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3、もう、ムリなんだって

流されて

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 しばらく誰にも触れられていなかった。

 二度と誰にも触らせたりしないつもりだった。

 だから――。

 流しと壁にさえぎられ、逃げ場のない台所で、瞬は伸幸に欲望をさぐり当てられていた。

「隠さなくていい。安心して」

「ヤダ……離して……頼むから」

「どうして」

 伸幸は瞬の身体の上で手を止めた。

「君が本当に嫌なら止める。でも……」

 瞬は半ば下ろされた衣服を引き上げることもせず、されるがままになっていた。

「欲しいんでしょ。腰、動いてる」

 動きの止まった伸幸の手。伸幸の言ったとおりだった。

 瞬の頬を涙がつたった。またあんな思いをするのは、もう。

「なら、そう言って。俺、無理じいはしないから」

 身体を愛されると、心もそちらへ流れてしまう。繰り返したくない。誰も好きになんかなりたくない。

「……欲しい」

 瞬は上体をひねって、もう一度今度は自分から深いキスをねだった。伸幸は先ほどよりも熱く返してくれた。瞬は自分の身体が伸幸の指を求めてうごめくのを感じていた。

 もう、止められない。

 唇が離れて、瞬は自分の意識を手ばなした。

「伸幸さん。続き、して」
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