効率厨魔導師、第二の人生で魔導を極める

謙虚なサークル

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281 ヘリオンの迷宮①

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「そとのせかい?」
「うむ」

 家に帰り、皆の前でバートラムの依頼を話す。
 外の世界については皆もよくは知らないようだ。
 特にミリィの返事は全く理解していない時のアレである。
 逆にセルベリエは、外の世界に心当たりがありそうな顔をしている。

「外の世界か……そういえばイエラが赤ん坊の頃、仲間と共に外の世界からこちらに移って来たと聞いたことがあるな」

 やはりそうなのか。
 というかイエラの奴、その頃から生きていたのか……恐るべしエルフの寿命。

「外の世界は未開の地だ。何があるか分からないし、行きたくないなら無理強いは……」

 言いかけて止める。 
 皆、野暮なことをと言った目でワシを見ていた。

「ゼフ君が行く所なら、ボクは何処までもついて行きますよ!」
「わ、私もですっ!」
「外の世界かぁ~面白そうな材料もありそうだし、私もとーぜんついて行くよ」
「……ま、暇だしな。付き合ってやるさ」

 皆、気持ちよくついて来てくれるとの事だ。
 ありがたい。

「じゃ、次なる私たちの目的地は外の世界って事で! けってーい!」

 皆の意見をまとめるかのように、ミリィは天井を指差すのであった。

「それでゼフ、いつ頃行く事になりそうなの?」
「まだ結構先だと思うぞ。ワシらだけで行くわけではないし、船にも荷物を積み込まなくてはならないからな。恐らくだが数か月先になりそうだ」
「じゃーそれまでにゼフっちの義手のスペアをいっぱい作っとかないとねぇ~すぐ壊しちゃうんだからさ」
「……すまん」
「あっはは、気にしない気にしない♪ いーのよ、お金の事は!」

 レディアがばしばしとワシの背中を叩く。
 レディアは根を詰めるタイプだ。修理の間は鍛冶場にこもりきりだし、ワシが手伝えることもあまりない。
 他にも金銭面で色々と世話になっているし、気にしないという方が無理だろう。

「では私たちはそれまで普段通りにしてればいいのですか?」
「ふむ……折角期間があるし、たまには皆でダンジョンでも攻略してみるか?」
「おおっ! いいね~!」

 最近はバラバラで戦う事が多かったし、外の世界では何が起こるか分からない。チームワークは重要だからな。
 ここらで一つ、全員での戦闘をこなしておくのも悪くはないだろう。
 特にクロードがワシらと行動を共にし出したのは最近だ。

「それならば丁度いい場所があるんじゃがのー」

 と、いきなり部屋の隅から声がする。
 イエラだ。

「い、いつの間に……っ!?」
「ほっほっ修行がたらんのーセルベリエ。わらわは最初からここにおったぞ?」
「勝手に入って来るなと言っているだろうっ! ババアっ!」
「お母様に向かってババアとはなんじゃっ! そもそもここは元々わらわの家じゃからなっ!」
「今は私たちの家だっ!」

 会うなり喧嘩を始めるセルベリエとイエラ。
 ったく仲がいいのか悪いのか……まぁまぁと二人を引き離すと、イエラがこほんと咳払いをして机の上に地図を広げる。

「ヘリオンの迷宮……最近出来たダンジョンでまだ全貌が明らかになっておらんのじゃ。その内部調査をしてもらいたい」
「地図の作成、か?」
「うむ。以前、ゼフの調査書が出来の良かったのを思い出してのう。どうじゃ、受けてくれんか?」
「ふむ……」

 時々自然発生するダンジョンだが、当然出来たばかりの頃は地図が存在しない。
 そういう時は人の手で埋めていき、作られた迷宮地図はかなりの高値で売れるのだ。
 魔導師協会や冒険者ギルドの依頼で行われる事が多く、危険度が高すぎればダンジョンを潰すなり何なりと対処を行われる。

「おわっ!? いち……じゅー……ひゃく……」
「ふふふ、報酬は弾むぞー」

 ミリィがそのあまりの金額に、契約書を何度も見直している。
 地図作成は低難度のダンジョンであれば駆け出しの冒険者に人気のある任務なのだが、高難易度のダンジョンは報酬金が高いが危険度もそれに見合うものだ。

「バートラムから聞いたぞ。外の世界の調査隊に選ばれたんじゃろ? 準備にもカネがかかるじゃろうし、悪くない話じゃと思うのだがな」
「そうだな、悪くない」
「うんっ! やろうよ!」

