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58. 竜の国の王宮で
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「グレイヴの社交界はどうだった?」
無事にパーティーが終わりジーク様のエスコートで会場を出ると、そんなことを聞かれた。
「楽しめたけど少し疲れましたわ」
「それは良かった。慣れれば疲れることもなくなるだろうから、安心したよ」
「慣れるものなのですか?」
社交界で疲れなかった経験の無い私はジーク様の言葉を信じることが出来ずに聞き返しした。
「慣れるよ。ローザニアとは違って期本的に堅苦しいことはないから」
「そうなのですね……」
やっぱり納得出来なくて曖昧に答える私だった。
それから少し歩いて馬車の近くまで来た時だった。
突然、ゴゴゴという地響きと共に激しい揺れが私達を襲った。
「きゃあっ……!」
突然のことで転びそうになってしまい、小さく悲鳴を上げてしまった。
咄嗟にジーク様に抱きついたら、しっかりと受け止めてくれた。
私はふらついてしまったのに、ジーク様は余裕そうにしていたから安心して身を預ける私。
そんな時に視界に入ってきたのは、あの立派な塔が崩れ落ちている様子だった。
それを見てしまったからか、言葉では表せない恐怖が私を支配した。
目を瞑ってジーク様に顔を寄せると、上から優しく口調でこう言われた。
「ここに崩れてくることは無いから安心して」
「うん……」
そう言われても、怖いものは怖いのよ……。
それからすぐに揺れは収まったのだけど、あまりにも怖かったから、しばらくジーク様に抱きついたまま動けなかった。
「大丈夫か? もう揺れは収まってるよ」
「大丈夫じゃないです……」
「もうそんなに仲良くなったのね~」
私がジーク様の問いかけに答えると、ソフィア様がそんなことを言ってきた。
「そ、そんなことないです!」
慌ててジーク様から離れる私。
恐怖心よりも恥ずかしさが上回ってしまったみたいで、顔が熱くなるのが分かった。
馬車に乗ってから、私はさっきの揺れについて聞いてみた。
「あれは金竜の一家が寝床を作り直すために壊してたんだ。先月も作り直していたと聞いたからしばらく大丈夫だと思ってたんだ。
先に言っておくべきだった。怖い思いをさせて済まない」
「ジーク様は悪くないです! 聞いていても同じようになってたと思いますし……」
なんとなく恥ずかしくて窓の外に視線を逸らしたら、黒い塔があった場所に幾つにも積み重なった魔法陣が光を放っていて、その周りを金色の竜と銀色の竜が舞っていた。
ちなみに、黒い塔が崩れ落ちた場所には何も残っていなかった。
キーファス様によると、竜達は壊すのを楽しんでいるけど迷惑はかけないように破片は全部消しているらしい。
あの揺れも、王宮の中だけにしか起こらないらしい。
「さっきのフィーナ、可愛かった……」
「何か言いましたか?」
ジーク様が何やら呟いているのが聞こえたから、そう聞いてみる私。
「いや、何も」
ジーク様は何もなかったかのようにそう答えた。
これは後でじっくりと聞き出さないといけないわね。
なんで怖がってる姿が可愛いと思えるのか不思議だわ!
無事にパーティーが終わりジーク様のエスコートで会場を出ると、そんなことを聞かれた。
「楽しめたけど少し疲れましたわ」
「それは良かった。慣れれば疲れることもなくなるだろうから、安心したよ」
「慣れるものなのですか?」
社交界で疲れなかった経験の無い私はジーク様の言葉を信じることが出来ずに聞き返しした。
「慣れるよ。ローザニアとは違って期本的に堅苦しいことはないから」
「そうなのですね……」
やっぱり納得出来なくて曖昧に答える私だった。
それから少し歩いて馬車の近くまで来た時だった。
突然、ゴゴゴという地響きと共に激しい揺れが私達を襲った。
「きゃあっ……!」
突然のことで転びそうになってしまい、小さく悲鳴を上げてしまった。
咄嗟にジーク様に抱きついたら、しっかりと受け止めてくれた。
私はふらついてしまったのに、ジーク様は余裕そうにしていたから安心して身を預ける私。
そんな時に視界に入ってきたのは、あの立派な塔が崩れ落ちている様子だった。
それを見てしまったからか、言葉では表せない恐怖が私を支配した。
目を瞑ってジーク様に顔を寄せると、上から優しく口調でこう言われた。
「ここに崩れてくることは無いから安心して」
「うん……」
そう言われても、怖いものは怖いのよ……。
それからすぐに揺れは収まったのだけど、あまりにも怖かったから、しばらくジーク様に抱きついたまま動けなかった。
「大丈夫か? もう揺れは収まってるよ」
「大丈夫じゃないです……」
「もうそんなに仲良くなったのね~」
私がジーク様の問いかけに答えると、ソフィア様がそんなことを言ってきた。
「そ、そんなことないです!」
慌ててジーク様から離れる私。
恐怖心よりも恥ずかしさが上回ってしまったみたいで、顔が熱くなるのが分かった。
馬車に乗ってから、私はさっきの揺れについて聞いてみた。
「あれは金竜の一家が寝床を作り直すために壊してたんだ。先月も作り直していたと聞いたからしばらく大丈夫だと思ってたんだ。
先に言っておくべきだった。怖い思いをさせて済まない」
「ジーク様は悪くないです! 聞いていても同じようになってたと思いますし……」
なんとなく恥ずかしくて窓の外に視線を逸らしたら、黒い塔があった場所に幾つにも積み重なった魔法陣が光を放っていて、その周りを金色の竜と銀色の竜が舞っていた。
ちなみに、黒い塔が崩れ落ちた場所には何も残っていなかった。
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あの揺れも、王宮の中だけにしか起こらないらしい。
「さっきのフィーナ、可愛かった……」
「何か言いましたか?」
ジーク様が何やら呟いているのが聞こえたから、そう聞いてみる私。
「いや、何も」
ジーク様は何もなかったかのようにそう答えた。
これは後でじっくりと聞き出さないといけないわね。
なんで怖がってる姿が可愛いと思えるのか不思議だわ!
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