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9話 双子、騎士学院に入学する
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二年後、騎士学院と貴族院は身分関係なく入れるようになった。私はまだ下働きとして貴族院にいる。あ、名称は貴族院にできないからテンプスモーベリ貴族院からテンプスモーベリ総合学院に変わったんだっけ。
帰属はイルミナルクス王国が仮で持っている。けれど一時的なものと発表していたから国家連合を見越しているのが分かった。察しのいい国はかなり注視しているみたい。
「フィクタ」
「フィクタ」
「フリーゴス、カロル、変わりない? 体調は? ご飯食べてる?」
「大丈夫、元気」
「ご飯もたくさん貰ってる」
頻度は落ちたものの、城の裏門で双子と定期的に会っている。見張りの人には親族だからと言えば許してもらえた。どうやら私と双子は貧しい家の為に幼いのに出稼ぎにくる健気な労働者として見られているらしい。たとえ同情で警戒されてないとはいえ、念のため話が聞こえない距離で双子と話す。
「これ、お願いね」
「うん」
「任せて」
手紙を送る手伝いはまだ双子がいないと厳しい。なんなく受け取ってくれるようになったけど、差出人住所がテンプスモーベリ総合学院だとバれる危険性があるので双子に頼んで毎回違う地域から出してもらっている。
「フィクタ」
「なに?」
「僕たちグレース騎士学院に入学したよ」
「はい?」
急な報告に変な声でた。手紙渡して終わるだけかと思ったら、なにがどうしてそうなったの。
「フィクタが入学の身分撤廃してくれたから」
「いやまあ手紙通り彼らやってくれたけど、え、年齢は?」
「僕たち誕生日わからない」
「だから十歳だって言った」
「おいいいい!!」
年齢確認してから入学しないとだめでしょうが!
本当の年齢が私と同じなら二歳偽ってるってこと? いけなくもなさそうだけどさあ!
もしかしたら十歳なのかもしれないけど! 調べてからにしてよ!
「……もう。焦らなくてもその内入れるのに?」
「早く強くなりたい」
「そうなの」
「強くなってフィクタを守れるようになりたい」
「……え?」
待って。
このまま二人、私の騎士になる気?
小説では、フィクタの護衛騎士は双子だった。フィクタの言うことを忠実にきいて暴力もいとわない。
この二人にも破滅しかなかった。それを繰り返すの? 双子が悪役として責任をとる必要はどこにもない。
「だめ」
「フィクタ?」
「だめ。騎士として食べていくのは構わないけど、私を守るなんて言わないで」
「なんで?」
「……あんまり私に深く関わると二人が危険なの」
死ぬかもしれないから、これ以上はだめと念を押した。手紙のやりとりも考えないといけない。ひとまず今は手紙だけ、その内解放してあげるからと伝えた。
双子は納得いかなそうに顔を顰めている。
「フィクタは僕らがいると迷惑?」
そういう言い方は卑怯だ。二人のおかげでここまで来れたのだから。今のところ誰一人犠牲になってない。悪役なしに和平方向へ進んでいて素晴らしい状態だ。けど物語の修正力で、ここから本編通りになってしまい、誰かが死ぬなんてシーンを目の当たりにしたくない。
小説で悪役だった人物なんてフィクタとその周りにしかいないけど、そのほとんどがフィクタに巻き込まれて悪役になったようなものだ。今回は巻き込まれない平凡な人生を歩んだ方がいい。
なのに双子は切実に訴えてくる。
「フィクタは僕たちを救ってくれたから恩返ししたい」
「フィクタの力になりたいし、危険なら守りたい」
「……」
「フィクタ?」
「……あ、う」
「どうしたの?」
「う、うあ…‥あ…あ、あああああ!!」
「!」
「?!」
悶え死ぬわ! 可愛いこと言ってくれる! 叫びたい! デレの過剰摂取! 当面このシーンだけ思い出して霞だけ食べるで生きていける!
