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恋人未満
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診察時間が始まると、午前中は近所のお年寄りが多い。
半分は、お年寄りの憩いの場として使われている。
「腰が痛くてさぁ。年には勝てないよねぇ。わしだってこう見えて若い時は、ばあさんを泣かせるほど遊んでたけどさぁ」
過去の武勇伝を聞いてあげるのも、蓮見の立派な仕事だった。
「はいはい。もう奥さんを泣かせることもないから。湿布出しておくからね」
笑いながら蓮見が言うと、患者のじいさんは蓮見をじっと見る。
「先生、いい事あった?なんか肌の艶がいいよ。いいねぇ、若いモンは」
あははと笑いながらじいさんは診察室を出た。
「……意外と鋭い」
蓮見がポツリと漏らすと、酒井さんは蓮見を見る。
「先生にも、とうとう出会いがありました?大学病院の方ですか?」
嬉しそうに酒井さんは言う。
「ちょっと待ってくださいよ!出会いなんてありませんから!」
蓮見は真っ赤になって否定するが、酒井さんはニヤニヤする。
「はい!次の患者さん、入れてください」
誤魔化すように蓮見はそう言うと、午前中の患者さんを次々と診る。
そこそこ忙しくて、余計な事を考えなくてホッとした。
「じゃあ、昼ご飯食べてきますね」
昼休憩になると、蓮見はいそいそと家に戻った。
キッチンに入ると、真冬の姿がないので不安になる。
1人になってまた余計な事を思いつめている気がした。
真冬の部屋のドアをノックする。
「はい」
か細い声に、蓮見はため息をつく。
「入るよ」
そう言って蓮見はドアを開けた。
真冬はベッドに座って枕を抱きしめている。
「どうした?」
蓮見は優しく声をかける。
真冬は黙ったままだった。
「思い詰めてる顔してる。俺が余計なこと言ったから、イヤになった?」
真冬は無言で首を振る。
「僕、分からないの。先生は元々男が好きだったの?」
なるほどと蓮見は思った。
「隣、座っていい?」
あくまで優しく蓮見は言った。
真冬はコクンと頷く。
「答えはNoだよ。今まで女の人としか付き合ってない。男に、真冬にときめいたのが初めてだよ」
蓮見の言葉に真冬は真っ赤な顔をして、抱きしめていた枕で顔を隠す。
「恥ずかしい」
真冬はそう言って少し震えている。
「俺が怖い?」
微妙な距離で蓮見は座っている。その距離が、今の自分達の気持ちを表しているようだった。
「うん。怖い」
真冬の答えに、蓮見はため息をつく。
「だよね。いきなり男から告白されて、はい、付き合いましょうとは、ならないよね」
それは蓮見にも分かっている。
真冬が悩むのは当然だ。
「真冬が嫌なら、俺はもうキスもしないし、好きって気持ちも封印するよ。諦める」
蓮見の言葉に真冬はドキンとする。
「嫌とか思ってない。先生とキス、気持ちいいし、ギュってされるのも嫌じゃない。でも、それ以上?って言うか、その先が、考えられないって言うか」
当然の戸惑いに、蓮見は真冬の頭をポンポンとする。
「そうだよね。まだ俺を恋愛対象にも思ってないのに、先のことなんて想像できないよね。真冬が望むまで好きにすれば良い。この家に居てくれるなら、俺は別に今以上の関係にならなくてもいいよ」
蓮見の微笑みに、真冬は泣きそうな笑顔で返す。
「ごめんなさい。あ、お昼ご飯!直ぐに作るから」
真冬がすっと立ち上がる。蓮見も立ち上がると、真冬を背後から抱きしめる。
「これが最後。もう、真冬が望むまで抱きしめないから」
大きな体で真冬を包む。真冬はドキドキしながら抱きしめられたまま、蓮見の熱と優しさを感じていた。
真冬の香りに蓮見は正直我慢出来なかった。
下半身が熱くなってきて、慌てて真冬から離れた。
「ちょっと、調べ物あるから部屋に行くね」
すっと蓮見は離れると自分の部屋に駆け込んだ。
「もお、マジ拷問」
ドアに寄りかかりながらズルズルとしゃがむ。
