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73. 突然の……

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 襲撃を受けてから2日、朝食後に中庭に来て欲しいと言われてお花を見ながら待っていると、いつもとは違って外行きの格好をしたジーク様がやってきた。

 対する私は、人前には出れる格好ではあるけど……お屋敷の中で過ごすためのシンプルなドレスを着ている。

 ジーク様の雰囲気から、何か大事なことを言われるのはすぐに分かった。
 こんなことなら、ちゃんとしたドレスに着替えておけば良かったわ……。


 私の隣まで来たジーク様は私に寄り添うように腰を下ろし、私の目を真剣な眼差しで見つめていた。
 そして、私の鼓動が早くなってきた時に口を開いた。


「フィーナ、僕と結婚してくれませんか?」


 そう言われて、ますます鼓動がうるさくなってきてしまった……。

 緊張してるわけではないのに、なんでドキドキするのかしら?
 原因はジーク様よね……。そうに違いないわ。


「結婚ですか……?」

「ああ。付き合い始めてから1ヶ月は経つから、そろそろ頃合いかなと思って」


 恋愛結婚の場合、横槍が入るのを防ぐためにもお付き合いを始めてから1ヶ月で婚約するのは普通だから、この言葉を言われるのは覚悟していた。
 でも、実際に言われると戸惑いの方が大きくて、少しの間固まってしまった。

 ちなみに、結婚の準備には時間がかかるから1年くらいは婚約のままになることがほとんどなのよね……。


「駄目かな……?」

「いえ、そんなことは……! 本当に私でよろしいのですか?」

「フィーナでないと駄目だ。フィーナが嫌でないなら、一生側にいさせてくれ」


 そう言われた瞬間、顔が熱くなるのが分かった。

 もう答えは決まってる。
 私がジーク様を好きになっているのは大分前から分かっているからーー。


「いやだなんて、そんなことあり得ませんわ。これからも末永くよろしくお願いしますね?」

「ありがとう。愛してるよ、フィーナ」

「私もです……」


 愛してると言うのが恥ずかしくて、ジーク様の言葉を借りてしまったけど、気持ちは伝わってるわよね……?

 そんな心配をしていたら、いつの間にか抱きしめられていて、ジーク様の顔が近付いてきていた。


「キス、してもいいかな?」


 そう訊いてくるジーク様。
 私は目を閉じて受け入れる意思を示した。

 そうして、頭の後ろに手を添えられた次の瞬間、唇に柔らかいモノが触れた。


 男の人でも唇は柔らかいのね……。
 って、そうじゃなくて!

 初めての経験で少し混乱してしまっているけれど、唇が触れ合う感覚をありありと感じている。
 そのせいなのか、今の私は今までにないくらい頬を赤く染めていると思う。


 それから色々な想像をしてしまって悶々とし始めた頃に唇が離れた。



「柔らかかった……」

「感想それですか⁉︎」

「あと、身を預けてくれるフィーナがすごく可愛かった」


 そんな会話はしているけれど、火照った顔を見られたくなくて目の前を見ている私。

 不意に、私たちを囲む赤い花が風に揺れた。
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