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334本体⑧
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結局色々と着せ替えさせられたあげく、結局ワシはクロードと色違いの胸甲とナイフを買う事になった。
いい加減着替えるのが面倒になったのが理由だが、動きやすいし悪くはなさそうだ。
「ふふ、よく似合ってますよ♪ ゼフ君」
「む、そうか」
クロードも何だかご機嫌である。お揃いだからだろうか。
店主が大あくびをしながら尋ねてくる。
「おう、そろそろ決まったかい?」
「えぇ、これにします。では代金を……」
支払おうとしたクロードの動きが止まる。
一体どうしたのだろうか。冷や汗をたらたら流しながら、クロードは尻のあたりを弄っていた。
「どうしたのだ? クロード」
「輝石を入れていた袋が……ありません……」
「おいおい……」
見れば確かに、クロードが腰に括りつけていた袋がなくなっている。
どうやら切り取られ、袋だけを持ち去られたようだ。
「……やられた、さっきぶつかった、あの時だ!」
血相を変え、店の外に飛び出すクロード。
そういえば先刻、不自然にクロードにぶつかってきた黒フードがいたな。
数分前の出来事だったし、まだ遠くには行っていない……か。
「なんだい、金がねぇのかよ」
「すまん店主、こいつは返しておく!」
「お、おう……」
胸甲とナイフを置いて、ワシはすぐさまクロードを追いかける。
店を飛び出すと、周りには道を行き交う人々……これではどこに行ったかわからんな。
地の利もないし、これでは捜索は困難だ。
クロードも同じことを思ったのか、涙目で辺りを見渡している。
「ど、どうしましょう……ボク……ボク……っ!」
泣きそうな目でワシを見るクロードの頭を、ぽんと撫でてやる。
「慌てるな。手はある」
「ほんと……ですか……?」
「あぁ、少し待っていろ」
そう言って、ワシは右手に魔力を集中させていく。
念じるのは協会の固有魔導が一つ――――チェイスワーク。
発動と共に魔力の塊がワシの手の上に浮かび、じりじりと東の方を指し示す。
これは派遣魔導師が犯人追跡などに使う固有魔導だ。
ワシのは覚えたてで熟練度も低いが、まだそう離れてはいないし追跡は出来るはずだ。
だがここでは人混みで見通しが悪いからか、反応も鈍い。
「上へ行くぞ。クロード」
「へっ!?」
戸惑うクロードの手を掴み、店の屋根へとテレポートを念じる。
先刻までぼんやりと動いていた魔力の塊も、真っ直ぐ東を指示した。
よし、これで追える。
「一気に追いつくぞ。しっかり掴まっていろ」
「は、はいっ!」
魔力の塊の指し示す方向へ、屋根を伝いながらテレポートで渡っていく。
黒フードは思ったより逃げ足が速いようで、中々追いつかない。
魔力の塊がじわじわと薄れていく。ちっ、レベルが低すぎて、効果時間も短いのか。
急がなければ……焦るワシの耳元で、クロードが声を上げる。
「ゼフ君っ! あの人ですっ!」
クロードの声に眼下を見下ろすと、確かに黒フード姿の者が走っていた。
丁度人通りの少ない所へ抜けるところである。
屋根から飛び降り、ワシは黒フードの前に降り立った。
「おっと、ここは通行止めだ」
「っ!?」
振り返り、逃げようとする黒フードの足が止まる。
後ろには既に、クロードが立ち塞がっていた。
「ボクのお金……返してもらいますよ……!」
クロードは先刻買ったばかりの剣を抜き放つ。
ワシとクロードに挟まれた黒フードは、壁の方へと後ずさっていく。
「……っくそ!」
壁際に追い詰められ、困窮極まった黒フードはワシの横をすり抜けるべく突っ込んできた。
身体を屈めての素早い突進。得物を持っていない分、ワシの方が組し易しとみたか――――だが、甘いっ!
