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44話 最推しカプと再会
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帝都視察の次はステラモリス公国の視察に行く事になった。物語本編ヒーロー・サクとヒロイン・クラスに会えるならやぶさかではない。なにせ正式に婚約したとか聞いたので俄然やる気になった。
本編ヒーロー・ヒロインに年齢は関係ない。実に素晴らしい。
「エール、大丈夫?」
「ええ、問題ありません」
馬で行ってもよかったけど、安全面を考慮して一部徒歩にした。フィクタは元々山岳地帯に住んでいたからこうした地形を歩くのは得意だ。けどエール含めた視察の面子には酷だったらしい。軒並み息があがっている。エールがまだマシってとこかしら。
「休む? 後ろがちょっと遠くなったわ」
「ああ、随分離れてしまってますね」
ぎりぎりまで馬にして、荷物は馬車で別ルートを通っている。歩く部分は極力減らしたけどだめだった。けどエールが見積もった時間通りにステラモリス公国に着くあたり、彼は優秀だと思う。
「よしよし、森を抜けたわ」
「後ろは早々に休ませてもらう形ですかね」
「そうね。エールが存外いけるクチでよかったわ」
「当然です」
遅れをとるわけにはいきませんからと笑う。どうしても私に着いていける形をとりたいらしい。
「フィクタさん」
「この声は……!」
間違うわけがない。本編ヒロイン・クラスだ。金が混じる白髪に孔雀青の瞳、ステラモリス公主の血筋にしか出ない外見特徴。はあああああ眼福だわあああ!
「クラスんんんんマジ癒し」
「フィクタ、公の場ですよ」
「んん……ステラモリス公爵令嬢、お久しぶりです。此度は視察団の受け入れありがとうございます」
「いいえ、ゆっくりしてください」
「クラスん……好き……」
はあもうたまらんなあ。このへんの空気が推しの癒されるものに変わった。マイナスイオン出てるんじゃない?
「おい」
「サクたあああんんんん!」
「相変わらずキモいな」
「アチェンディーテ公爵令息、大変申し訳ありません」
「構わねえよ。てかお前もこんなんでいいなんて好きものだよな」
クラスの両親に御挨拶して、今回の視察受け入れを担当しているサクとクラスとミーティングになった。仕事とはいえ二人と一緒とか癒しすぎて仕事どころじゃない。
「婚約したんでしょ?」
「あ、はい、その」
赤くなったクラス可愛い。
「指輪いいねえ。裏石でしょ」
「え? よく御存知ですね」
「二人のことですから存じ上げてます」
本編でプレゼントしてたのを覚えてるとも。
「キリッとした顔して言っても気持ち悪いだけですよ」
「エール黙って。今ぐらい幸せ感じさせて」
「巡回者の影響強すぎだろ……」
「重ね重ね申し訳ありません、アチェンディーテ公爵令息」
「お前も大変だな」
「いつもの事です」
サクがエールに優しい。私もサクの優しさ欲しい。
「なんでこんなの好きなわけ?」
「どうしてでしょうねえ」
いいなあ、同情でもサクの情を浴びたい。
「あ、そうだ。イグニス様います? 渡さないといけない書類あって」
「父様なら温泉の現場確認してる」
「二時間後には城に戻ってくると思います」
「そうかあ」
父様呼び神。たまらん。本編では一度も見られなかった貴重な言葉だ。
「明日俺たちを伴って温泉視察だろ。念のため確認してんだよ」
「相変わらず慎重ですね」
イグニスが慎重? 結構無謀なことしてるイメージしかないわ。学院で私を炙り出そうと乗り込んでくるとか慎重とは思えない。
「まあスケジュール的に無理ないからいいだろ」
「じゃ、従前通りで」
「おう」
そしたら残りはティータイムになるよね! じっくり網膜にサクとクラスを焼き付けようっと。
「巡回者の影響あるとはいえ、このルート歩むと全然違うな」
「悪役はログアウトしてますよ」
安心してください、クラスを痛めつけませんと大事なところを主張しておいた。
「まあお前が山を下って輸出入で繋がらないと、この先クラスに会えねえしな」
「ん? なんの話です?」
「先の話だ……生まれ変わりとかそういうんだよ」
クラスは普通な顔して、エールは営業用の微笑みだった。用語にここまで理解がある面子ってすごい。
「生まれ変わってもサクたんとクラスんは結ばれるんですか? 美味しい展開ですね」
「おう。その為には東側の国交が開く必要があったからな」
「というと?」
「お前が出て国交が開く。その後一度閉まるが、そこから出ていく東の国の王女がクラスの母親になるんだよ。一度でも国交が開かないと、この未来がない」
「生まれ変わっても巡り会う二人……熱い。それ小説にして販売してもらえます?」
「無茶言うな」
そこにサクとしての記憶、クラスとしての記憶があるといいなあ、なんて。私がうまいこと事情を知った上で同じ時同じ場所に生まれ変われないだろうか。
「それは無理だな」
「え、言葉に出てました?」
「顔に出てるぞ」
あらやだ恥ずかしい。けどサクなら仕方ないよね。聖人だしね。全部みえてるしね!
