効率厨魔導師、第二の人生で魔導を極める

謙虚なサークル

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244 レオンハルト家③

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 ――――翌日、ワシらはレオンハルト家があるこの街へと到着した。
 レオニール自治領の片隅にあるトナミの街。
 貧しく小さな、何もない街である。
 存在自体は知っていたが、大した用もなかったので前世込みでも今まで立ち寄った事すらなかった街だ。
 
 道中フローラが話してくれたが、レオンハルト家はこの領主に仕える騎士であり、命あらば領地にはびこる魔物や盗賊を狩り、反乱を抑え、領主に手足のように尽くしていたというらしい。
 魔導師協会が出来るずっと昔はこういった領主と騎士という関係が多かったと聞くが、魔導師協会の興盛により領主も金のかかる割に戦力の低い騎士たちを切り捨て、少人数で高い戦闘力を誇る魔導師協会へと契約を乗り換える事が多くなったのだ。
 そうして領主たちにお役御免にされた騎士たちは食いっぱぐれ、盗賊に墜ちたり一般人に戻ったりしたものだが、残った大多数の騎士たちは互いに同盟を組み、騎士団結連合、通称『騎士団』を結成したのである。

 以前ケインが所属していたのがそれで、彼らの中には魔導師に対する強い恨みからスクリーンポイントのような魔導師殺しを身に付けている者も多い。
 この『騎士団』は100年ほど前に北の大陸で誕生し、もうあちらでは騎士という職業自体一部ほとんどなくなってしまった。
 だがこの東の大陸ではまだ領主と騎士の主従関係もまだ残っているところも多いのである。

「懐かしい……ですね」

 ワシの横を歩いていたクロードが呟く。
 小さな頃に家を放り出され、ずっと旅をしてきたのだ。
 ここへ帰ってくるのは6、7年ぶりといったところだろうか。
 にしても寂れた街だな……まだ日も高いというのに店もなく表を歩く人も少ない。

「ここですわ」

 フローラの声でワシらは立ち止まる。
 大通りを抜け辿り着いたのは、ぐるりと高い壁に囲まれた屋敷。
 小金持ちの地主の家……と言ったところだろうか、中庭の手入れも十分に行き届いているようで、庭園も美しく整えられる。
 門の中に足を踏み入れると、扉を開けて奥から一人の中年男が出てきた。

「おおフローラ、戻ったのか」

 年の頃は四十半ば位だろうか、顔には少し皺が寄っている。
 ひょろ長い身体をしているがピンと立たせた髭と、鋭い目つきから感じる強い威圧感。
 フローラが彼に近づき、嬉しそうな顔でそのゴツゴツとした手を握りしめた。

「あなたっ、クロードが帰ってきたのよ!」
「……うむ、よくぞ連れ帰ってくれたな。フローラ」

 あなた、という事は彼がクロードの父親か。
 クロード父はゆっくりと頷き、クロードの方に近づいていく。
 その冷たい目にじっと見つめられ、クロードはごくりと息を飲む。
 久しぶりの父を前にして緊張しているのか、どうやら少し萎縮しているようだ。

「クロード……おかえり」
「は、はい。ただいま帰りました……父上……」
「そう緊張せずともよい。久しぶりの我が家だ。ゆっくりしていけ」

 クロード父はクロードの肩をぽんと叩き、ワシの方へと向き直る。

「……それで、君は何者かな?」
「ゼフだ。ゼフ=アインシュタイン。クロードの仲間の一人だよ」
「成程、私はアシュトン=レオンハルト、この子の父親だ。クロードが世話に……ごほっ!?」

 向き直ったアシュトンが咳き込む。
 口を押さえ、何度も咳をするアシュトン。

「あなた大丈夫……?」
「あ、あぁ……だいじょ……ごふっ!」

 何度も咳き込んでいるが……おいおい大丈夫かよ。顔が青いぞ。
 喋れぬ夫に代わり、フローラがワシへと話しかけてくる。

「ごめんなさい、夫はここ数年ですっかり身体を弱くして……ケインがその……捕まってしまった時からすっかり塞ぎ込んでしまって……」
「……や、やめろフローラ、みっともない……あ奴の事は忘れろと何度も言っただろうが……!」

 そう言ってフローラを睨みつけるアシュトン。
 ケイン=レオンハルト、クロードの兄でありこの家の跡継ぎだったが、騎士団に入った後クロードに金をたかり続け、それを見つけたワシが成敗してやったのである。
 その後犯罪に手を染め魔導師協会に捕まってしまったケインは監獄島に囚われ、そこから逃げ出してまたワシらに襲って来たのである。
 激戦の末、それを返り討ちにし……ワシはケインを殺した。

 ―――のだが、まぁ流石にそこまでは知らないか。
 恐らくケインとクロードがどういう関係だったかも知らないのだろうな。
 わざわざ教える必要もないか。こじれたら面倒だし、それに真実を知ったら父親の方はショックで本当に死んでしまいかねない。
 クロードと目を合わせると、言わないでくれとばかりに首を振ってくる。
 どうやらワシと同じ考えのようだ。
 ぜいぜいと荒い息を吐く父親の背を落ち着かせるように撫でる。

「それより父上、お身体は大丈夫ですか?」
「うむ……だがやれやれ、やはり寄る年波には勝てんな」
「あなた、ですからそろそろ……」
「あぁ、そうだな……」

 夫婦して何の話だろうか。
 ワシとクロードが顔を見合わせると、やがて意を決したようにアシュトンはクロードの肩を掴んだ。

「……クロード、大事な話がある」
「は、はい」
「レオンハルト家の現当主は私だ。だが唯一の跡継ぎだったケインは犯罪者に身を落としてしまい、ワシも随分身体を弱くしてしまった……ここから先、何があるかわからん。――――だからお前がこの家を継げ」
「な……っ!?」

 隣にいたクロードから驚きの声が漏れるが、ワシの方はさして驚きはしない。
 まぁ普通に考えて予想できたことだ。
 病弱な父親、ワシが殺してしまった跡継ぎ予定のケイン。
 そしてこの家、恐らくこの二人の他に人は住んでいない。
 クロードはケインと二人兄妹だと言っていたし、フローラがクロードを探しに来た本当の理由もクロードを連れ戻し後を継がせる事だったのだろう。

(だがそれにしても一度追い出しておいて今度は家を継げとは、調子が良すぎではないか)

 クロードはワシの仲間なのだぞ。
 苛立ちに自身の額にしわが寄る。
 折角ワシらと再会したばかりなのに……そう思っているのはクロードも同じなのだろう。
 離れたくない、そう言いたそうな目でワシの方をじっと見つめている。
 ――――沈黙、それを破ったのはフローラの一言。

「ね、だからあなた! ゼフさんにお婿さんに来て貰いましょうよ!」
『ごほぉぉぉお!?』

 その言葉に、アシュトンとクロードが盛大に吹き出すのであった。
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