「可愛いかよおおお、なんなんだよおお!!」
「?」
「?」
くっそ、双子に懐かれるとかそのへんの地面ごろごろ転がりたいレベルで可愛い。情緒きつい。
震える私を見て双子は首を傾げている。怒ってもいないし悲しんでもいないから不思議なのだろう。こちとら可愛さに感動してるんだよ。本当優しい子に育って……お母さん嬉しい。
「……んん、この話はまた今度にしよ……二人とも、入学おめでとう。無理なくね」
「うん」
「またね」
けれど危険だ。小説本編で双子はフィクタに忠実だった。それは集落が崩壊した時、双子を助けたのがフィクタだったからだ。そこにつけいってフィクタは洗脳や教唆やらして自分好みに作り上げたけど、今回は簡単に人に手を掛ける殺人鬼にするわけにはいかない。
「フィクタ嬢」
「!」
またしても変な声が出た。私を驚かすことに長けている人間は一人だけだ。
「マーロン侯爵令息」
「こんにちは」
マーロン侯爵弟だ。今日は会議の日じゃないのに、なんで来たの。
帰属はイルミナルクス王国が仮で持っている。けれど一時的なものと発表していたから国家連合を見越しているのが分かった。察しのいい国はかなり注視しているみたい。
「フィクタ」
「フィクタ」
「フリーゴス、カロル、変わりない? 体調は? ご飯食べてる?」
「大丈夫、元気」
「ご飯もたくさん貰ってる」
頻度は落ちたものの、城の裏門で双子と定期的に会っている。見張りの人には親族だからと言えば許してもらえた。どうやら私と双子は貧しい家の為に幼いのに出稼ぎにくる健気な労働者として見られているらしい。たとえ同情で警戒されてないとはいえ、念のため話が聞こえない距離で双子と話す。
「これ、お願いね」
「うん」
「任せて」
手紙を送る手伝いはまだ双子がいないと厳しい。なんなく受け取ってくれるようになったけど、差出人住所がテンプスモーベリ総合学院だとバれる危険性があるので双子に頼んで毎回違う地域から出してもらっている。
「フィクタ」
「なに?」
「僕たちグレース騎士学院に入学したよ」
「はい?」
急な報告に変な声でた。手紙渡して終わるだけかと思ったら、なにがどうしてそうなったの。
「フィクタが入学の身分撤廃してくれたから」
「いやまあ手紙通り彼らやってくれたけど、え、年齢は?」
「僕たち誕生日わからない」
「だから十歳だって言った」
「おいいいい!!」
年齢確認してから入学しないとだめでしょうが!
本当の年齢が私と同じなら二歳偽ってるってこと? いけなくもなさそうだけどさあ!
もしかしたら十歳なのかもしれないけど! 調べてからにしてよ!
「……もう。焦らなくてもその内入れるのに?」
「早く強くなりたい」
「そうなの」
「強くなってフィクタを守れるようになりたい」
「……え?」
待って。
このまま二人、私の騎士になる気?
小説では、フィクタの護衛騎士は双子だった。フィクタの言うことを忠実にきいて暴力もいとわない。
この二人にも破滅しかなかった。それを繰り返すの? 双子が悪役として責任をとる必要はどこにもない。
「だめ」
「フィクタ?」
「だめ。騎士として食べていくのは構わないけど、私を守るなんて言わないで」
「なんで?」
「……あんまり私に深く関わると二人が危険なの」
死ぬかもしれないから、これ以上はだめと念を押した。手紙のやりとりも考えないといけない。ひとまず今は手紙だけ、その内解放してあげるからと伝えた。
双子は納得いかなそうに顔を顰めている。
「フィクタは僕らがいると迷惑?」
そういう言い方は卑怯だ。二人のおかげでここまで来れたのだから。今のところ誰一人犠牲になってない。悪役なしに和平方向へ進んでいて素晴らしい状態だ。けど物語の修正力で、ここから本編通りになってしまい、誰かが死ぬなんてシーンを目の当たりにしたくない。
小説で悪役だった人物なんてフィクタとその周りにしかいないけど、そのほとんどがフィクタに巻き込まれて悪役になったようなものだ。今回は巻き込まれない平凡な人生を歩んだ方がいい。
なのに双子は切実に訴えてくる。
「フィクタは僕たちを救ってくれたから恩返ししたい」
「フィクタの力になりたいし、危険なら守りたい」
「……」
「フィクタ?」
「……あ、う」
「どうしたの?」
「う、うあ…‥あ…あ、あああああ!!」
「!」
「?!」
悶え死ぬわ! 可愛いこと言ってくれる! 叫びたい! デレの過剰摂取! 当面このシーンだけ思い出して霞だけ食べるで生きていける!
「可愛いかよおおお、なんなんだよおお!!」
「?」
「?」
くっそ、双子に懐かれるとかそのへんの地面ごろごろ転がりたいレベルで可愛い。情緒きつい。
震える私を見て双子は首を傾げている。怒ってもいないし悲しんでもいないから不思議なのだろう。こちとら可愛さに感動してるんだよ。本当優しい子に育って……お母さん嬉しい。
「……んん、この話はまた今度にしよ……二人とも、入学おめでとう。無理なくね」
「うん」
「またね」
けれど危険だ。小説本編で双子はフィクタに忠実だった。それは集落が崩壊した時、双子を助けたのがフィクタだったからだ。そこにつけいってフィクタは洗脳や教唆やらして自分好みに作り上げたけど、今回は簡単に人に手を掛ける殺人鬼にするわけにはいかない。
「フィクタ嬢」
「!」
またしても変な声が出た。私を驚かすことに長けている人間は一人だけだ。
「マーロン侯爵令息」
「こんにちは」
マーロン侯爵弟だ。今日は会議の日じゃないのに、なんで来たの。
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