効率厨魔導師、第二の人生で魔導を極める

謙虚なサークル

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305 ゴーストシップ⑤●

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 ぎしぎしと、不気味な音を立てて階段を降りていく。
 魔物ゴーストシップの腹の中と思うといい気持ちはしないな。建築物を媒体とした魔物はいわば移動するダンジョンである。内部には魔物もおり、ワシらはすでに何匹かのスケルトンパイレーツを倒していた。
 ちなみにワシが先頭に立ち、クロードはそのすぐ後ろを歩いている。

「す、すみませんゼフ君……さっきの暗示は結構精神的に削られるので、一度切れたらしばらくは使えなくて……」
「う、うむ……まぁ大分無理をしているようだったしな」

 先刻、自身に暗示をかけてのクロードの戦いぶりは、鬼気迫るものがあった。
 その反動故か、クロードの精神防御力は普段よりかなり弱っているようだ。
 いつもは服の裾を掴む程度だが、今のクロードはワシの手を強く握って離さない。
 突き放すわけにもいかんし、やれやれここはワシが頑張るしかあるまい。

「カカカーッ!」
「ひっ!?」

 暗闇から突如飛び出してきたスケルトンパイレーツ、驚いたクロードがワシの背中にしがみつく。
 全く、本当に使い物にならないようだな。

「――――まぁこの程度なら、問題はないがな」

 迫り来る剣を義手で受けながら、タイムスクエアを念じる。
 時間停止中に念じるのはレッドクラッシュ、ホワイトクラッシュ。
 ――――二重合成魔導、ノヴァークラッシュ。

 白炎がスケルトンパイレーツの身体に絡み付き、その身をじゅうじゅうと焼いていく。
 よろめき戸惑うその顔面に、義手を思い切り叩きつけた。
 ぐしゃり、とスケルトンパイレーツの頭蓋が粉々に砕け、消滅していく。

「……ごめんなさいゼフ君、どうしてもその……ダメで……」
「誰にでも苦手なものはあるさ。それに先刻は頑張ってくれたではないか?」
「でも……うぅ……」

 足手まといになっているのが相当気になるのか、クロードは俯いて小さくなっている。
 とはいえこのままというのもよろしくない。
 雑魚相手ならまだしも、強力な魔物があらわれればクロードを守りながらの戦闘は少々厳しいかもな。

「つまり私の出番なのねーっ!」

 呼んでないのにアインが出てきた。
 まぁその通りなのだが。勝手に具現化してくるのはやめろ。

「ふふふ、こういう時の為のカラードサーバント、よね?」
「わかったわかった。使ってやるから一度引っ込め」
「はーいっ♪」
「……ふふ、アインちゃんたら」

 ため息を吐くワシを見て、クロードが少し表情を緩めた。
 ……まぁ勘弁してやるか。緊張感のない奴だが、空気を和ますのには役に立つ。
 そんな事を考えながらタイムスクエアを念じる。
 時間停止中に念じるのはサモンサーバントとブルークラッシュ。
 ――――合成召喚魔導、カラードサーバント。
 光と共にあらわれたのは、まるで水のように半透明な身体となったアイン。
 クロードが不思議そうに目を丸くしている。

「こ、これどうなっているんですか? ……うわっ、ぷるんぷるんしてる!」
「うふふ、気持ちいいでしょ~」

 クロードが半透明のアインを指でつつくと、その部分がまるでゼリーのようにぷるんと震えた。
 ブルークラッシュとの合成召喚は、アインの身体がゼリー状になるのである。

「じゃークロード、後ろ向いて」
「えと……はい、わかりましたけど……」

 おずおずと後ろを向くクロードの背におぶさるように、ゼリー状のアインがドロドロと溶けるようにクロードの身体を纏っていく。

「ひゃっ!? つ、冷たっ!」
「ちょ~っと我慢しててね~」
「あははっ! く、くすぐったいです! アインちゃ……あはははっ!」

 そのままズブズブと、笑い転げるクロードの身体を覆いつくし、顔の部分を残して全身を覆いつくしてしまった。
 しばらくすると落ち着いたのか、クロードも感触を確かめるようにアインに包まれた手足を動かし始めた。

