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60. フィーナ父side 取り調べ(1)

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 フィーナが隣国へ渡ってからおよそ一月、いつもよりも増えてしまった書類に目を通している時に愛する娘から手紙が届いた。

 封筒のデザインから、良い内容だと分かって少しだけ安堵した。
 ……のだが、内容の後半は全く安心できるものでは無かった。


 グレイヴの社交界で早速友人を作れたのは喜ぶことだ。
 あまり心配はしていなかったが、上手くやれているようで改めて安心した。

 しかし、王都の屋敷に帰る途中で不定期にやってくる守護竜の巣の建て替えに巻き込まれてしまい、驚きのあまりアトランタ家の長男ジークに抱きついたというのだ。
 おまけに、行きの道中と社交界前夜までは彼に頼まれて同じの部屋で寝たらしい。

 今夜ーー手紙を書いているのが社交界を終えた日の夜だったのだろうーーは怖かったから彼と寝るらしい。


 間違いが起きたらどうする気だ……⁉︎


 ドンッ!


 頭に血が上って、つい机を叩いてしまった。


「きゃっ……!」

「すまない、取り乱した」


 お茶を入れようとしていた侍女を脅かしてしまったことを知り、慌てて謝った。


「いえ、大丈夫です。少し驚いただけですので」



 あんなことがあった後に幸せそうにしているのは親として喜ぶべきことなのだろうが、流石に度が過ぎている。
 フィーナのことを思えば、とりあえずは静観するべきだろう。

 もちろんキーファスは後で殴る。息子の暴走を止めなかったからな。


 今はとても殴りに行ける状況ではないから静観することを決めた私は、再び書類に目を通し始めた。

 ちなみに、手紙はアイリスにも見せた。




 その翌日、王太子に薬物を盛った罪人を取り調べる事が決まった。


「離しなさい! あなた、汗臭いのよ!」


 そう叫んで暴れるその罪人は、取り調べ室へ連行されている最中だ。


「大人しく歩け!」


 部下が一喝すると、ビクッとして大人しくなったが、嫌そうな表情は全く……いや、余計に酷くなった。
 ちなみに「カッコイイ」と令嬢達からも一定の人気のある騎士団だが、男ばかりで集まって訓練していれば汗臭くなるのだ。

 私達上官は浄化魔法を習得しているので、訓練後に臭いことはまず無いが。
 下っ端達はそうはいかないのだ。

 だから、令嬢達は距離を置いて騎士達を眺める。
 下っ端でも鍛えているので体付きはいいし、美形が多いのも人気の理由だとは思うが……。


 ……というどうでもいい話は置いておいて、罪人が歩くのが遅かったせいで通常の倍以上の時間をかけて取り調べ室に到着した。


「お前達、まだシャワー浴びてないだろ?」

「はい。訓練を終えた直後の命令でしたので」

「それは悪かった。取り調べは長くなりそうだから、しばらく休んでいいぞ。
 あと、シャワーは浴びろよ? 臭いから」

「閣下まで⁉︎ 急ぎシャワーを浴びて参ります!」


 部下達がシャワーを浴びに行ってからしばらくの間、取り調べ室前の廊下は汗臭いままだった。
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