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2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
123話 こんにちは、フラグ。さようなら、フラグ
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会場がざわつく。
ホワイトボードに目を戻せば第一グループで動きがあったようだ。
三人ほど前に出た。
後続の前に出れなかった一人が転倒し、すぐにメディコに回収されたりと、なかなかのドラマが展開されてて面白い。
やっぱりスポーツは世界もとい次元を超えるな。なにより汗をかいて息をきらして、それでも真剣な顔して走るとか最高に熱い。本番に至るまでのバックグラウンドを勝手に想像して楽しもう。
「ディエゴもいますね」
「がっつり先頭グループか……」
「やはり走り慣れていますね」
「そりゃ始めたのも早かったしね」
企画から専用プラン履行時はずっと私と一緒でまともに練習してなかったわけだから、その分がハンデとみなしていいのかもしれない。
そもそもディエゴは走らない方がいいはずだ。いきなり長距離すぎる。
普段走る距離は超えているのに、スピードは衰えずスパートかけてくるなんて、一体どこで走り方学んだの。というか、速さがもはやプロしか集まらない大会レベルだよ。ディエゴもさながら、他の面子も超人すぎる。
「他の人たちって知ってる?」
「王都警備隊と騎馬部隊、それぞれの代表です」
「結局残るのは肉体派かあ」
ディエゴの様子に辛さは見えない。あくまで淡々と走っている。鍛えた甲斐があっというもの。初めて一緒に走った時は配分分からず息あがってた感じがあったな。懐かしい。
「第一グループの後続五人との差は」
「おおよそ10分です」
「巻き返しは可能だね」
「後続グループの面々の説明は必要ですか?」
「お願い」
妄想したいので。
加えるとオリアーナはひどく残念なものを見る目を私に向けた。ひどい、楽しみ方は人それぞれなのに。
後続グループは纏めて優勝射程圏内なんだから、一人一人のヒーローインタビューまで妄想するよ。それもだめだというの、オリアーナ。
「ディエゴの事を考えれば良いではないですか」
「それとこれとは話が別だよ」
似たようなことをディエゴにも言われたような。役不足と嘆いていたけど。
参加者の人数分バックグラウンドがあって、それを妄想するだけで当面楽しく過ごせるじゃない。見てるだけでも眼福なのに、それ以上を手に入れられるって実はすごい事なんじゃない?え、それなんて奇跡?
「癒しはいくつあってもいいもの!」
「いつまで曖昧なままでいるのですか」
「あ、返事の件?」
「……」
確かにディエゴに対して不誠実だった。当たり前のように付いてきて、ちょっかいだしてツンデレ反応に癒しをもらう日々だったから、きちんと話を通してなかったな。これはいけない。
「いいえ、チアキ。やはりいいです」
「はい? なにを?」
「ディエゴにもう少々猶予を」
「まだ断るなって言いたいの?」
「はい」
それをなぜオリアーナが言うのか。ディエゴが言える立場ではないの。
ディエゴはおばあちゃんとの会話の中で学業に身を投じてる間に好きになってくれと言った。そしたら、そのぐらい保留にすべき?
いやでもこの世界では学生といえど、もう結婚が決まる年齢でもある。はっきりさせないまま人生大事な時を逃してしまうのも気が引ける。オルネッラの為だと、誰の誘いも断る必要もなくなったわけで。彼の事を考えると、猶予期間があるのはいかがなものか。
「チアキ、ディエゴが」
「おお」
そうこうしてる間に先頭グループが王都へ入った。
しかもディエゴが頭一つ抜けてきた。おおっとこのままだと有言実行の流れじゃないか。
「おや」
第一グループ後続の内一人が抜きん出てディエゴの後に続く二人に迫っていた。
すごい、この逆転劇。後続の内の中で後ろ側だったから六人抜きぐらいしてる。そういうドラマがあるからスポーツはいいんだよ。
「けど遅すぎたな~」
「ええ、迫るにしても遅すぎました」
配分やスパートかける時って難しいよね。事実、スタミナ切れしてしまった者もちらほらいる。こういう経験を経て学んでいくし、それ自体もドラマだから大変おいしいです、楽しい。でもやっぱり専門の実況つけてほしいかな。次の機会があったらお願いしてみよう。
「チアキ、よかったですね」
そのままディエゴがゴールした。
ここはあえて負けるフラグを回収すべきだったんじゃないの。優勝のフラグを回収しなくてもいいでしょうが。
「こんにちは、フラグ。さようなら、フラグ」
「チアキ?」
「こっちの話」
山を登ったのも今思えば修業だったというのか。
空気の薄い急斜面を動くのは持久力以外に体幹や瞬発力も影響でるし、なによりあの山レベル行くなら鍛えられて当然ともいえる。そういう練習方法をとるランナーもいた記憶あるし。まあ数日程度で影響出るのというツッコミはこの際なしだ。
なにより、たぶんディエゴはこの大会を知っていた。その上で預かり知らぬところで練習していた可能性もある。
しかしだ、どうしてこうもディエゴにとってうまいこといくのか。
「ご褒美ぇ」
「よいではないですか。全く知らない者よりは」
「仕掛けた張本人にフォローされても」
よくよく見て分かるレベルで嬉しそうにしてるオリアーナが可愛すぎてこれ以上怒る気になれなかった。
クーデレもツンデレもおいしい日々でなにより。
「やっぱり私が走って、私が一番とるっていうフラグを回収すればよかった」
「今更です」
