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連載
310 陸地③
しおりを挟む一夜明けて次の日、イエラの元にギルドの代表が集められていた。
これからの方針について話し合う為である。
うちのギルドからはワシとミリィが参加する事になった。
もう大分溶けかけた巨大氷柱の近くに設置されたイエラのテントに入ると、既に皆集まっているようだ。
セシルが入ってきたワシをじろりと睨みつけた。
「……少々遅刻だぞゼフ」
「すまなかったな、ミリィを起こすのに手間取った」
「うぅ……ごめんなさい」
久しぶりの陸だからと安心してしまったのだろうか。
ミリィが中々起きてこなかったのである。
「まぁまぁええやん、子供は寝て育つ言うしな。アリィちゃんもワイらみたく大きくなりたいやろ?」
「……ミリィですけど」
「はっはーすまんすまん」
「あー……ごほん、そろそろいいかのう」
イエラが大きく咳をすると、皆真面目な顔に戻る。
机の上に広げられた地図はこの付近のモノのようである。
イエラは自分の姿を模した模型を地図の上に置き、ゆっくり北の方に動かしていく。
その先には村のようなものが描かれていた。
「前回の調査隊が最初に辿り着いたのがこの……わらわの故郷、エルフの村じゃ」
「エルフねぇ……気難しい連中が多いと聞くが、大丈夫なのか?」
「まぁ何とかなるじゃろ。とはいえ年月がたっておるからまだ村があるのかわからんが……」
ちなみに当時のエルフたちの一部は、調査隊と行動を共にしてワシらの大陸へ戻ったという。
それがイエラの祖父母なのだとか。イエラの故郷か……ちょっと見てみたい気もするな。
「そんで、エルフの村とやらには誰が行くんや?」
「んむ、エルフは警戒心が非常に強いし、ゾロゾロと大人数で行っても警戒されるじゃろう。そもそも村があるかもわからんし、ここは人数を絞り偵察に行って貰う事にした」
そう言って、イエラはワシらの方をちらりと見やる。
セシルとダインもだ。
「……というワケじゃ。ゼフよ、行ってみてくれんかの?」
「ワシらがか?」
「私やダイン、イエラ殿は隊の人数が多く、大人数の面倒を見ることになるからな。おいそれと離れられないのですよ」
「ゼフやんらは人数も少ないし、精鋭揃いやろ?」
……ふむ、まぁ確かにそうか。
元々ワシらは少人数でやってきたし、大人数でぞろぞろ行動するのも好みではない。
ワシらだけなら好き勝手やっても文句を言われる事もない。
……ここだけの話、足も引っ張られないしな。
「それに、人をたらし込むのも上手いしのう」
そう言って、イエラはニヤニヤ笑う。
一言余計だぞイエラ。人を詐欺師みたいにいうのはやめろ。
――――会議が終わったのは昼頃である。
調査以外にも食料や資材の分析、拠点の設営など、色々とやっていたが調査隊に任命されたワシらには関係のない事ばかりだ。
ミリィも後半は寝ていた。
皆のところに戻り、会議の内容を説明する。
「……というわけで、ワシらの任務はこの先にあるというエルフの村の偵察だ」
「でしたら早速準備に取り掛からないといけませんね」
「あぁ、レディアたちも交えてな」
「ご飯でも食べながらねっ!」
ワシらは食料を抱え、小舟でエイジャス号へと戻っていた。
結局昨日、二人とも戻ってこなかったからな。
一体何をやっているやら……根を詰めていなければいいのだが。
船へと登り、近くの船員を掴まえて話を聞くと、どうやら二人は工房にいるらしい。
エイジャス号には技術者用の工房が幾つかあるのだ。
そこへ行き、扉を開けようとすると、タイミングよく中からレディアが出てきた。
服は乱れ、表情には疲れが見える。
……また徹夜していたな。
「あれ~ゼフっちじゃん、どしたの?」
「食事を届けに来たのだ。それとこれからの話もな」
「おお~ありがと~っ! ……せっちーん、ゼフっち来たよー」
「今行く」
返事の後、中からセルベリエが出てきた。
こちらも寝不足そうな顔である。
ったくあまり無理はしてくれるなよ。
二人を甲板の上に連れ出し、先日貰った食事を囲む。
「ん! おいひー! やっぱたまには野菜を取らないとねぇ~せっちんも好き嫌いしちゃダメよ~」
「……わかっている」
人参だけ選り分けようとするセルベリエにくぎを刺すレディア。
大盛りのサラダをかき込むようにして食べていく。
気持ちのいい食べっぷりだ。
「それでさ、ゼフっちがここに来たって事は、私たちが偵察に選ばれたって事?」
