60 / 155
60. フィーナ父side 取り調べ(1)
しおりを挟む
フィーナが隣国へ渡ってからおよそ一月、いつもよりも増えてしまった書類に目を通している時に愛する娘から手紙が届いた。
封筒のデザインから、良い内容だと分かって少しだけ安堵した。
……のだが、内容の後半は全く安心できるものでは無かった。
グレイヴの社交界で早速友人を作れたのは喜ぶことだ。
あまり心配はしていなかったが、上手くやれているようで改めて安心した。
しかし、王都の屋敷に帰る途中で不定期にやってくる守護竜の巣の建て替えに巻き込まれてしまい、驚きのあまりアトランタ家の長男ジークに抱きついたというのだ。
おまけに、行きの道中と社交界前夜までは彼に頼まれて同じの部屋で寝たらしい。
今夜ーー手紙を書いているのが社交界を終えた日の夜だったのだろうーーは怖かったから彼と寝るらしい。
間違いが起きたらどうする気だ……⁉︎
ドンッ!
頭に血が上って、つい机を叩いてしまった。
「きゃっ……!」
「すまない、取り乱した」
お茶を入れようとしていた侍女を脅かしてしまったことを知り、慌てて謝った。
「いえ、大丈夫です。少し驚いただけですので」
あんなことがあった後に幸せそうにしているのは親として喜ぶべきことなのだろうが、流石に度が過ぎている。
フィーナのことを思えば、とりあえずは静観するべきだろう。
もちろんキーファスは後で殴る。息子の暴走を止めなかったからな。
今はとても殴りに行ける状況ではないから静観することを決めた私は、再び書類に目を通し始めた。
ちなみに、手紙はアイリスにも見せた。
その翌日、王太子に薬物を盛った罪人を取り調べる事が決まった。
「離しなさい! あなた、汗臭いのよ!」
そう叫んで暴れるその罪人は、取り調べ室へ連行されている最中だ。
「大人しく歩け!」
部下が一喝すると、ビクッとして大人しくなったが、嫌そうな表情は全く……いや、余計に酷くなった。
ちなみに「カッコイイ」と令嬢達からも一定の人気のある騎士団だが、男ばかりで集まって訓練していれば汗臭くなるのだ。
私達上官は浄化魔法を習得しているので、訓練後に臭いことはまず無いが。
下っ端達はそうはいかないのだ。
だから、令嬢達は距離を置いて騎士達を眺める。
下っ端でも鍛えているので体付きはいいし、美形が多いのも人気の理由だとは思うが……。
……というどうでもいい話は置いておいて、罪人が歩くのが遅かったせいで通常の倍以上の時間をかけて取り調べ室に到着した。
「お前達、まだシャワー浴びてないだろ?」
「はい。訓練を終えた直後の命令でしたので」
「それは悪かった。取り調べは長くなりそうだから、しばらく休んでいいぞ。
あと、シャワーは浴びろよ? 臭いから」
「閣下まで⁉︎ 急ぎシャワーを浴びて参ります!」
部下達がシャワーを浴びに行ってからしばらくの間、取り調べ室前の廊下は汗臭いままだった。
封筒のデザインから、良い内容だと分かって少しだけ安堵した。
……のだが、内容の後半は全く安心できるものでは無かった。
グレイヴの社交界で早速友人を作れたのは喜ぶことだ。
あまり心配はしていなかったが、上手くやれているようで改めて安心した。
しかし、王都の屋敷に帰る途中で不定期にやってくる守護竜の巣の建て替えに巻き込まれてしまい、驚きのあまりアトランタ家の長男ジークに抱きついたというのだ。
おまけに、行きの道中と社交界前夜までは彼に頼まれて同じの部屋で寝たらしい。
今夜ーー手紙を書いているのが社交界を終えた日の夜だったのだろうーーは怖かったから彼と寝るらしい。
間違いが起きたらどうする気だ……⁉︎
ドンッ!
頭に血が上って、つい机を叩いてしまった。
「きゃっ……!」
「すまない、取り乱した」
お茶を入れようとしていた侍女を脅かしてしまったことを知り、慌てて謝った。
「いえ、大丈夫です。少し驚いただけですので」
あんなことがあった後に幸せそうにしているのは親として喜ぶべきことなのだろうが、流石に度が過ぎている。
フィーナのことを思えば、とりあえずは静観するべきだろう。
もちろんキーファスは後で殴る。息子の暴走を止めなかったからな。
今はとても殴りに行ける状況ではないから静観することを決めた私は、再び書類に目を通し始めた。
ちなみに、手紙はアイリスにも見せた。
その翌日、王太子に薬物を盛った罪人を取り調べる事が決まった。
「離しなさい! あなた、汗臭いのよ!」
そう叫んで暴れるその罪人は、取り調べ室へ連行されている最中だ。
「大人しく歩け!」
部下が一喝すると、ビクッとして大人しくなったが、嫌そうな表情は全く……いや、余計に酷くなった。
ちなみに「カッコイイ」と令嬢達からも一定の人気のある騎士団だが、男ばかりで集まって訓練していれば汗臭くなるのだ。
私達上官は浄化魔法を習得しているので、訓練後に臭いことはまず無いが。
下っ端達はそうはいかないのだ。
だから、令嬢達は距離を置いて騎士達を眺める。
下っ端でも鍛えているので体付きはいいし、美形が多いのも人気の理由だとは思うが……。
……というどうでもいい話は置いておいて、罪人が歩くのが遅かったせいで通常の倍以上の時間をかけて取り調べ室に到着した。
「お前達、まだシャワー浴びてないだろ?」
「はい。訓練を終えた直後の命令でしたので」
「それは悪かった。取り調べは長くなりそうだから、しばらく休んでいいぞ。
あと、シャワーは浴びろよ? 臭いから」
「閣下まで⁉︎ 急ぎシャワーを浴びて参ります!」
部下達がシャワーを浴びに行ってからしばらくの間、取り調べ室前の廊下は汗臭いままだった。
75
お気に入りに追加
5,350
あなたにおすすめの小説

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました
ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」
オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。
「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」
そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。
「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」
このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。
オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。
愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん!
王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。
冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる