効率厨魔導師、第二の人生で魔導を極める

謙虚なサークル

文字の大きさ
186 / 208
連載

327 「本体」①

しおりを挟む

 イワマネの木(今名づけた)の茂る荒野を進んでいくと、次第に緑が増えてきた。
 頭上には、いつの間にか鬱蒼とした枝葉が茂っている。
 遠くから見た時はなかったのだが……まるで森が迫ってきているようだ。
 クロードも不気味に思っているのか、ワシの傍から離れない。
 どれ、ちょっとからかってみるか。

「くっくっ、幽霊でも出そうな雰囲気だなぁ。クロード?」
「幽霊だろうがなんだろうが、立ち塞がるものは切り捨てて見せます……!」

 真っ直ぐ前を向いたまま、決意に満ちた声でそう答える。
 ったく、切羽詰まったような顔をしおって。
 クロードの後頭部に、チョップを入れてやる。

「あいた! な、何するんですかゼフ君っ!」
「気を張り過ぎだ。そんなんではいざという時に何も出来んぞ。ワシの役に立つのではなかったのか?」
「そう……ですね! ありがとうございます、ゼフ君」

 クロードは気合を入れ直すよう、両手で顔をぺちんと叩く。
 やれやれ、世話の焼ける事だ。



「……ゼフさんとクロードさんのニオイは、ここで途切れています」

 一方その頃、行方不明となったゼフとクロードを、シルシュがニオイで追跡していた。
 だが、途中でニオイが途切れ、二人を見失ってしまったのである。
 ミリィたちは、心配そうに顔を見合わせた。

「ゼフってば、多分狩りに行ったのね。よく一人で朝早く起きて修行してたもん」
「それにクロちゃんがついていった……か」
「でも、ここでニオイが途切れています。……まさか魔物に?」
「それはないと思いますわぁ」

 シルシュの言葉を否定するように、メアが首を振る。

「ここらの魔物は厄介なものも多いですが、ゼフさまはとてもお強いですし大丈夫でしょう。恐らく迷いの森に飲まれちゃったのですわぁ」
「迷いの森って……この辺りに森なんかないじゃない。それにもっと距離があるって言ってなかった?」
「迷いの森は変幻自在、岩場の姿をして近づき、人を迷わせるくらいワケはありませんわぁ」
「なるほど、メアちゃんの言うとおり常識の通用しない森ってわけね」
「ニオイが途切れたのは、森に飲まれたから……ですか。念話も通じませんし……うぅ、どうしましょう……」

 困り果てる皆の前に、ミリィが腕を組んで立つ。
 じっと三人を見渡した後、小さな口を大きく開いた。

「私たちも迷いの森を目指しましょう」

 ミリィの言葉に、場の空気が変わった。

「目的地である迷いの森に入ることが出来たのだ。このまま中心部を目指せばいいではないか……ゼフならきっとこう言うわ」

 ゼフの口調を真似たミリィを見て、レディアとシルシュが噴き出した。

「くすくす、ミリィさん、それ似ています」
「あっはは! 確かに言いそうだね~」

 二人の不安が薄れたのを見て、ミリィがため息を吐くのをメアは見逃さなかった。
 後ろに隠した手が小さく震えていたのも、である。

「だから……行きましょう!」
「はいっ!」
「そうだね~」
(へぇ……)

 二人を従えて進むミリィ見て、メアは正直驚いていた。
 意外だったのだ。一番ゼフに依存していそうなミリィが、皆をまとめ上げた事が。

「お飾りなだけのリーダーではない、という事ですわねぇ……一番大した事はないと思っていたのですがぁ。少しだけ認識を改めてもいいかも、ですわぁ」
「何やってるのーっ! 早く行くわよ、メアっ!」
「わかっていますわぁー!」

