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連載
306 ゴーストシップ⑥
しおりを挟む「クロードはそのまま目を瞑って、私に身を委ねてくれればいいからねっ!」
「お願いします、アインちゃん」
目を瞑ったまま、クロードはドレイクデッドへと剣を向ける。
ドレイクデッドはゆっくりと近づきながら、身体の周りに水の玉を浮かべた。
――――ブルーバレットだ。
ドレイクデッドの攻撃で要注意なのは、中等魔導であるブルーバレットだ。
その威力は半端ではなく、何の対策もしていなければ一瞬で削り殺されてしまう。
だが相手は魔導士殺しを持つクロードだ。
「クロードっ! スクリーンポイントよろしくっ!」
「はいっ!」
クロードがアインの声に応え、魔力を集中させていく。
……だがちょっと待て。
スクリーンポイントは魔導を弾く魔導、展開すれば身に纏っているアインすらも外してしまうのではないか?
既に蒼系統への耐性を持つブルーアインなら、ブルーバレットのダメージもかなり軽減できる。
下手にスクリーンポイントを展開するのは逆に危ないかもしれない。
「クロード、待てっ!」
だが制止の声も間に合わず、クロードに水の弾丸が降り注ぐ。
そしてスクリーンポイントが発動したのも見えた。
――――だが、クロードからはアインが外れていない。
水煙が晴れていき、その姿が露わになる。
そこには盾を構えたクロードの姿が。
よくみれば盾のみが、淡い光に包まれている。
一カ所にスクリーンポイントを展開し、ブルーバレットを防いだようだ。
なるほど、剣にスクリーンポイントを纏わせることが出来るのだから、盾にも同じことが出来るのは道理。
「ちょっとヒヤっとしましたけどね」
防ぎきれなかったブルーバレットが少々身体に掠ったようだが、纏ったブルーアインにより大したダメージは受けていない。
ふう、ヒヤっとしたのはこっちだぞ。
「グ……ギギ……」
呻き声を上げながら、ドレイクデッドがゆっくりとクロードに近づいていく。
ドレイクデッドの動きは鈍い。
なので本来であれば魔導対策をした後に接近戦を挑むのがセオリーだ。
だが万が一クロードが目を開けてしまうと、ド迫力のグロ顔を至近距離で見てしまうことになる。
その場合、クロードは確実に戦闘不能だ。
遠距離でブルーバレットに耐えさせていた方が、安全かもしれない。
「……クロード、距離を取って奴の相手をしてくれ」
「わかりました」
と言っても動くのはアインなのだが。
とん、とんと、後ろにステップするクロード(アイン)の後ろに身を隠す。
そういえば危なくてあまり使うチャンスの無い魔導があったな……試してみるか。
周囲に水球を集めていくドレイクデッドに向け、タイムスクエアを念じる。
時間停止中に念じるのはレッドウォール、ブラックウォール、ホワイトウォール。
――――三重合成魔導、リフレクトウォール。
それをスクリーンポイントを展開したクロードの盾の前に、発動させる。
直後、ドレイクデッドがブルーバレットを放つ。
降り注ぐ水弾の雨あられを受け止めるリフレクトウォールは、その水弾を反射させドレイクデッドへと跳ね返していく。
豪雨の如く水弾が、腐敗したその身体を削っていく。
「ゴゴ……ガガァ……!?」
反射された数十発の水弾を浴びながら、苦悶の声を上げるドレイクデッド。
リフレクトウォールは受けた魔導を弾き返す魔導。
ただ反射できる面積が非常に狭く、幾らかは通り抜けてしまうので防御壁としての効果はかなり微妙だ。
普通に使った場合、自身が魔導を受けながら跳ね返す事になり何というか、肉を切らせて骨を断つ的な使い方になってしまうのである。
「む……そろそろヤバいか」
みし、みしとリフレクトウォールにヒビが入っていく。
その上こいつは強度も低いのだ。
リフレクトウォールはそのままあっさり砕け散ってしまった。