「二人して長生きしてくださいね」
「急になんなんだよ」
「サクたんは特に無理せず……いや今はクラスんと聖女パワーシェアしてるから大丈夫なのか。それならひとまずさっさとデビュタントしてください。デビュタントと同時に結婚してくれてもいいんで、結婚式は参列させてください」
「あ、えと、そんな」
照れるクラス可愛い。たまらん。
「歳の差なんて気にせず、ぐいぐいいちゃついて幸せになってね」
「ぐいぐいいちゃつく?」
どんな感じかって? 本編の通りよ。
「私はクラスんの味方なので、なんでも言ってください」
「俺が全部やるからお前引っ込んでろ」
「やだー! サクたん焼きもち? 大丈夫ですよ、クラスんの一番はサクたんだよ? 越えられない壁あるから安心して? てかそんな嫉妬深いサクたんも好きだなあいいぞもっとやれ」
まあ女性だけにしか頼れないって時に、そこに私がおさまってたら嬉しいけど。サクのことだから先回りして全部やっちゃうんだろうな。
「ふん……お前そんなんだと後が大変だぞ?」
「何がです?」
「お前の婚約者殿を少しは慮れっつってんだよ」
「ん?」
エールを見たらにっこり微笑まれた。はて、なにか男同士で通じ合うことでもあったのだろうか。相変わらずサクたん面倒見いい。
「まあいいわ。客間案内する」
ミーティングもそこそこ城内を案内してもらうことになった。
「ありがと、サクたんクラスん」
「あ、お二人の部屋は隣同士にしましたので!」
「うん?」
クラスがやたら嬉しそうに言うけど、それはちょっとな? でもステラモリス公国の広さを考えると、この城で男女を遠くにするのは割り当て的に難しいかな。でもなにか間違ってない? 本編ではクラスとサクは隣同士の部屋で、サクがクラスの部屋に入り浸りだったけど。
「では食事の時間までゆっくりされてください」
「視察は明日からな」
「はーい!」
去っていく二人が手を繋いでるだけで癒される。このルートでも幸せになりそう。サクが精霊の世界と繋がってもクラスが半分背負ってくれるから安心ね。
「……にしてもだ」
「ええ」
「本当に隣同士ね」
「ですね」
すごく嬉しそうなエールが私を見下ろして微笑んでいた。
「ということで、少し私を慮ってくれますか?」
「はい?」
侍女をさがらせたと思ったら手をとられそのままエールの部屋に連れ込まれた。婚約者でもそれはだめだと何回言えばいいのかしら?