 ミリィに続くように皆も頷き、イエラはごそごそと契約書を取り出した。
 契約書に小さな手をかざし、ミリィが宣言する。

「――――契約に従い、我ら『蒼穹の狩人』はこの任務を受ける事を誓います」

 契約書にミリィの手形が刻まれ、イエラも満足そうに頷いた。

「それでは契約完了じゃ、任せたぞ、『蒼穹の狩人』殿」
「はーいっ♪」

 去っていくイエラに元気よく返事をするミリィであった。
 それにしてもヘリオンの迷宮か……ワシも前世で何度か行った事があるが、内部はまるで蜘蛛の巣のように入り組んでおり、地図があっても面倒なダンジョンだった記憶がある。
 それなりの高レベルダンジョンだ。皆で戦うにはうってつけかもしれない。

 ――――そして翌日、ワシらはヘリオンの迷宮へと辿り着いた。
 岩場の中にぽっかりと空いた洞穴、階段のように敷き詰められた石畳がまるで誘っているかのようだ。
 霊体系の魔物が好む独特の気配に、隣にいたクロードが息を飲む。

「どうしたクロード、怖いのか?」
「ここ、怖くなんてあるわけないじゃないですか!?」

 と言いつつワシの服の袖を掴んだままである。
 声が裏返っているぞ。クロード。

「あっはは♪ クロちゃんまだオバケ怖いんだ~」
「うぅ……すみません……」
「気にするな、誰にでも苦手なものはある」

 しょげるクロードの頭を撫で、慰めておく。
 これからしっかり働いて貰うのだからな。落ち込まれていては困る。

「あーキミたち、入口でたむろっていられると邪魔なのですがね?」

 不意に後方から聞こえる声に振り返ると、3人の女と、一人の男が立っていた。
 男は黒地に金のラインが何本も入った派手な槍と鎧を纏っている。
 そこそこ整った顔立ちだが、目つきがキツイ。
 従えている女たちの装備はボロボロで、所々が欠けている。

 彼らに何か、引っ掛かるものを感じたワシは彼らにスカウトスコープを念じる。

 リーダー格の男はダリオという名で、レベルは25。
 女三人は左からアニス、ミーア、レイシル……軒並みレベル70を超えている。

 女たちの身体は傷だらけで、装備の手入れもロクにされていない。恐らく戦闘奴隷だろう。

(冒険者……というより恐らく、壁パーティというやつだな)

 金持ちの貴族がレベルを上げる際、奴隷を壁にして後ろから主人が攻撃し、効率的にレベルを上げる方法がある。
 それが壁パーティというものだ。
 魔物を倒した時に得られるマナはギルドを組んだ状態であれば、戦闘に参加したメンバー全員に等分配されるが、あえてギルドを組まない事で主人が大量のマナを得ることが出来るのである。

「そこにいられると邪魔なのです。入らないなら退いてくれますか?」

 ダリオの言葉遣いは丁寧だが、癇に障るような物言いだ。
 しっしっと汚いものを払うような仕草のダリオにミリィもムッとしたのか、ワシとの間に入ってくる。

「何よ、入り口は広いんだから、勝手に入ればいいでしょ! わざわざ突っかからなくてもいいじゃん! えらそーにさ」
「んん? なんだいキミは」

 そう言ってミリィを見下ろすダリオ。 
 身長差は頭二つ分くらいだろうか。
 ダリオはミリィに絡まれたのが可笑しかったのか、ふふんと鼻で笑う。

「ここはきけんなダンジョンだから、おこちゃまはかえったほうがいいんじゃあないかなぁ?
「だ、誰がお子ちゃまですって! 私にはミリィって名前があるんですけど!?」
「ほおう、名乗られたならこちらも名乗り返しましょう? 私はダリオ=イーシュタル、しがない貴族ですよ、マリィちゃん」
「マリィじゃないっ! ミリィよっ!」

 ダリオに煽られ、真っ赤になって反論するミリィ。
 おいおいヒートアップしすぎだぞ。少し落ち着け。

「あんたたちこそ私たちより全然レベル低いじゃない! そっちこそ帰りなさいよっ!」
「嘘は良くない。キミらのようなおこちゃまパーティよりは余程高いと思いますがねぇ」
「ほんとだもん! 私にはわか……むぐぅ!?」
「馬鹿者、少し大人しくしろ」

 言いかけたミリィの口を塞ぐ。
 ったくスカウトスコープの事は黙ってろと何度も言ってるだろうに。

「ふふ、お兄さんかい? 妹の躾がなってないですねぇ。はーっはっはっは」
「にゅぐぐぐ……」

 高笑いするダリオを睨みつけるミリィをどうどうとなだめる。
 やれやれ、変なのに絡まれてしまったな。
 
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