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245パーティ

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ヘンデリック侯爵にリッチーが柄の悪い冒険者から聞き出した内容を伝えると

「わざわざすまない。こちらでも注意しておこう。
 しかし、その薬剤師は拓殿の事だな。何か手を打った方が良いだろう。」

ヘンデリック侯爵は、別の人物を薬剤師として表に立てようと考えたが

「それは待ってください。相手の目的が分かるまで、現状のままの方が良いかと思います。
 それに、誰も私がポーションを作っているとは思わないでしょうから。」

拓が止めた。
確かにヘンデリック侯爵自身、事実を知らなければ拓が高品質ポーションを作れるとは考えもしないだろう。

「分かった。しかし、拓殿、ガラ殿は十分に注意して行動して欲しい。」

ヘンデリック侯爵に言われ、拓は「分かりました」と頷いた。



朝早く、拓とガラがギルド会館に行くと、

「おはようございます。
 少し話を伺いたいのですが、帰ってきたら時間を取ってもらえませんか。」

後から来たアークのメンバーに声を掛ける。

「なら一緒に依頼を受けないか。それなら十分に話が出来るだろ。」

ジークが提案してくれたので、拓とガラは久しぶりにアークとパーティを組むことに。

「拓とガラが一緒なら、何にするかな。」
「ジーク、これだよ、これ。これしかないよ。」

何時もは依頼の選択にあまり口を出さないトムが選んだ依頼は魔獣の討伐。
村の周囲に現れる魔獣討伐で、討伐した数によって支払いがされる。
距離を考えると村で宿泊する事になるが、危険性は低いので拓達も引き受けることに同意した。

「この魔獣は一部しか食べれないけど、それがとても美味しいんだ。
 拓君、今日もタレは持っているよね。」 
「タレ?」

拓はトムに言い寄られて何を言いたいのか分からなかったが

「拓ちゃん、トムが言いたいのは拓ちゃんが作った焼肉のタレの事よ。
 トムったら、あのタレの大ファンなのよ。」

ロビンが説明してくれた。
拓にとって普通の食事に使う調味料の1つだが、冒険者にとっては特別だった。

「有りますよ。皆さんから話を伺うのに、お礼として渡すつもりだったので。
 種類を増やしたので味見しますか?」

本当はそんなつもりで持っている訳ではないが、調子の良い拓だった。
そして、その言葉に飛びついて来たのは、トムでなくジェニファー。

「やったわ。これは頑張って魔獣討伐をするしかないわね。
 さぁ、体を動かしてお腹を減らすわよ。」
「・・・」

拓は呆気にとられたが、アークとパーティを組み魔獣討伐依頼を受けることになった。



「で、俺達に聞きたかった事ってなんだ。」

目的地へ移動しながら、ジークが拓に聞いてくる。

「この間、話をしていた柄の悪い冒険者達の事を詳しく話を伺っておこうかと思って。」
「何だ、奴等に絡まれたりしたのか。」

ジークの顔から笑顔が消えて、真面目に聞いてくる。

「いや、そういう事では無いけど、少し気になっただけです。」

拓は自分達が何者かに付けられた事を隠して答えると、ジークは胡散臭そうな顔で拓を見たがガラを見て

「まぁ、ガラが普通にしているのなら大丈夫か。」

そう言って、安心していた。
拓としてはジークがガラを見て判断したことに納得できずにいたが、拓の気持ちを察したガラは苦笑いするしかなかった。
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