効率厨魔導師、第二の人生で魔導を極める

謙虚なサークル

文字の大きさ
148 / 208
連載

289 外の世界へ②

しおりを挟む

「というわけでレディア、これは旅の支度金だ」
「おおっ! すっごい大金じゃなーい! こんなに貰っていいの?」
「うむ、使い方はまかせる。……それに普段レディアには世話になっているからな」
「ありがと、ゼフっち! 嬉しいよっ!」

 そう言って袋ではなく、ワシを抱きしめてくるレディア。
 おい、そっちではないぞ。
 レディアを引き剥がし、予定通りに金を手渡す。
 それをミリィが羨ましそうに指を咥えて見ている。

「いいなぁ~私も欲しい~」
「残った分は皆で山分けだ。各自、装備を整えよう」
「わーいっ!」

 残った分を等分し、皆に手渡していく。
 最後にミリィに手渡すと、えへへとだらしなく笑った。

「久しぶりの大金だぁ♪ 何に使おうかな~」
「……よし、ではミリィは今からワシと買い物だ」
「えっ!? な、なんで……?」
「前に小遣いを渡した時、菓子だのおもちゃだの買って殆ど装備を買わなかったではないか。ちゃんと知っているのだぞ」
「ち、ちょっとくらい、いいじゃない……」
「ちょっと、ならな。小遣いの半分以上使っておるだろう」
「ううっ!? 何故それを……?」
「馬鹿者め。部屋に増えていくガラクタの数がそれを物語っているわ」

 そもそも最近はまともに装備も整えていないしな。
 いい機会だからミリィの装備を一新してやらねばならないだろう。

「ボクもついて行っていいですか?」
「わ、私もお供してよろしいでしょうかっ!」
「あっはは~みんなで行けばいいじゃん、ねぇせっちん」
「私は別に、構わないがな」

 レディアが両腕で皆を抱き込み、ぺちぺちとワシの頭を叩く。
 何やら大人数になってしまったが……まぁたまには皆でというのも悪くないだろう。

 ――――というわけで辿り着いたのは首都プロレア屈指の品ぞろえを誇るシロガネ商店の巨大デパート。
 品揃え自体はかなりいいが、結構お高い店なのであまり来る事がなかったのだよな。
 今は金があるし、外の世界へ行くにはそれなりにいい装備も必要だろう。

「う……結構人が多いですね……」

 帽子を被り、尻尾をスカートの下に仕舞いこんだシルシュが気分悪そうに呟く。
 シルシュは外出時には耳と尻尾を隠している事が多い。獣人だからと因縁をつけてくる輩も時々いるからな。

「あらシルシュちゃん、買い物かしら?」
「えと……はい、そうなのです」
「人混みが苦手なのでしょう? 無理をしちゃあだめよ。あんたたちも気をつけなさい」
「う、うむ……申し訳ない」

 通りがかったおばちゃんが、一方的に声をかけて去っていった。
 結構バレバレである。
 まぁシルシュの大人しい人柄もあり、最近は近隣住民に理解も得られてはいるのだがな。

「いらっしゃいませー!」

 中に入ると白い制服を着た女性が出迎えてくれた。
 彼女たちはデパートガールと言うらしく、結構高い金を払って雇われているそうだ。
 他の店との大きな違いの一つであり、彼女たちを見る為だけにここへ足を運ぶ者もいるとかなんとか。

「いらっしゃいませレディア様」
「やっほ~久々だね~」
「今日は会長との面会でございますか?」
「いやいや、普通に買い物だよん」
「左様でございましたか。それではごゆっくりお楽しみください」

 ぺこりと頭を下げるデパートガール。
 そういえば商業組合に入っているレディアは、ここの会長とも知り合いなのだよな。
 というか、今まで忘れていたが、一応ワシらも知り合いでもある。

 ――――シロガネ商店会長、アードライ。
 昔、船でこの大陸に渡る際に偶然彼を助け、その時に知り合ったのだが……なんというかちょっと変わり者で、正直言うとあまり会いたくない。
 特にミリィを連れては……まぁ会わない事を祈るか。

