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74. 再会①

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「フィーナ様、アストリア家からお手紙が届きました」


 夕方、ジーク様とテラスでお茶をしていると、侍女さんが封筒を差し出してきた。


「ありがとう」


 お礼を言って、封筒とペーパーナイフを受け取る私。

 早速中身を確認してみると、予想していなかった内容が目に入った。


「襲撃を計画した人、捕まったみたいです」

「そうか、それは良かった」

「それで、私の家族がここに来るそうです」

「は……?」


 突然すぎて驚くよね……。

 私だって今も混乱している。
 まさか1週間もお休みを取っているだなんて全く予想できなかったから。


「来るって、うちにか?」

「はい。もう宿は確保したみたいです」


 部下さんが勝手に手配していたみたいで、今更行かない選択肢は無かったらしい。
 そうは書いてあるけど、私に会えるって喜んでいるのが簡単に想像できた。


「いくらなんでも早すぎないか?」

「前々から部下の方が計画していたみたいです……」

「そういうことか……。
 でも、丁度いいな。これで結婚の話を進められるよ」


 嬉しそうにそう口にするジーク様。
 対する私は、あることが不安になっていた。


「そうですね。お父様が許してくれるといいのですけど……」

「なんとか説得するから安心してくれ」


 そう言ってもらえたから、私はジーク様に任せることに決めて、飲みかけのお茶を口に含んだ。




 翌日のお昼過ぎ、私の部屋に来た侍女さんがこう口にした。


「フィーナ様、ご家族が間もなく到着されます」

「分かったわ、ありがとう」


 そう返して、そのまま玄関に向かう私。
 別に大事なお客様というわけではないから、着替えだったりは必要ない。


 そうして玄関で待っていると、こちらに迫ってくる大きな黒い影が見えた。
 馬車で来ると思っていたけど、違ったみたい。

 それから数分で竜が目の前に降り立って、使用人さんの手を借りてお母様が降りてきた。


「フィーナっ!」

「お母様……!」


 私の方を見るなり駆け寄ってくるお母様。
 次の瞬間には抱きしめられていた。


「無事で良かったわ。何も言わないで出て行っちゃうものだから、私泣いてしまったのよ?」

「あの時は時間がなくて……。ごめんなさい」

「無事でいてくれたならそれで良いのよ。一言くらい、言って欲しかったけどね」

「本当にごめんなさい……」


 予想はしていたけど、お母様には相当心配させてしまったみたいね……。


「無事でいてくれればいいのよ」

「はい……」


 そう言って私から離れたお母様の目は潤んでいた。

 お母様が離れると、今度はルシアが抱きついてきた。


「お姉様……! もう会えないかと思いました……」

「大袈裟よ。生きてる限りは会えるんだから、そんなに泣かないで?」

「嬉し涙です」

「冗談よ。でも、お父様達が困ってるから早く泣き止んでね?」


 それからルシアが泣き止むまで、頭を撫でたりしながらそのままでいた。

 お兄様とお父様が話しかけたそうにしていたけど、ルシアの方が大事だからそのまま放置してしまったわ……。
 後で怒られたりしないよね……?
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