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第六十話【【イメージPlay】】中

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(ほんと、下手だな)

 それは決して文句ではなかったが、口に出してしまえば気にするだろう内容だった。元々、力也に演技などできるわけがないとわかっていた。
 ご主人様であるDomに全てをゆだねるSubが演技など続けられるわけがなく、こうなるのはわかりきっていた。どうしても隠すことのできない、期待に満ちた瞳も、嬉しくてたまらないという笑みも可愛くて仕方がない。
 抵抗しているはずなのに、一々疑問形で聞き返されることも、笑みが浮かぶほど微笑ましい。

「もう抵抗しねぇのか?」

 胸に舌を這わされ、耐えるだけになってしまった力也の乳首へと歯を立てれば、ビクッと動きその口から艶の帯びた声が漏れた。

「や、やめなさい」
「え? なに? もっと?」

 力のない制止に、わざと聞き返し乳首に吸い付き、寂しそうなもう片方の乳首を指で摘まむ。ピアスの周りをクリクリと指先でいじれば、もっとと強請る様に硬く立ち上がる。

「はぁっ……」
「あれ、お巡りさんもしかして感じてる?」
「ち、違う」

 必死に抵抗する演技を続けようとするが口調は、既に快感に負け震えていた。冬真の足に触れる性器は硬く、せめてと顔だけ反らされるも熱を帯びているのが分かる。

「お巡りさん、こんなとこにピアスしちゃっていやらしい、本当はこうされるの期待してたんだろ?」
「アッ……」
「淫乱」

 その言葉と共に強めにガリっと噛まれ、同時に強く引っ張られ、一際強い嬌声が上がった。ビクビクっと体を震わせ、荒い息を吐く様子に乳首に対する責めだけで達してしまった事がわかる。
 おそらく目隠しの下にある瞳はとろんと蕩けるような瞳になっているだろう。

(目隠ししてたら見えねぇよな)

 どんな瞳をしているか、何度も見ているから完全に頭に浮かぶというのに、それでも見たくなってしまう。自分があたえた快感に翻弄される力也の瞳は、それだけでぞくっとするほどの色気を持つ。

「冬真?」

 乳首だけで勝手に達してしまった事を気にしたのか、不安そうな声で名を呼ばれ苦笑する。

「うん?」
「イッたらだめだった?」
「そんなことねぇよ。可愛い」

 怒ったわけじゃないと安心させるように、目隠しにキスをすれば力也は息を吐いた。

「でも、口もまともに使えないなら口も必要ないよな?」
「え?」
「名前、呼んだだろ?」
「で、でも冬真だってさっき……」
「ほらまた呼んだ。ダメだな、全然できてない」

 そう言えば、力也が息を飲んだ。失敗してしまったと思ったのだろう、悲しそうに目隠しで見えないながらも冬真の方をみた。

「ご、ごめんなさい」

 塞がれている状態では冬真の顔をみることも叶わず、その瞳は、目隠しの下で不安げに揺れているのだろう。

「目もダメだし、セリフもダメ」
「ごめんなさい」

 先ほどまで言わずにいた言葉を言うのは、むろんわざとだ。本当はセリフなどどうでもいいし、これはただのお遊びだから完璧さなど求めていない。
 それでも、わざわざ口に出したのはDom特有のいじめっ子性質がでてしまったのだろう。怒らせてしまったかと不安に駆られ、縋る様子は可哀そうだと思うが、同時に可愛いと思ってしまう。もっと追い詰め、沢山虐めたいし、愛したいし、可愛がりたい。
 本当に嫌な奴だと自分でもわかっている。

「演技できないならもうやめる?」
「嫌! 頑張る! 今度こそ頑張るから」

 力也は本気で縋っているのだろうが、そこまで頑張らなくてもいいと思うが口には出さずにそっと頭へ手を伸ばしよしよしと撫でた。

「じゃあ、これからすること頑張って我慢できたらゆるしてやるよ」
「頑張る」

 そう言えば、気合を入れなおしたのかしっかりとした声が返ってきた。目隠しの下で反抗的な瞳を浮かべたのだろう、冬真の方を睨むようにみる。
 唸り声でもあげそうに、怒っている演技をする力也に、不快感よりも愛しさが増す。

(さて、いつまで頑張れるかな)

 我慢できればなどと言ったが、最後まで我慢できることを望んではいない。我慢できなくなった力也を虐めて甘やかしたいだけだ。とはいえ、我慢強い力也だから我慢しろと言えばどこまでも我慢しようとするだろう。
 かといってこの状況使いたくないだろう、セーフワードを無理に使わせる気もない。
 理想は、頑張ったけど無理だったから助けて欲しいと懇願してほしい。
 そんな冬真の考えなどつゆ知らず、何をされるのかと気をはっている力也のズボンのボタンを外し、下へと落とした。