「私、服を見たい~」
「そうですね、行きましょうか」
「服は……4階だねぇ~」
「行くか」

 階段を上り、4階に辿り着くと所狭しとばかりに服や鎧などが並んでいる。

「じゃあ行きましょうか♪」

 そう言ってミリィが向かう先は、ひらひらとした動きにくそうな普段着の売り場である。
 おい待て違うだろうが。
 走り出すミリィの襟首を掴むと、勢いをつけすぎていたのか滑って転んでしまった。

「痛~っ!? 何するのよっ!」
「今日はまともな装備を買う日だったな? ミ・リ・ィ~」
「う……わ、わかったわよ……」

 ずっこけていたミリィを睨み下ろすと、ぽんぽんとスカートの埃を払い立ち上がる。
 ったく予想通りの行動である。
 やっぱりついて来てよかったな。

「え、えーと……ではあっちは後でと言う事で……ミリィさん、軽鎧とかつけて見ますか?」
「鎧かぁ~どうなんだろう?」

 アドバイスを求めるようにワシを見るミリィ。

「ふむ、防具自体はカードを使えば強化出来る……が、素材が硬いに越したことはない。動くのに邪魔でなければいいのではないか?」
「ではつけてみましょうか」

 クロードがそこらに置いてある、一番小さな鎧を手に取る。
 普段クロードがつけているボディプレートを、更に小さくしたものだ。

「ミリィさん、バンザイしてください」
「はーい」

 バンザイをするミリィの上から、クロードが鎧を被せる。
 何とも微笑ましい光景だな。
 仲の良い兄妹のようだ。そう思った瞬間クロードがワシを見てにっこり笑う。
 相変わらず鋭い。

「離しますね」
「うん」

 クロードが手を離すと、鎧はミリィに装着された。
 ミリィの小さな身体にジャストフィットしている。
 サイズをちゃんと把握していたのであろう。いい目利きだ。

「……ぅ重っ!?」

 だがしかし、うめき声を上げて崩れ落ちそうになるミリィ。
 鎧は肩にギリギリと食い込み、重すぎるのかフラフラと蹌踉めいている。

「おろろ、大丈夫? ミリィちゃん」
「うぅ……重すぎるぅ……」
「鍛え方が足らないのだ」

 ミリィの鎧を持ってやると、そこから虫が脱皮するようにズルズルと抜け出す。
 と、そうは言ったがこれ案外重いぞ。
 クロードのやつ、よくこんなモノを付けて満足に動けるな。
 意外とムキムキなのかもしれない。
 ワシの視線に気づいたのか、慌てたように弁明を始める。

「よ、要は慣れですよ! 力の入れようで重いものを着たままでも動けるようになるんですっ!」
「そうそう、慣れよ慣れ」
「……レディアさんはむしろ一番薄着じゃあないですか」
「私はほら、避けるからね。動きやすい方がいいのよ」

 自慢げに胸を張るレディアだが、言っているのは長斧についての事だろう。
 あれは前に持たせて貰った事があるが、相当に重かった。
 ちなみ何故あんな重いものを軽々振り回せるのか、という問いに対する答えが「慣れ」だったのである。
 高い戦闘センスを持つレディアには、そうとしか説明できないのかもしれない。

「ではこういうのはどうでしょう?」

 シルシュが持ってきたのは厚手のローブ。
 足首まである長いスカートは少々華やかさに欠けるが、これはこれで清楚な雰囲気が出ている。
 着替え室から出てきたミリィは、スカートの裾を持ち上げながらくるりと回った。

「んー……ちょっと動きにくいかも」
「普段はミニだからねー」

 両手を離した状態でくるくる回っていると、スカートを引っ掛けてよろめいた。

「わっ!? たたっ!?」
「危ない!」

 咄嗟に手を伸ばし、服をかけている棚を支える。
 グラグラ揺れてはいたが、何とか倒さずに済んだ。
 やれやれとため息を吐いていると、ミリィがワシの足元で顔面からずっこけていた。

「……大丈夫か? ミリィ」
「痛い……」
「あっはは、ミリィちゃんは小さいからさ、ブカブカで動きにくいんだねぇ」

 というわけで、ミリィは普段と同じ感じで装備を揃える事にしたのであった。
 結局慣れた格好が一番という事か。
 レディアの言葉も頷ける部分はあるかもしれないな。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。