婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多

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59. 帰路

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「怖がってる私が可愛いと言ってましたけど、あれはどういう意味ですの?」


 お屋敷に戻ってから、私は早速ジーク様と向かい合っていた。


「好きな女の子に抱きつかれたら、そう思うのは当然だ。怖がっているかは関係ない」

「でしたら、今私が抱きついたら可愛いと思います?」

「当たり前だろ」


 自信満々にそう口にするジーク様。

 ジーク様が怖がっている様子を見て可愛いと思ってしまう変な趣味の持ち主じゃなくて良かったわ。


「そうでしたのね……。安心しました」

「何を心配してたんだ?」

「ジーク様が変な趣味の持ち主に思えてしまってましたの」

「なんだ、そういうことか。俺も誤解が解けてよかったよ」


 この後は部屋で色々なことをお話ししたり、明日のために帰る準備をしたりして過ごした。




 翌朝、朝食を終えた私達はエントランスに集まっていた。


「みんな忘れ物は無いわね?」

「大丈夫です」

「フィーナちゃんは大丈夫そうよね。キーファス、忘れ物は無いわよね?」

「あっ……」


 何かを思い出したかのように固まったキーファス様。
 次の瞬間、お屋敷の中へと駆けて行った。

 そんな感じで少し慌しかったけど、無事に出発することが出来た。


 帰りも行きと同じでジーク様の隣に座っている。
 途中で抱きしめていいか聞かれたりしたけど、即お断りした。ティアナさん達の目の前でそんな恥ずかしいこと出来ないもの。

 その後のジーク様はとても落ち込んでいたから、野営のテントの中で抱きしめさせてあげたらあっという間に元気になっていた。



 それから少しして、夕食中のことだった。


「フィーナとキスしたい……」


 ジーク様がそんなことを呟くのが聞こえてきた。


「馬鹿なこと言わないでください……。こんなところで出来るわけないじゃないですか」


 私が遠い目をしながらそう口にすると、彼は少し慌てた様子でこう聞いてきた。


「聞こえてた?」

「聞こえてますよ」

「今のはただの願望だから気にしないでくれると助かるよ」


 恥ずかしそうに耳元でささやくジーク様。
 私だってキスくらいはしてみたいと思っている。気持ちが追いついていないから出来ていないだけで。

 だから、将来の期待を込めてこうささやき返してみた。


「分かりましたわ。私の気持ちが追いついた時には、誘ってくださいね?」

「ああ。嫌だったら言ってね?」

「はいっ」


 そう言ってから、自分の言ったことがどれだけ恥ずかしいか理解して、照れ隠しにお肉を頬張る私だった。


「ジーク、フィーナ嬢に何言った?」

「何も言っていませんよ!」


 さっき言ってましたよね?
 ジーク様、嘘は良くないですよ!
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