異世界薬剤師 ～緑の髪の子～

244情報

夜遅くなってからリッチーが家に戻ってきた。

「大丈夫でしたか。」

拓が心配して問いかけると

「遅くなってしまったが、何も問題はない。
　実は、拓殿とガラ殿の後を付ける人物が居ないかと張っていたのだが誰も現れず
　柄の悪い冒険者達の仲間を調べていて時間が掛かってしまっただけだ。
　お陰で、面白い情報を入手することが出来た。
　話の前に、食事を取らせてもらっても良いだろうか。」

特に問題は無いようだ。
拓はゲートを開くと、テーブルに食事を並べる。

「やはり、拓殿の料理は美味しいな。
　どんな状態になろうと、３食抜かさず食べないと勿体ない。」

リッチーは美味しそうに食べ始めた。
そして食事が終わると、拓、ガラ、ドクスに冒険者達から入手した情報を話し始めた。

柄の悪い冒険者達をまとめている人物はフードを被っていて顔は分からないらしい。
ただ、声からして女性であることは間違いないみたいだ。
今年の初めに接触してきて、彼等に武器やポーションを渡す見返りとして
ヘンデリック侯爵に関わる薬剤師と、サーシャの生い立ちについて調べさせているらしい。
しかし、何の為にそんな事を調べているのかまでは、冒険者達は知らなかった。

「一体どうやって、そんな情報を聞き出したんです。」

拓が聞くが

「闇魔法で催眠状態にして知っている事を話させただけだ。あの程度の冒険者なら簡単だ。」

何でも無い事の様にリッチーは話す。
ちなみに、強い意志を持っていたり、拓の様に光の魔力を循環させておけば、この手の闇魔法からも身を守ることは出来るらしい。

「その探している薬剤師と言うのは拓の事だろうな。
　この領地で売られているポーションを確認したが、拓のポーション以外に目ぼしいのは無かったしな。」

考えられるのは、辺境地で売られている高品質のポーションの作成者探しという所だろうか。
王都でも、ここまでのポーションを作れる薬剤師は少ない。

「もしかして監禁して薬を作らせるつもりとか。」

ガラの考えを伝えるが

「成程、確かに高品質のポーションを作れる薬剤師を手に入れれば力になるのは分かるが
　冒険者が侯爵家と対峙するとは考え難い。
　それに、サーシャさんの生い立ちを調べている意味も分からない。」

ドクスの言葉に、「それもそうか」とガラは頷く。

「我も、もう少し調べてみる事にしよう。
　ヘンデリック侯爵には話したほうが良いと思うが、
　状況が分かるまで、サーシャさんに話すのは止めておいた方が良いだろう。」

リッチーの提案に、拓達は頷いていた。

「ガラ、俺達は冒険者として行動をしようか。」

拓はそう言うが

「俺は反対だ。後を付ける様な奴が居るなら大人しくしていた方が良い。
　それに、拓さんが薬剤師ではないかと疑われているかもしれない。」

ガラは拓の安全第一を考えていた。

「それなら冒険者として行動していた方が疑いも晴れるよ。
　それに、動かないと情報が入ってこない。」

拓は引き下がる気はないみたいだ。
拓がそう決めたのならと、ガラは従うことにした。