「よくわかったな。まさにその通りだ」
「実はババアから聞いていてな。我々を偵察に選ぶかもしれないと」
既に決定事項だったのかよ。
……まぁ構わんがな。折角未踏の大陸に来たのだ、じっとしておくのも性に合わん。
「んぐんぐ……ぷはっ! それでさ、私たちが前から造っていた新作を試そうと思ってんたんだよね~」
「丁度今しがた完成したところだ。是非見ていってほしい」
レディアとセルベリエがアイコンタクトをし、得意げに笑う。
何だかわからないが期待できそうだ。
食事が終わり、二人に連れられてまた整備室の方へと向かう。
「ちょーっと待っててね」
そう言うとレディアは工房の奥へ行き、何やらごそごそとし始めた。
しばらくして呼ばれてはいると、得意げな顔のレディアの横に布に包まれた馬のようなシルエットの物体が置かれていた。
レディアは布の端をむんずと掴むと、勢いよくはぎ取る。
「ではでは我らの造りだした新作をごらんあれー! じゃじゃーん!」
効果音付きで剥ぎ取られた布からあらわれたのは、鉄で出来た自転車のようなモノ……である。
ただし似てはいるが完全に別物。金属製のボディの腹部分には、何やら鉄の管が複雑に走っており、尻の方に二本突き出していた。
「な、何だこれは……?」
「んふふ~驚いた? 驚いたでしょ? これが魔導二輪車、その名もバイロードでーっす」
恐らく自転車のようにペダルを漕いで推進力を得て進むのだろうが……こんなに重くてまともに走るのだろうか。
レディアの事だから何か仕掛けがあるのだろうが、皆目見当がつかない。
「エイジャス号を造った時に、いろんな国の技術者と話す機会があったんだよね~その技術の結晶がこの子なのよ!」
「……レディアはモテていたからな。様々な技術をタダで教えて貰っていた」
ため息を吐くセルベリエ。
流石商人、抜け目がない。
その技術を利用して作ったというわけか。
ミリィはそれを見て、目をキラキラさせている。
「ふわ~……こんなの造るなんて、すごいね二人とも」
「私は大した事はしていない。殆どレディアがつくったようなものだ」
「なーに言ってんの、せっちんがいないと魔導機関についてはどうしようもなかったし、ホントせっちんてば凄いんだから~」
「わ、私は本当に……」
レディアに絡まれて、赤くなるセルベリエ。
どちらにしろ大したものだ。
やはりこの二人の出会いは歴史を変えてしまったかもしれないな。
「とりあえずさ、見ててよ皆」
そう言うとレディアがバイロードに跨り、何やら手首を回し、ペダルを蹴っている。
ガチン、ガチンと金属を叩くような音がしばらく続いた後、いきなりバイロードから煙が上がった。
バオオオオオオオ! と轟音が室内に鳴り響く。
「きゃあっ!? 何っ! この音っ!?」
「さ、下がってくださいミリィさん!」
身構える皆を一瞥しレディアが笑う。
手首をぐんと捻ると、バイロードの車輪がギャリギャリと回り始めた。
「いーーーやっほーーーーっ!」
レディアが叫び声を上げると共に、すさまじい速度でバイロードが走り出した。
一気に加速したバイロードは扉をぶち破り、そのまま外へ飛び出す。
おい、どこへ行くというのだ。
「た、大変ですっ! 柵を破って……!」
「落ちたのか!?」
思わず駆け出し海を覗き見ると、水面に波紋が出来、波立っている。
まさか海に……と考えたワシの肩を、セルベリエがちょんちょんとつつく。
セルベリエの指さす先――――陸の上には見事着地したバイロードとそれに跨るレディアがいた。
ここから陸までは船で行くような距離だぞ。……それを飛んだというのか。
「あれが魔導二輪車バイロードだよ。超鋼に魔力線を巡らせ使い手の魔力を伝わせ動作をシンクロ。及び、内部に運び爆発させて推進力とする。エンジン部分は硬度の関係で苦戦していたが、ある地方で使われていたレベニウム合金が相性が良かった。程よい粘りもあり……」
得意げにそのスペックを語るセルベリエだが、その内容はワシにはほとんど理解できぬものだった。
だがしかし魔導二輪車バイロードか……とんでもないマシンを造ったものだな。
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バイクを何度か描こうとしたのですが、難しすぎて断念しました……
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