黒フードの腕を掴み、そのまま壁へと叩きつける。
「か……は……っ!」
肺の中の空気を吐きだす黒フード。細い腕だ。子供だろうか。
まぁ容赦するつもりはないがな。
動けぬよう束縛したままぎりぎりと握る力を強めていくと、黒フードの細い腕が赤く染まっていく。
「は……なせ……っ!」
「ふん、それは出来んな……放したら逃げるつもりだろうが」
暴れる黒フードを冷たい目で見下していると、後ろからクロードの声が聞こえてくる。
「早くお金を返した方がいいですよ。そのお兄ちゃんはすごーく怖いですから。腕の一、二本くらいは簡単に折られちゃいますからね」
「ひっ!?」
クロードの言葉にビビったのか、黒フードは小さな悲鳴を上げてびくんと震える。
……否定するつもりはないが、人に言われると何だか萎えてしまうではないか。
やれやれとため息を吐き、手の力を緩めてやる。
「……まぁ今なら金を返せば許してやる」
「ほんと……?」
「あぁ。子供をいたぶって遊ぶ趣味はない。ワシの気が変わらぬうちに早くするのだな」
黒フードの腕を放してやると、震える手で自身の服を弄り始める。
それにしてこの声、どこかで聞いた事があるような気がする。
しかもごく最近……うーむ、どこだったか。
考え込んでいると、黒フードは袋を懐から取り出し――――遠くへ放り投げた。
「あっ!」
クロードの上げた声と、じゃりんじゃりんという金属音が重なる。
ワシらが散らばった金に気を取られた隙に、逃げ出す黒フード。
くそ、逃がすかよ。
慌ててブラックショットを念じると、風の弾丸がフードを掠め、吹き飛ばした。
だがハズレだ。千切れ落ちたフードの下から、金色の髪がふわりと風になびく。
女……! 金髪の少女はこちらを向き直り、舌を突き出してきた。
「べーっ! お金は返したわよっ! ばーーーーかっ!」
あっかんべーをしながら、路地裏へと少女は走り去っていった。
ワシとクロードは、茫然と少女の走り去っていく様を眺めていた。
黒フードの下にあったのは、ワシらの見知った顔である。
ワシの使い魔で、この精霊の森の姫でもある少女。
「アイン……?」
ワシの呟く声が、路地裏にぽつりと響いた。
いい加減着替えるのが面倒になったのが理由だが、動きやすいし悪くはなさそうだ。
「ふふ、よく似合ってますよ♪ ゼフ君」
「む、そうか」
クロードも何だかご機嫌である。お揃いだからだろうか。
店主が大あくびをしながら尋ねてくる。
「おう、そろそろ決まったかい?」
「えぇ、これにします。では代金を……」
支払おうとしたクロードの動きが止まる。
一体どうしたのだろうか。冷や汗をたらたら流しながら、クロードは尻のあたりを弄っていた。
「どうしたのだ? クロード」
「輝石を入れていた袋が……ありません……」
「おいおい……」
見れば確かに、クロードが腰に括りつけていた袋がなくなっている。
どうやら切り取られ、袋だけを持ち去られたようだ。
「……やられた、さっきぶつかった、あの時だ!」
血相を変え、店の外に飛び出すクロード。
そういえば先刻、不自然にクロードにぶつかってきた黒フードがいたな。
数分前の出来事だったし、まだ遠くには行っていない……か。
「なんだい、金がねぇのかよ」
「すまん店主、こいつは返しておく!」
「お、おう……」
胸甲とナイフを置いて、ワシはすぐさまクロードを追いかける。
店を飛び出すと、周りには道を行き交う人々……これではどこに行ったかわからんな。
地の利もないし、これでは捜索は困難だ。
クロードも同じことを思ったのか、涙目で辺りを見渡している。
「ど、どうしましょう……ボク……ボク……っ!」
泣きそうな目でワシを見るクロードの頭を、ぽんと撫でてやる。
「慌てるな。手はある」
「ほんと……ですか……?」
「あぁ、少し待っていろ」
そう言って、ワシは右手に魔力を集中させていく。
念じるのは協会の固有魔導が一つ――――チェイスワーク。
発動と共に魔力の塊がワシの手の上に浮かび、じりじりと東の方を指し示す。