「これは……ん、どういう能力なんでしょうか?」
「その状態のアインは、自身をどんな形にも変える事が出来るのだが……ふむ、一度やってみた方が早いな。クロード、ちょっと身体の力を抜いてみろ」
「わかりまし……うわっ! か、身体が勝手に……?」

 脱力したクロードの身体を、アインが動かしていく。
 ゼリー状となったアインはターゲットの身体にまとわりつき、その動きを操る事が出来るのである。
 と言ってもその力は本来のアインと大して変わらない。妨害目的で使っても相手がアインより力が強ければ効果は薄い。
 こうやってクロードの動きをアインに制御して貰えば、少なくとも戦闘の邪魔になる事はあるまい。

「安心して気絶してていいからね、クロードっ!」
「何だか落ち着きませんが……確かにこれなら足手まといにはならないですね」

 気合を入れ直したのか、アインを纏ったクロードはワシの前に出て歩き始める。
 アインと触れ合っている事で、少しは安心感もあるのだろうか。
 思わぬ副次効果だが……これはやはり使い道なさそうだな。
 見た目もアレだしな。

 ともあれワシらは船内を進んでいく。
 アインを纏ったクロードの動きは普段に比べると幾分か劣るが、まともに前衛を張れる程度には戻っていた。

「コカカ……!」
「キカカ……!」

 カタカタと骨を鳴らしながら通路からあらわれたスケルトンパイレーツ二体の前に、怯まず立ち塞がる。

「はぁぁっ!」




 掛け声と共にスケルトンパイレーツに斬りかかり、白く輝く刃で一撃の元に斬り捨てる。
 ――――白閃華。といってもクロードは剣に魔力を込めるだけ。振るうのはアインであるが。

 苦し紛れに剣を振るうスケルトンパイレーツだが、背中に目でも付いているかのような最小の動きで刺突を躱し、くるりと回転して薙ぎ払うように剣を振るった。

 ざん、と真っ二つになったスケルトンパイレーツが、細かい粒子のようになって消滅していく。

 見事なものではないか。
 そう思いクロードの方をちらりと見ると、その目はぎゅっと閉じられていた。

(いやークロードってば、目を開けてたらまともに動けないから私が身体を動かすのに合わせて全力で剣を振るってるのよねぇ)
(それはそれで器用だな……)

 自身の動きを完全に人任せにするとは、ある意味勇気があるな。
 まぁおかげでワシは楽が出来ているのだ、ここはクロードに任せて魔力を温存しておこう。
 カラードサーバントを維持しながら魔導を使うと、すぐに枯渇してしまうからな。

 階段を降りていく。
 そろそろ船の底だろうか。結構暗い。
 目が慣れていなければ、何も見えなかっただろう。
 所々床に穴が空き、浸水しているのが見える。
 確か取り付けられていた小舟はあっちの方向だったかな。

「おじいっ! クロードっ! 何か来るよっ!」
「む」

 アイン(クロード)の指差す方を向き直る。
 ぺたり、ぺたりと水音を溜らせながら、暗闇の中からあらわれたのは、クラシックな船長姿をした魔物。
 その身体はやはり朽ちており、片目も溶け落ちて腐った肉体は腐臭を放っている。
 まさにゾンビといった感じの魔物に、スカウトスコープ念じる。

 ドレイクデッド
 レベル78
 352891/352891

 この手の魔物は見慣れているワシから見ても、結構グロい。
 耐性のないクロードが見たら、ひとたまりもないだろう。
 絶対に目を開けさせてはならない。

「ボス……ですよね」
「あぁ、引き続き目を開けない方がいいぞ、クロード」
「あはは、最初から開けるつもりはありませんよ!」

 頼もしい返事を聞きながら、ドレイクデッドへと向き直るのだった。
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