即座にもう一度リフレクトウォールを貼り直すが、何発かの水弾がその隙間に通り抜けクロードを直撃した。
……とまぁこんな感じで、壁として使うには危なすぎる魔導なのである。
ドレイクデッド
レベル78
魔力値152863/352891
だが危険を冒している分、ダメージを与える量も半端ではない。普通の魔導師より遙かに強力なボスの魔導。それを直接跳ね返しているのだ。
リフレクトウォールによる反射は、一瞬にしてドレイクデッドの魔力値を削り取っていく。
「グ……ガ……!」
跳ね返された水弾を受け、ドレイクデッドの纏う服が、帽子が弾け飛ぶ。
と共に、露わになっていくグロテスクなボディー。
……おおう、これは想像以上にグロいな。
蛆や蟲、海性生物がドレイクデッドの体内にウヨウヨと沸いているのが見える。
割と耐性はあるつもりだったが、ワシまで少々気分が悪くなってきたぞ。
絶対にクロードに見せるわけにはいかない。アインも同じことを思ったのだろう、ワシと目を合わせこくりと頷く。
更に反射した水弾を浴びるドレイクデッドが、全身を痙攣させながら強力な魔力を発し始めた。
「っと、どうやら発狂モードに入るようだな」
ボロボロと崩れていくドレイクデッドの体内から蟲が湧き出し、全身を彩るようにのた打ち回っている。
体内の器官も剥き出しになり、更にグロくなっていく。
うーむグロイ。精神攻撃力あるなコレは。
「ガ……グ……ゥ!」
ドレイクデッドの発狂モードはグロテスクな見た目になるだけでなく、体内に潜む蟲や海性生物も攻撃してくるようになるのだ。
先刻よりもさらに多くの水球が、ドレイクデッドの周りに浮かぶ。
――――ブルーバレット。
それを本体だけでなく、蟲も同時に発動させたのだ。
まるで暴風雨のように降り注ぐ水弾だが、無駄だ。
リフレクトウォールにより、むしろより先刻より速く自分にダメージが跳ね返されるだけである。
更なる速さで削れていく、ドレイクデッドの魔力値。
「クロード! 左っ! 今度は右っ」
「よ……っ! はっ!」
クロードも目を閉じたまま、アインに導かれるままにドレイクデッドと距離を取り、時折伸びる蟲やら触手やらを払っていく。
スクリーンポイントを展開した盾で、リフレクトウォールで弾き切れなかった水弾によるダメージを受ける事もない。
このまま完封出来そうだな。
「ァ……ァ……!」
もはや虫の息となったドレイクデッド、千切れかけた手をクロードに伸ばしてくる。
が、その手はクロードに触れることない。
――――レッドゼロ。
ワシの手から放たれた炎の剣がドレイクデッドの腕を塵と化し、その線上にあった胴体をも吹き飛ばした。
「……ふん、ワシの仲間に汚い手で触れるなよ」
「ガ――――」
ドレイクデッドはそう呻くと、床にどさりと倒れ込むのであった。
ふう、勝手に死んでくれて助かったな。
色々とうまくかみ合った相手であった。
リフレクトウォールはクロードと連携すれば案外使えるな。
「二人とも、おつかれさまっ!」
「終わったのですか? 何かボク、何もしてないですけ……ど……」
「あ、おいクロード、まだ目を開けては――――」
だが制止の声は間に合わず、クロードの視界にドレイクデッドの死体が飛び込んでくる。
まだ消滅しきっていない蟲だらけのグロテスクな死体。
クロードの身体が、固まる。
「えーと……クロード、大丈夫か?」
声をかけるが返事はない。
「気絶してるみたい……ていうか私も……魔力が……」
そういえばレッドゼロをトドメに使ったのだった。
クロードを包んでいたアインが、光と共に消滅していく。
「……ま、出口までは辿り着けたしよしとするか」
倒れ込むクロードを抱きかかえ、ワシは小舟へと乗り込むのであった。
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