「エール」
「フラル、やっぱり納得できません」
「なにが?」
「アチェンディーテ公爵令息とステラモリス公爵令嬢御二人と私とでは態度が全然違います」
「そりゃ最推しカプだもの」
「それでもです」
簡単に私を囲んで抱き締めた。腕が私の腰と背を撫でた瞬間ぶわりと粟立つ。
「エール!」
本編ヒーロー・ヒロインに年齢は関係ない。実に素晴らしい。
「エール、大丈夫?」
「ええ、問題ありません」
馬で行ってもよかったけど、安全面を考慮して一部徒歩にした。フィクタは元々山岳地帯に住んでいたからこうした地形を歩くのは得意だ。けどエール含めた視察の面子には酷だったらしい。軒並み息があがっている。エールがまだマシってとこかしら。
「休む? 後ろがちょっと遠くなったわ」
「ああ、随分離れてしまってますね」
ぎりぎりまで馬にして、荷物は馬車で別ルートを通っている。歩く部分は極力減らしたけどだめだった。けどエールが見積もった時間通りにステラモリス公国に着くあたり、彼は優秀だと思う。
「よしよし、森を抜けたわ」
「後ろは早々に休ませてもらう形ですかね」
「そうね。エールが存外いけるクチでよかったわ」
「当然です」
遅れをとるわけにはいきませんからと笑う。どうしても私に着いていける形をとりたいらしい。
「フィクタさん」
「この声は……!」
間違うわけがない。本編ヒロイン・クラスだ。金が混じる白髪に孔雀青の瞳、ステラモリス公主の血筋にしか出ない外見特徴。はあああああ眼福だわあああ!
「クラスんんんんマジ癒し」
「フィクタ、公の場ですよ」
「んん……ステラモリス公爵令嬢、お久しぶりです。此度は視察団の受け入れありがとうございます」
「いいえ、ゆっくりしてください」
「クラスん……好き……」
はあもうたまらんなあ。このへんの空気が推しの癒されるものに変わった。マイナスイオン出てるんじゃない?
「おい」
「サクたあああんんんん!」
「相変わらずキモいな」
「アチェンディーテ公爵令息、大変申し訳ありません」
「構わねえよ。てかお前もこんなんでいいなんて好きものだよな」
クラスの両親に御挨拶して、今回の視察受け入れを担当しているサクとクラスとミーティングになった。仕事とはいえ二人と一緒とか癒しすぎて仕事どころじゃない。
「婚約したんでしょ?」
「あ、はい、その」
赤くなったクラス可愛い。
「指輪いいねえ。裏石でしょ」
「え? よく御存知ですね」
「二人のことですから存じ上げてます」
本編でプレゼントしてたのを覚えてるとも。
「キリッとした顔して言っても気持ち悪いだけですよ」
「エール黙って。今ぐらい幸せ感じさせて」
「巡回者の影響強すぎだろ……」
「重ね重ね申し訳ありません、アチェンディーテ公爵令息」
「お前も大変だな」
「いつもの事です」
サクがエールに優しい。私もサクの優しさ欲しい。
「なんでこんなの好きなわけ?」
「どうしてでしょうねえ」
いいなあ、同情でもサクの情を浴びたい。
「あ、そうだ。イグニス様います? 渡さないといけない書類あって」
「父様なら温泉の現場確認してる」
「二時間後には城に戻ってくると思います」
「そうかあ」
父様呼び神。たまらん。本編では一度も見られなかった貴重な言葉だ。
「明日俺たちを伴って温泉視察だろ。念のため確認してんだよ」
「相変わらず慎重ですね」
イグニスが慎重? 結構無謀なことしてるイメージしかないわ。学院で私を炙り出そうと乗り込んでくるとか慎重とは思えない。
「まあスケジュール的に無理ないからいいだろ」
「じゃ、従前通りで」
「おう」
そしたら残りはティータイムになるよね! じっくり網膜にサクとクラスを焼き付けようっと。
「巡回者の影響あるとはいえ、このルート歩むと全然違うな」
「悪役はログアウトしてますよ」
安心してください、クラスを痛めつけませんと大事なところを主張しておいた。
「まあお前が山を下って輸出入で繋がらないと、この先クラスに会えねえしな」
「ん? なんの話です?」
「先の話だ……生まれ変わりとかそういうんだよ」
クラスは普通な顔して、エールは営業用の微笑みだった。用語にここまで理解がある面子ってすごい。
「生まれ変わってもサクたんとクラスんは結ばれるんですか? 美味しい展開ですね」
「おう。その為には東側の国交が開く必要があったからな」
「というと?」
「お前が出て国交が開く。その後一度閉まるが、そこから出ていく東の国の王女がクラスの母親になるんだよ。一度でも国交が開かないと、この未来がない」
「生まれ変わっても巡り会う二人……熱い。それ小説にして販売してもらえます?」
「無茶言うな」
そこにサクとしての記憶、クラスとしての記憶があるといいなあ、なんて。私がうまいこと事情を知った上で同じ時同じ場所に生まれ変われないだろうか。
「それは無理だな」
「え、言葉に出てました?」
「顔に出てるぞ」
あらやだ恥ずかしい。けどサクなら仕方ないよね。聖人だしね。全部みえてるしね!