「知ってる」
なかなか詰んだ。覚悟を決めてデートするしかないのか。
「次回、優勝の御褒美」
「また良く分からない事を」
「スルーして」
ホワイトボードに目を戻せば第一グループで動きがあったようだ。
三人ほど前に出た。
後続の前に出れなかった一人が転倒し、すぐにメディコに回収されたりと、なかなかのドラマが展開されてて面白い。
やっぱりスポーツは世界もとい次元を超えるな。なにより汗をかいて息をきらして、それでも真剣な顔して走るとか最高に熱い。本番に至るまでのバックグラウンドを勝手に想像して楽しもう。
「ディエゴもいますね」
「がっつり先頭グループか……」
「やはり走り慣れていますね」
「そりゃ始めたのも早かったしね」
企画から専用プラン履行時はずっと私と一緒でまともに練習してなかったわけだから、その分がハンデとみなしていいのかもしれない。
そもそもディエゴは走らない方がいいはずだ。いきなり長距離すぎる。
普段走る距離は超えているのに、スピードは衰えずスパートかけてくるなんて、一体どこで走り方学んだの。というか、速さがもはやプロしか集まらない大会レベルだよ。ディエゴもさながら、他の面子も超人すぎる。
「他の人たちって知ってる?」
「王都警備隊と騎馬部隊、それぞれの代表です」
「結局残るのは肉体派かあ」
ディエゴの様子に辛さは見えない。あくまで淡々と走っている。鍛えた甲斐があっというもの。初めて一緒に走った時は配分分からず息あがってた感じがあったな。懐かしい。
「第一グループの後続五人との差は」
「おおよそ10分です」
「巻き返しは可能だね」
「後続グループの面々の説明は必要ですか?」
「お願い」
妄想したいので。
加えるとオリアーナはひどく残念なものを見る目を私に向けた。ひどい、楽しみ方は人それぞれなのに。
後続グループは纏めて優勝射程圏内なんだから、一人一人のヒーローインタビューまで妄想するよ。それもだめだというの、オリアーナ。
「ディエゴの事を考えれば良いではないですか」
「それとこれとは話が別だよ」
似たようなことをディエゴにも言われたような。役不足と嘆いていたけど。
参加者の人数分バックグラウンドがあって、それを妄想するだけで当面楽しく過ごせるじゃない。見てるだけでも眼福なのに、それ以上を手に入れられるって実はすごい事なんじゃない?え、それなんて奇跡?
「癒しはいくつあってもいいもの!」
「いつまで曖昧なままでいるのですか」
「あ、返事の件?」
「……」
確かにディエゴに対して不誠実だった。当たり前のように付いてきて、ちょっかいだしてツンデレ反応に癒しをもらう日々だったから、きちんと話を通してなかったな。これはいけない。
「いいえ、チアキ。やはりいいです」
「はい? なにを?」
「ディエゴにもう少々猶予を」
「まだ断るなって言いたいの?」
「はい」
それをなぜオリアーナが言うのか。ディエゴが言える立場ではないの。
ディエゴはおばあちゃんとの会話の中で学業に身を投じてる間に好きになってくれと言った。そしたら、そのぐらい保留にすべき?
いやでもこの世界では学生といえど、もう結婚が決まる年齢でもある。はっきりさせないまま人生大事な時を逃してしまうのも気が引ける。オルネッラの為だと、誰の誘いも断る必要もなくなったわけで。彼の事を考えると、猶予期間があるのはいかがなものか。
「チアキ、ディエゴが」
「おお」
そうこうしてる間に先頭グループが王都へ入った。
しかもディエゴが頭一つ抜けてきた。おおっとこのままだと有言実行の流れじゃないか。
「おや」
第一グループ後続の内一人が抜きん出てディエゴの後に続く二人に迫っていた。
すごい、この逆転劇。後続の内の中で後ろ側だったから六人抜きぐらいしてる。そういうドラマがあるからスポーツはいいんだよ。
「けど遅すぎたな~」
「ええ、迫るにしても遅すぎました」
配分やスパートかける時って難しいよね。事実、スタミナ切れしてしまった者もちらほらいる。こういう経験を経て学んでいくし、それ自体もドラマだから大変おいしいです、楽しい。でもやっぱり専門の実況つけてほしいかな。次の機会があったらお願いしてみよう。
「チアキ、よかったですね」
そのままディエゴがゴールした。
ここはあえて負けるフラグを回収すべきだったんじゃないの。優勝のフラグを回収しなくてもいいでしょうが。
「こんにちは、フラグ。さようなら、フラグ」
「チアキ?」
「こっちの話」
山を登ったのも今思えば修業だったというのか。
空気の薄い急斜面を動くのは持久力以外に体幹や瞬発力も影響でるし、なによりあの山レベル行くなら鍛えられて当然ともいえる。そういう練習方法をとるランナーもいた記憶あるし。まあ数日程度で影響出るのというツッコミはこの際なしだ。
なにより、たぶんディエゴはこの大会を知っていた。その上で預かり知らぬところで練習していた可能性もある。
しかしだ、どうしてこうもディエゴにとってうまいこといくのか。
「ご褒美ぇ」
「よいではないですか。全く知らない者よりは」
「仕掛けた張本人にフォローされても」
よくよく見て分かるレベルで嬉しそうにしてるオリアーナが可愛すぎてこれ以上怒る気になれなかった。
クーデレもツンデレもおいしい日々でなにより。
「やっぱり私が走って、私が一番とるっていうフラグを回収すればよかった」
「今更です」
「知ってる」
なかなか詰んだ。覚悟を決めてデートするしかないのか。
「次回、優勝の御褒美」
「また良く分からない事を」
「スルーして」
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