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グラウンド・ゼロ
第18話
しおりを挟む数メートル先もわからないような暗さが、ゴーグル越しにぶつかってくる。
濃く、深い灰色に染まった視界は、しばらく続いた。
何層にも重なった靄の中を通過していく体。
「雲」は、かつての地上の空と繋がっていた。
神戸市の全景が望める上空。
あと数分もすれば、真っ青な瀬戸内海の海が、明石海峡を中心として姿を現す。
中央区のビル群と、赤く聳え立ったポートタワー。
ナギサは初めてだった。
彼女は生まれて初めて、“最初の世界”へのダイブを試みていた。
彼女はグラウンド・ゼロの住人で、世界が崩壊した“後”の人間だ。
だから、地上に降り立つのは今日が初めてだった。
「あと、2000m」
強烈な向かい風の中、ふうっと息を吐く。
彼女の体は生身の人間とは違い、特殊な構造を持っている。
それはグラウンド・ゼロの全ての住人に言えることだが、彼女の「能力」は、スカイ・フォックスの中でも高い評価を得ていた。
グラウンド・ゼロの住人は、全員が『コード(Code)』と呼ばれる能力を有している。
生まれ持った才能のようなものでもあり、個人が持つ特有の「スキル」と呼ぶべき異能が、それぞれの肉体の中に備わっていた。
彼女は新人ながら、今回のような重要な任務を司令部より一任されていた。
彼女の能力の高さだけが評価の対象にはなっていないが、それでも、彼女の才能が認められているということは確かだった。
スカイ・フォックスとしての適性、及びそれに付随する、空挺部隊兵の“戦力“として。
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