これは派遣魔導師が犯人追跡などに使う固有魔導だ。
ワシのは覚えたてで熟練度も低いが、まだそう離れてはいないし追跡は出来るはずだ。
だがここでは人混みで見通しが悪いからか、反応も鈍い。
「上へ行くぞ。クロード」
「へっ!?」
戸惑うクロードの手を掴み、店の屋根へとテレポートを念じる。
先刻までぼんやりと動いていた魔力の塊も、真っ直ぐ東を指示した。
よし、これで追える。
「一気に追いつくぞ。しっかり掴まっていろ」
「は、はいっ!」
魔力の塊の指し示す方向へ、屋根を伝いながらテレポートで渡っていく。
黒フードは思ったより逃げ足が速いようで、中々追いつかない。
魔力の塊がじわじわと薄れていく。ちっ、レベルが低すぎて、効果時間も短いのか。
急がなければ……焦るワシの耳元で、クロードが声を上げる。
「ゼフ君っ! あの人ですっ!」
クロードの声に眼下を見下ろすと、確かに黒フード姿の者が走っていた。
丁度人通りの少ない所へ抜けるところである。
屋根から飛び降り、ワシは黒フードの前に降り立った。
「おっと、ここは通行止めだ」
「っ!?」
振り返り、逃げようとする黒フードの足が止まる。
後ろには既に、クロードが立ち塞がっていた。
「ボクのお金……返してもらいますよ……!」
クロードは先刻買ったばかりの剣を抜き放つ。
ワシとクロードに挟まれた黒フードは、壁の方へと後ずさっていく。
「……っくそ!」
壁際に追い詰められ、困窮極まった黒フードはワシの横をすり抜けるべく突っ込んできた。
身体を屈めての素早い突進。得物を持っていない分、ワシの方が組し易しとみたか――――だが、甘いっ!
黒フードの腕を掴み、そのまま壁へと叩きつける。
「か……は……っ!」
肺の中の空気を吐きだす黒フード。細い腕だ。子供だろうか。
まぁ容赦するつもりはないがな。
動けぬよう束縛したままぎりぎりと握る力を強めていくと、黒フードの細い腕が赤く染まっていく。
「は……なせ……っ!」
「ふん、それは出来んな……放したら逃げるつもりだろうが」
暴れる黒フードを冷たい目で見下していると、後ろからクロードの声が聞こえてくる。
「早くお金を返した方がいいですよ。そのお兄ちゃんはすごーく怖いですから。腕の一、二本くらいは簡単に折られちゃいますからね」
「ひっ!?」
クロードの言葉にビビったのか、黒フードは小さな悲鳴を上げてびくんと震える。
……否定するつもりはないが、人に言われると何だか萎えてしまうではないか。
やれやれとため息を吐き、手の力を緩めてやる。
「……まぁ今なら金を返せば許してやる」
「ほんと……?」
「あぁ。子供をいたぶって遊ぶ趣味はない。ワシの気が変わらぬうちに早くするのだな」
黒フードの腕を放してやると、震える手で自身の服を弄り始める。
それにしてこの声、どこかで聞いた事があるような気がする。
しかもごく最近……うーむ、どこだったか。
考え込んでいると、黒フードは袋を懐から取り出し――――遠くへ放り投げた。
「あっ!」
クロードの上げた声と、じゃりんじゃりんという金属音が重なる。
ワシらが散らばった金に気を取られた隙に、逃げ出す黒フード。
くそ、逃がすかよ。
慌ててブラックショットを念じると、風の弾丸がフードを掠め、吹き飛ばした。
だがハズレだ。千切れ落ちたフードの下から、金色の髪がふわりと風になびく。
女……! 金髪の少女はこちらを向き直り、舌を突き出してきた。
「べーっ! お金は返したわよっ! ばーーーーかっ!」
あっかんべーをしながら、路地裏へと少女は走り去っていった。
ワシとクロードは、茫然と少女の走り去っていく様を眺めていた。
黒フードの下にあったのは、ワシらの見知った顔である。
ワシの使い魔で、この精霊の森の姫でもある少女。
「アイン……?」
ワシの呟く声が、路地裏にぽつりと響いた。
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