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2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。

135話 やっぱり見えてる

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「みえる、というのは」

 僅かにふるえた以外はいつも通りだ。ただそのふるえが私にとっては応えだった。

「言い方を変えようか。私の未来見えてる?」
「…………何故」
「うん? 思えばオリアーナ、私の心の声よくわかってたし」

 私が分かりやすいというのは事実だったからあまり気にしていなかったけど、あの魔法使いの祖のおばあちゃんは私の考えてることをまま見えていた上で会話してきた。あの覗かれてる感がオリアーナの時たま混じる言葉の返しに似ていると思った。

「あっちの世界の言葉をやたら覚えてたあたりも違和感はあったんだよ」

 もう説明したか覚えてなかったけど、やたら使いこなしていたし、ディエゴにも吹き込むレベルだったし。
 ディエゴは私の日頃の行動と言動から何をしようとしてるか予測してたけど、オリアーナはそんな感じがしなかった。体感を理由にするのはどうなのかとは思ったけど。

「別に怒るとか咎めるとかじゃなくて、純粋な好奇心です」
「…………」
「なので、実際どうなのかなーって」

 じっと私の瞳を捉えて揺るがない。勿論私も逸らさないという形で応える。沈黙の後、オリアーナは静かに瞼を閉じた。睫毛長い美女すごい。

「……はい」
「そっか」
「はっきりした未来が見えるわけではありません。ただ、」

 脅威みたいなものが見えるのだとオリアーナは言った。それを目の前にしている私がいる。立ち向かう気でいるけど、あまりに強大で黒くいい予感はしないとか。

「チアキが死ぬ瞬間を見るわけではないのです。ただ良くないものがチアキに迫っているのだけは分かりました」
「でもオリアーナは死ぬかもって思ったんでしょ?」
「はい。限りなく死に近いと感じました。けど、チアキがディエゴといる時だけはそれが見えなかった」
「ディエゴ?」

 頷くオリアーナ。どうやら自分の意思関係なく見えてしまう私の良くない未来は、ディエゴといる時は見えなかったらしい。

「最初は勘違いか、力が斑なだけかと思っていたのですが、そうではないのです」

 ディエゴといる時も何か見えたようだけど、それは語られなかった。けど脅威はそこにないのだろう。

「だからディエゴと私がどうにかなればいいと思っていたの」
「はい。ディエゴと共にいれば死は回避できると。勿論、彼を応援すると決めたのは、彼のチアキに対する想いを聴いた上ででしたが」
「応援は別にいいよ」
「ですが、チアキは嬉しそうでした」

 楽しんで癒しを摂取しているという点では嬉しいかもしれないけどね。

「嬉しい、ね」
「花を貰った時からずっとそうだと」
「花?」

 オルネッラのお見舞いの花? それ以外だと、社交界明けの薔薇?
 どこの花の話をしているのか。花は元々好きだと言ったはずだったんだけどな。

「それ見えたの?」 
「チアキの考えることが見えるのは、いつもではありません。時たま断片的にしか分かりませんし、言葉としてというよりは気持ちがなんとなく伝わる程度のものです」
「じゃ、今は私の考えてること見えてないの?」
「はい」

 よかった、散々脳内シャッタータイムでうはうはしてたからな。さすがに全部知られるのは気が引ける。表面化してるのだけで呆れられるというのに、脳内知られて今以上に引かれても困る。

「もう慣れましたので、引きはしないかと」
「見えてる!」
「ええ」

 見えなくていいとこだよ!
 にしても完全ではないとはいえ、間違いなく魔法使いの祖の力だ。私達世代なら力も発現しないって感じで言ってたのにな、おばあちゃん。

「いや、待てよ?」
「いかがしました」
「オリアーナ、いつから見えるようになったの?」
「オルネッラの身体に戻ってから、すぐに」

 私の場合、オルネッラ時代の逆行による因果で力を得た。それが転移して戻るかつオリアーナの身体に入るという事がスイッチとして成り立った。
 と判断するなら、オリアーナの場合は、自殺未遂した件の魔法で現代日本に転移したのが因果、スイッチはオルネッラの身体に入る事で、同じ条件をクリアして祖の力に目覚める事は可能であるのかな。
 ちょっと魔法使いの祖のおばあちゃんこれ見えててもおかしくなかったんじゃないの。私が転移して戻ってきた事は脳内読んでて知ってたはずだろうに。肝心な事を語らず終わったあたり、わざと話してなかったに違いない。
 まあでも結果オーライだ。ファンタジーの王道因果の話はいつ話題にしても熱いことに変わりはないし。

「これも新たな因果ってね」
「楽しそうですね」
「いや、熱い展開だとは思うけど、オリアーナが心配だよ」
「問題ありません」
「けど、自分で制御できないのに、周囲の思いが見えるとかきつくない?」
「私が見えるのはチアキだけです」
「え?」
「チアキだけしか見えません」

 少なからずとは言ったけど、そんなに限定的とは。私だけ?
 あ、でも可能性はあるか。オリアーナがわんこのテゾーロの中にいたときは、私とオリアーナとでしかテレパシー出来なかった。その作用が残っているなら、今のオリアーナの限定的な力はありえる。

「なので問題はありません。勿論制御出来るよう試してはいますが」
「お、おう」

 是非制御をマスターしてほしい。脳内の自重出来ないし。チートになっていくオリアーナは見てて滾るけど、それが彼女の足枷になってもいけない。だったら制御ができたほうがいいだろう。

「身体戻した方がいいのかな?」
「戻したところで力がなくなる保障はありません」
「まあね」
「それに私達は気軽に使いましたが、本来魂を扱う魔法は特別な許可がない限り使えません」

 当然リスクもあるしね。元に戻ろうと魂入れ替え魔法を使ってうまくいかないと、今度こそ私達は魂ごと消える可能性がある。やっぱりこのまま過ごして行くのが妥当か。

「ま、その気になったらでいいか」
「はい」

 クールキャラ頑張って下さいと軽く言われて詰まらせたのは言うまでもない。オリアーナ、私で遊ぶようになってきた。可愛いから許すけど!
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