 そう返事をして、メアはタイタニアへ駆ける。
 強敵揃い、それもまた上等だ。メアは相手が難敵であればあるほど燃えるという性格なのである。
 ぺろりと上唇を舐めると、メアは皆について行くのだった。


「でやあっ!」

 緑と白の入り混じった、虎のような魔物をクロードの剣が捉える。
 しかし分厚い毛皮に阻まれ、斬撃が通らない。
 グランドリガー、毛色を保護色のように変え、背景に紛れて襲い来る魔物だ。
 吹き飛ばされながらも、グランドリガーは起き上がりまた草むらに隠れた。
 ガサガサとざわめく草むらに向け、レッドスフィアを発動させるとグリンドリガーの悲鳴が上がる。

「ふん、逃しはせぬよ」

 また隠れられては厄介だからな。
 炎を目印に、クロードが草むらに飛び込む。
 ざくり、とグランドリガーを突き刺す音が森に響いた。

「はぁ……はぁ……や、やりました……」
「うむ」

 草むらをかき分けて出てきたクロードは頬についた葉を払い、剣を収める。
 傷だらけの身体で荒い息を吐くクロードは、まさに満身創痍といった感じだ。
 森を進むにつれ、魔物も強くなっているのだ。
 それにワシの言葉に奮起したのか、身体に力が入りすぎている。
 そろそろ休んだ方がいいな。

「今日はもう終わりだ。休む準備をするぞ。クロード」
「でも……」
「するのだ。お前は少し座っていろ」
「……はい」

 くしゃりと髪を撫でてやると、クロードは岩に腰掛けた。
 やはり相当に疲れていたようで、ぐったりともたれ掛かっている。
 ふむ、そうだな。今日は頑張ったし、少し労ってやってもいいかもしれない。

「よし、今日はワシが食事を作ってやろう」
「え……? ゼフ君が、ですか……?」

 きょとんとした顔でワシを見るクロード。
 おい、どういう意味だ。

「えぇとその……大丈夫ですか……?」
「当たり前だ。一人で飯くらい作れる」

 今まではレディアやクロードが料理上手だったので作る機会もなかったが、前世ではよく一人で作って食べていたものだ。

「まぁ楽しみに待っていろ。調理道具があるだろう? 貸してくれ」
「は、はい……」

 不安そうな顔で袋から調理道具を取り出すクロード。
 通りすがりに採取した食えそうな野菜と、巻き添えで焼けた兎の肉を切って鍋にぶち込み、魔導で火をつけた。
 滴り落ちる油が鍋を伝い、ジュウジュウと白い煙が上がる。
 義手についていた刃物部分だが、結構役に立つな。
 ざくざくとかき混ぜると、いい匂いが鼻をくすぐる。

「あとは塩コショウで味をつけて……っと」

 完成である。
 肉と野菜の炒め物だ。
 皿に盛り付け、クロードに一つを差し出す。

「うわぁ! すごいですゼフ君っ!」
「大げさだぞ全く……」
「えへへ、ごめんなさい。……いただきますっ!」

 ワシもいただくとするか。
 皿に持った野菜と肉を絡め、口に運んでいく。
 ……むぅ、少し焦げ臭いし、味が薄い。
 久しぶり過ぎて味の調整と火の加減をミスってしまったな。
 皆の料理に慣れたから、舌が肥えてしまったのかましれないな。

「美味しいですっ! ゼフ君っ!」

 だがクロードは文句も言わず、ぱくぱくと食べていた。
 目には涙を浮かべ、噛みしめるようにして。

「無理をしなくていいのだぞ。クロード」
「無理なんて……本当に美味しいですよ。それに、嬉しいんです。その、ゼフ君の手料理を食べられて……えへへ」

 消え入りそうな声を、クロードは笑って誤魔化すのだった。
 ったく、可愛らしいことを言いおって。照れくさいではないか。

「……ほら、食ったし寝るぞ」
「はい」

 毛布に包まると、クロードも潜り込み身体を寄せてくるのだった。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。