「二人して長生きしてくださいね」
「急になんなんだよ」
「サクたんは特に無理せず……いや今はクラスんと聖女パワーシェアしてるから大丈夫なのか。それならひとまずさっさとデビュタントしてください。デビュタントと同時に結婚してくれてもいいんで、結婚式は参列させてください」
「あ、えと、そんな」
照れるクラス可愛い。たまらん。
「歳の差なんて気にせず、ぐいぐいいちゃついて幸せになってね」
「ぐいぐいいちゃつく?」
どんな感じかって? 本編の通りよ。
「私はクラスんの味方なので、なんでも言ってください」
「俺が全部やるからお前引っ込んでろ」
「やだー! サクたん焼きもち? 大丈夫ですよ、クラスんの一番はサクたんだよ? 越えられない壁あるから安心して? てかそんな嫉妬深いサクたんも好きだなあいいぞもっとやれ」
まあ女性だけにしか頼れないって時に、そこに私がおさまってたら嬉しいけど。サクのことだから先回りして全部やっちゃうんだろうな。
「ふん……お前そんなんだと後が大変だぞ?」
「何がです?」
「お前の婚約者殿を少しは慮れっつってんだよ」
「ん?」
エールを見たらにっこり微笑まれた。はて、なにか男同士で通じ合うことでもあったのだろうか。相変わらずサクたん面倒見いい。
「まあいいわ。客間案内する」
ミーティングもそこそこ城内を案内してもらうことになった。
「ありがと、サクたんクラスん」
「あ、お二人の部屋は隣同士にしましたので!」
「うん?」
クラスがやたら嬉しそうに言うけど、それはちょっとな? でもステラモリス公国の広さを考えると、この城で男女を遠くにするのは割り当て的に難しいかな。でもなにか間違ってない? 本編ではクラスとサクは隣同士の部屋で、サクがクラスの部屋に入り浸りだったけど。
「では食事の時間までゆっくりされてください」
「視察は明日からな」
「はーい!」
去っていく二人が手を繋いでるだけで癒される。このルートでも幸せになりそう。サクが精霊の世界と繋がってもクラスが半分背負ってくれるから安心ね。
「……にしてもだ」
「ええ」
「本当に隣同士ね」
「ですね」
すごく嬉しそうなエールが私を見下ろして微笑んでいた。
「ということで、少し私を慮ってくれますか?」
「はい?」
侍女をさがらせたと思ったら手をとられそのままエールの部屋に連れ込まれた。婚約者でもそれはだめだと何回言えばいいのかしら?
「エール」
「フラル、やっぱり納得できません」
「なにが?」
「アチェンディーテ公爵令息とステラモリス公爵令嬢御二人と私とでは態度が全然違います」
「そりゃ最推しカプだもの」
「それでもです」
簡単に私を囲んで抱き締めた。腕が私の腰と背を撫でた瞬間ぶわりと粟立つ。
「エール!」
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