「ベチャベチャで気持ち悪いだろ、脱いじゃえよ」
「や、やめろ」

 先ほど達した所為で、肌に張り付きけして小ぶりではない形をしっかり浮き上がらせている性器を、パンツの上から掴みその硬さを確かめるように撫でた。
 それだけでビクリと震える体を力也は必死に抑える。こんな物足りないほどの触り方でも冬真にやられていると思うだけで確実に快感を拾ってしまう。

(これは違う人、全然知らない柄の悪いどっかの男)

 言い聞かせようとしても、温度も声も感覚もすべてが親愛するご主人様の物だ。
 せっかくのコスプレPlayなのに、うまく演技ができず、がっかりさせてしまったのだから名誉挽回しなくてはとは思うが、自分の意思とは裏腹に体からは力が抜けていく。
 これではだめだ、頑張ると言ったのにこれではもういいと、呆れて止められてしまうかもしれない。
 途中で止めになるのも嫌だが、つまんないと言われてしまうのが一番いやだ。冬真には楽しんでほしい、喜んでほしい。

「は、離せ」

 他のDom相手に演技したときはもう少しうまくできた気がするのに、散々甘やかされた所為か、すぐに甘えたくなる。
 しかし、先ほどのどこか呆れたような言葉を思い出し、同時に不安に駆られる。冬真は呆れていないか、冷たい目をされていたらどうしよう、もう嫌になったと言われてしまったら……。
 目隠しで見えない分だけ不安は大きくなる。

「離すわけないだろ」

 ついには、パンツを下ろされ先走りと先ほど達した所為で濡れる、性器を直接握り込まれ擦られる。

「や……やめ……あっ……」

 漏れた声は自分でも全然ダメだと思えるほど、懇願に満ちていた。目隠しの下で涙があふれ出す、うまくできない自分が本当にダメのように思えるが、それでも甘やかされた心は冬真を自然に求めてしまう。
 次第に何を発していいのかわからなくなり、息が詰まる。

「落ち着け」

 快感に溺れた時とは違い、不安のあまり息が乱れ始めた時、いつも通りの冬真の声が聞こえた。
 膝から崩れそうになる体を抱きしめるように支え、背中をポンポンと軽く叩かれる。

(怒ってない)

 いつも通りの優しい感覚に、冬真の機嫌を損ねていないことがわかり、途端に気持ちが軽くなる。

「嫌がる演技なんかできないよな、力也俺の事大好きだもんな?」
「ごめんなさい」
「セリフもうまく言えないなら、口塞ぐか?」
「え?」
「そうすれば言いたくない事言わなくていいだろ、どうする?」

 手、視覚に続いて、言語の自由も奪われてしまうらしい。どんどん奪われ、自分の自由にできる場所はなくなってしまうと思うが、不安よりも不思議な幸福感を感じる。
 奪うことは完全に支配されることに通じる。その感覚が嬉しく、幸せへと変わる。

「お願いします。役立たずの俺の口を塞いでください」

 そう言えば、冬真の顔が近づいてくるのがわかり、褒めるようにキスをされた。触れるだけのキスはすぐに離れ、代わりになにかが口に当てられる。

「口開けろ」

 大人しく開ければ、口に丸いボールのようなものが押し込まれる。舌で触れば
それには穴がいくつも空いているのがわかる。呼吸と唾液を出すための穴が開いたそれは、言わずと知れたボールギャングだ。
 しっかりと口にはめ込み、後ろで止めれば両手が塞がれている力也では外すことは不可能になる。

「きつくないか? 痛いとこは?」

 口への拘束はサイズが合っていないと、唇が切れたりする。時には長時間していて、顎が外れてしまうことも、呼吸困難に陥ってしまう危険性もある。
 そんなヘマは絶対しないだろうが、それでも万に一つという可能性もある。特に金属部分で怪我をさせてしまう可能性は非常に高い、皮膚を挟んではいないか確かめ、確認すれば力也は首を振った。

「力也、足も拘束するから開いてろ」

 そう言えば力也はずり落とされた自分のズボンとパンツの上から退き、足を広げたまま立った。
 先ほどまでの抵抗よりもずっとスムーズな仕草に、苦笑し足への拘束具を手にするとしゃがみ込む。足用に用意していたのは棒の両側に足を拘束し閉じることができなくさせるタイプの物だ。
 これで力也が自由に動くことは不可能となった。逃げることも抵抗することも、自分の身を守ることも不可能になった力也の手に冬真はそっと小さなものを握らせた。

「力也、それ落として」

 何を持たされたのかわからず不思議そうにしていた力也は、そう言われ力を抜き手の中にある物を落した。チリン! ちいさな鈴の音が聞こえコロコロと転がる音がした。

「Good Boy」【よくできました】

 大好きなコマンドと共に頬にキスを送られ、大げさだろうがそれだけで泣きたいほどに嬉しくなる。今日はPlayを初めてからコマンドをもらえていなかった、その反動かもしれない。

「もうお前なにもできないだろ? だからこれがセーフワード」

 もう一度鈴を手に握らせ、そう説明した冬真にわかったと言うように頷く。セーフワードを出せない状況でも、その事に気づかず進めてしまうDomが多い中、冬真はしっかりと代用を用意していた。
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