ、でも蒼太くんは吹っ切れたとも言ってたはずだよね?
 ってことはやっぱりもう、葛谷さんとよりを戻す気はないってことじゃない?
 だったら――

「いやいやちょっと待ってね私。そもそもの話、私の気持ちがどうかでしょ? 私が蒼太くんのことをどう思ってるかが大事な訳でしょ?」

 でも私、今まで特定の男子を好きになったことないから……だから好きかどうかなんて分からないし……。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...