効率厨魔導師、第二の人生で魔導を極める

謙虚なサークル

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321 精霊の森へ②

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「あ、あらあらあら……クロードさまったら……本当に女の方でしたのねぇ……」
「ご理解頂けて幸いです」

 鎧を着直しながらクロードは答える。
 信じられないと言って聞かないメアに、クロードは鎧を脱いで見せたのだ。
 女性らしい体つきを見せられては、思い込みの激しいメアも信じざるを得ない。

「流石にゼフさまは男なのですわよねぇ……?」
「当たり前だ、馬鹿者」
「あはは……」

 疑りの眼差しでワシを見るメアにきっぱりと言っておく。
 それにしてもワシまで疑うとは……どうやら相当ショックだったようである。
 クロードの方もそこまで疑われるとは思わなかったのか、その笑顔は少し引きつっていた。

「えぇと……ではまず皆さまを街へ案内いたしますわぁ。少し寄りたいところがありますので……精霊の森へは、その後向かいましょう」
「おいおい、あれだけ暴れておいて街に戻っても大丈夫なのかよ……」

 先刻、タイタニアでワシを追ってくる時に街をめちゃくちゃにしてたのは他でもないメアである。
 街の人にも恨まれそうなものだが、メアはにっこり笑って手を振る。

「えぇ、問題ないですわよぉ。日常茶飯事ですので……さ、早く早くぅ」
「それはそれで問題ある気がするが……まぁいいか」

 本人がいいというならそうなのだろう。いざとなったら逃げればいい。
 そんなことを考えているうちに、メアはタイタニアの胸部にひょいひょいと飛び乗る。
 しばらくすると、タイタニアはずずんと大きな音を響かせて立ち上がった。
 それを見た皆は、驚き声を上げる。

「ぜ、ゼフ君っ! 一体何なんですかあれはっ!?」
「石の巨人……すっごく大きいです!」
「うーむ……あれは一体どういった仕組みで動いているのだ? ゼフ」

 セルベリエの問いに、ワシは少し考え込んで答えた。

「……メアは怪力でな。あれは自分の力で動かしているらしい」
「そ、そうか……」

 絶句するセルベリエ。
 メアはタイタニアの巨大な手を差し出してきた。

「それではここに乗ってくださいましぃ」
「大丈夫なのだろうな……」

 どうも最近妙な乗り物ばかりに乗っている気がする。
 バイロードよりましならよしと考えよう。
 恐る恐る乗ってみると、タイタニアは大事なものを扱うようにそろりと両手で抱え上げた。

「では安全運転で行きますわよぉ」

 メアが声を上げると、タイタニアはゆっくりと歩き出す。
 一歩歩くごとに揺れるのは揺れるが、そこまでの振動ではない。
 最初は不安そうだったミリィも、すぐにタイタニアの指先に乗りだして景色を眺めだした。
 こらこら、落ちないように気をつけろよ。

「わぁ! 高い高ーい♪」
「いい眺めですね」
「うむ、案外乗り心地は悪くないな」

 多少は揺れるが眺めもいいし、何よりメアの言葉通り安全運転である。

「乗り心地はいかがですかぁ~」
「うんっ! さいこーっ♪」

 ミリィも気に入ったようである。
 親指を立ててメアに返した。
 仲の良いその様子を見て、レディアは目を細める。

「いやぁ、すごいねぇミリィちゃんは」
「そうだな」

 つい先刻まで争っていた相手でも、あぁやって普通に接することが出来るのは大したものだ。
 中々出来る事ではあるまい。ミリィのリーダーとしての器も大きくなってきたと言うところか。
 まぁ身体は小さなままだが……そんなことを考えながらミリィを見ていると身体を隠すようにしてワシを睨みつけてきた。

「……何、私の身体ジロジロ見てるのよ。ゼフのえっち」

 完全に勘違いである。
 自意識過剰というものだ。
 そんなミリィを見て、メアがくすくすと笑う。

「うふふ、ゼフさんはミリィさまのようなお子様体型には興味ないのですわよぉ」
「何よっ! メアの方が小さいくせにっ!」
「あらあらそんな事ないですわよぉ。ほらほらぁ~」

