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恋人未満

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ダイニングテーブルには、チャーハンと具沢山の中華風のスープが置いてあった。
「あ、先生。今、呼びに行こうと思ったんだ」
ニッコリ微笑む真冬が可愛くてデレそうになる。
「良い匂い。腹減ったー」
蓮見は席に着くと、大盛りによそってくれているチャーハンを食べ始めた。
蓮見の食べる姿を、嬉しそうに真冬は見つめる。
「僕、明日からバイトだから、明日からお弁当作るね。冷蔵庫に入れておくからレンジでチンしてね」
そうか、明日は水曜日かと蓮見は思った。
「大丈夫だよ。ちゃんとできるから」
蓮見が笑うと真冬もホッとした。
スマホが鳴って蓮見は出る。星川だった。
「どうした?」
『先日はご馳走様でした。ちょっと患者さんのことで相談が。うちで胃を切除する予定の患者さんなんですが、先輩に相談したくて』
「ああ、なんでも聞くけど、俺より及川に相談しろよ」
『及川先生とは、ちょっと考え方も違うんで。それにうちの大学病院の外科で1番腕が良かったのは先輩だし』
「過去の話でしょ。まあ、俺で良ければ相談のるよ」
真冬は蓮見が誰と話をしているか分からなかったが、仕事の話だと思うとホッとした。
「ああ、いつでも来いよ。またゆっくり飲みながら話そうぜ」
相手が星川と分かり、真冬は何となくモヤモヤした。
蓮見と星川が仲が良さそうなのが面白くない。 
蓮見が電話を切ると、真冬はじっと蓮見を睨む。
怖い顔をしてるので、蓮見は訳がわからない。
「ん?どーした?」
「別に!」
つっけんどんに真冬はキッチンに行く。
何を怒っているのか蓮見は気になる。
「どうしたの?怒ってる。俺、また何か気に入らないことした?」
「星川先生、また来るの?」
星川の名前が出て蓮見は訳がわからない。
「ああ、近いうちに相談に来ると思うけど?仕事の相談だけどね」
蓮見が言うと、真冬はまだ不機嫌なまま。
「先生と星川さん。めっちゃ仲良いよね」
「大学の後輩だし、ずっと同じ医局だしな。付き合いは長いかなぁ」
蓮見がそう言うと真冬は蓮見を睨む。
「分かってんの!僕がおかしいって!でもムカムカして、イライラするの!」
真冬の言葉に蓮見はポカンとする。
「……うん。たしかにおかしいね。それってヤキモチ?」
蓮見が言うと真冬は真っ赤になって蓮見を突き飛ばす。
「先生のバカ!」
図星を突かれて真冬は部屋に入ってしまった。
「おいおい。どうしろって言うの」
嫉妬されて嬉しい反面、真冬の感情に振り回されて、蓮見はどうして良いか分からない。
蓮見は真冬の部屋の前に行くとドアをノックする。
「真冬?混乱させてごめんよ。でも俺も、真冬がどうすれば落ち着くのか正直分からん。原因なのは俺だけどさ。つーか、意外と感情的だったのね。今まで知らなかった一面だ」
蓮見はそう言うとクスリと笑った。
大人しくてただ可愛いだけだと思っていた真冬が、意外と嫉妬深くて自己主張も激しい。

こりゃ、結構ツンデレだったのね。
意外と手に負えなかったり。

そう思いながらも蓮見は楽しんでいた。
真冬を知れば知るほど、その無邪気な可愛さに溺れそうになる。

俺ってメンタル、ドMだったのか?

自分の新たな性癖を発見したようで楽しくなる。
「夕方までにはご機嫌直ると嬉しいな。少し早いけど、病院に戻るね」
蓮見はそう言うと真冬の部屋のドアから離れる。
真冬はベッドの上で、イライラしてゴロゴロする。
蓮見の優しさに胸が苦しい。

嫌いじゃないんだってば!
もう、何で分からないかな!
キスも嫌じゃないの!
星川さんに嫉妬するぐらい先生が好きなの!

真冬はそう心の中で思うとハッとした。

そうだよ。
僕だって、先生が好きなの。
どうして男の先生が好きになったのか、自分でも分からなくて怖いんだ。

蓮見に対する想いと、恋人になる怖さに真冬の心の中は葛藤の嵐だった。
素直になれなくて、でも蓮見に嫌われたくなくて、失いたくなくて。
駄々っ子みたいに蓮見を振り回す自分に自己嫌悪を感じながら、それでも蓮見を困らして自分の感情をぶつけてしまう。

この家にずっといすぎて、視野が狭くなってるのかな。
明日からバイトも始まるし、先生と離れる時間が増えれば、自分の本当の気持ちが分かるかも。

真冬はそう思うとキッチンに戻り食器を洗い始めた。
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