流石に今自分で処理もできず、蓮見はただその場に座り込んで雑念を払った。
半分は、お年寄りの憩いの場として使われている。
「腰が痛くてさぁ。年には勝てないよねぇ。わしだってこう見えて若い時は、ばあさんを泣かせるほど遊んでたけどさぁ」
過去の武勇伝を聞いてあげるのも、蓮見の立派な仕事だった。
「はいはい。もう奥さんを泣かせることもないから。湿布出しておくからね」
笑いながら蓮見が言うと、患者のじいさんは蓮見をじっと見る。
「先生、いい事あった?なんか肌の艶がいいよ。いいねぇ、若いモンは」
あははと笑いながらじいさんは診察室を出た。
「……意外と鋭い」
蓮見がポツリと漏らすと、酒井さんは蓮見を見る。
「先生にも、とうとう出会いがありました?大学病院の方ですか?」
嬉しそうに酒井さんは言う。
「ちょっと待ってくださいよ!出会いなんてありませんから!」
蓮見は真っ赤になって否定するが、酒井さんはニヤニヤする。
「はい!次の患者さん、入れてください」
誤魔化すように蓮見はそう言うと、午前中の患者さんを次々と診る。
そこそこ忙しくて、余計な事を考えなくてホッとした。
「じゃあ、昼ご飯食べてきますね」
昼休憩になると、蓮見はいそいそと家に戻った。
キッチンに入ると、真冬の姿がないので不安になる。
1人になってまた余計な事を思いつめている気がした。
真冬の部屋のドアをノックする。
「はい」
か細い声に、蓮見はため息をつく。
「入るよ」
そう言って蓮見はドアを開けた。
真冬はベッドに座って枕を抱きしめている。
「どうした?」
蓮見は優しく声をかける。
真冬は黙ったままだった。
「思い詰めてる顔してる。俺が余計なこと言ったから、イヤになった?」
真冬は無言で首を振る。
「僕、分からないの。先生は元々男が好きだったの?」
なるほどと蓮見は思った。
「隣、座っていい?」
あくまで優しく蓮見は言った。
真冬はコクンと頷く。
「答えはNoだよ。今まで女の人としか付き合ってない。男に、真冬にときめいたのが初めてだよ」
蓮見の言葉に真冬は真っ赤な顔をして、抱きしめていた枕で顔を隠す。
「恥ずかしい」
真冬はそう言って少し震えている。
「俺が怖い?」
微妙な距離で蓮見は座っている。その距離が、今の自分達の気持ちを表しているようだった。
「うん。怖い」
真冬の答えに、蓮見はため息をつく。
「だよね。いきなり男から告白されて、はい、付き合いましょうとは、ならないよね」
それは蓮見にも分かっている。
真冬が悩むのは当然だ。
「真冬が嫌なら、俺はもうキスもしないし、好きって気持ちも封印するよ。諦める」
蓮見の言葉に真冬はドキンとする。
「嫌とか思ってない。先生とキス、気持ちいいし、ギュってされるのも嫌じゃない。でも、それ以上?って言うか、その先が、考えられないって言うか」
当然の戸惑いに、蓮見は真冬の頭をポンポンとする。
「そうだよね。まだ俺を恋愛対象にも思ってないのに、先のことなんて想像できないよね。真冬が望むまで好きにすれば良い。この家に居てくれるなら、俺は別に今以上の関係にならなくてもいいよ」
蓮見の微笑みに、真冬は泣きそうな笑顔で返す。
「ごめんなさい。あ、お昼ご飯!直ぐに作るから」
真冬がすっと立ち上がる。蓮見も立ち上がると、真冬を背後から抱きしめる。
「これが最後。もう、真冬が望むまで抱きしめないから」
大きな体で真冬を包む。真冬はドキドキしながら抱きしめられたまま、蓮見の熱と優しさを感じていた。
真冬の香りに蓮見は正直我慢出来なかった。
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「ちょっと、調べ物あるから部屋に行くね」
すっと蓮見は離れると自分の部屋に駆け込んだ。
「もお、マジ拷問」
ドアに寄りかかりながらズルズルとしゃがむ。
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