 身を乗り出すようにして胸元を見せつけるメア。
 頑張って寄せてはいるが、谷間のたの字も出来ていない。
 残念ながらミリィとどっこいどっこいである。

「あらいやだ、ゼフさまったら私の事をじっとりと見ておりますわ」
「ちょっとゼフっ!」
「おい、いいから運転に集中……」

 しろ、とワシが言いかけた瞬間にがくんとタイタニアが大きく揺れた。
 よろめくクロードを支えてやる。

「きゃっ!? あ、ありがとうございます、ゼフ君……」
「ったく言わんこっちゃない、前を見て運転しろよ。前を」
「も、申し訳ありません……もう、ミリィさまのせいですわ」
「人のせいにしないでよっ!」

 ミリィとの言い争いに夢中になって、操縦が疎かになっていたようである。
 なんというか……こういう所も含めて二人共、同レベルなんだよな。
 ミリィがすぐに気を許したのはその辺りの事もあるのかもしれない。

 タイタニアに乗り、しばらく移動しているとガイムの街が見えてきた。
 当然と言えば当然だが、タイタニアによる破壊の痕は健在である。

「へぇ……あれがこちらの大陸での街、ですか……」
「人がいっぱいいますねぇ」

 シルシュが興味深げに尻尾を振りながら、街を見下している。
 街にはエルフやドワーフ、半漁人や半獣人など、多種多様な亜人種族が多く住んでいる。
 ワシらの大陸にも少数の亜人はいたが、基本的に他種族と交じることはせず、隠れて住んでいるものが殆どであった。こちらの大陸ではそういうのは気にしないのだろうか。

「ここからは歩いて行きましょうかぁ」
「タイタニアで行って破壊活動するわけにも行かないものな」
「うふふ、ゼフさまったらイジワルですわぁ」

 クギを刺したつもりなのだが、メアは全く気にする素振りなくクスクスと笑っている。……本当に大丈夫なのだろうか。
 心配するワシと裏腹にメアは堂々としたものである。
 ワシらが街へ足を踏み入れると、すぐに街人の一人がこちらに手を降ってきた。

「おおーい、メアちゃんおかえりぃー」
「ただいまです~っ! 先刻はお騒がせして申し訳ありませんでしたぁ~っ!」
「はっはっは、気にせんでえぇよ。それより野菜が採れたんだ。持っていきな!」
「わぁ、ありがとうございますわぁ!」

 メアの言う通り、街人は本当に気にしていないようだ。
 ひんしゅくを買うどころか、野菜を貰っている程である。
 しかしこの街の人々、いくらなんでも大らかすぎるだろ。
 うーむ、多くの種族が住む街の連中だからこそ、なのかもしれんな。

 ……とはいえこれだけ街を壊されたのにこれは、少々心が広すぎる気もする。
 そこかしこで壊れた家から土煙が上がっていた。
 だが当のメアは全く気にする様子もなく、道行く人に尋ねる。

「ところでぇ、おじいちゃまはどこにいらっしゃいますかぁ?」
「ギルフさんかい? 川を見に行くっていってたがなぁ」
「そうですかぁ、ありがとうございますぅ」

 メアが男に頭を下げると、ワシらの方を向き直る。

「私はおじいちゃまに行ってきますの報告をして参りますのでぇ、皆様は街を見ていて下さいませんかぁ?」
「それは丁度いいな。まだまだ見足りなかったのだ」
「ゆっくり見れなかったもんね!」

 何せ色々と珍しいものばかりである。
 ミリィや他の皆も、さっきから興味深げに辺りを見渡している。
 メアもそれに気づいて、気を使ってくれたのかもしれないな。案外気が利くではないか。

「だがそのおじいちゃまとやらに、ワシらも会っておいた方が良いのではないか?」
「いぃえ、必要ないですわぁ。しばらく留守にすると言うだけですのでぇ」
「わかった、では甘えさせてもらうとしよう」
「ねぇゼフ、一緒に行きましょうよ! ……ってちょっと! ほっとかないでよーっ!」

 ミリィの言葉が遥か後ろの方で聞こえた気がしたが、無視である。
 子守をしていては自由に見て回れないからな。
 実はワシも見て回りたくて、うずうずしていたのだ。
 こちらに向かって何か叫んでいるミリィを、クロードがなだめているようだ。
 ワシを見て、「ミリィさんの事は任せてください」とばかりに頷くのだった。
 ナイスクロード。ミリィの事は任せたぞ。
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