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謎の一団

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 屋敷を飛び出して数分後。
 目的の場所に到着した、のだが。

「しまったな、これじゃあ何処に居るのか今一わからないぞ」

 まさか立ち往生している場所が深い森の中だとは、思いもしなかった。
 こう鬱蒼と繁っていると、空中からでは詳細な場所がわかりづらい上、魔力を頼りに探そうにも、魔物も探知に引っ掛かってしまうからどれがメリル達なのか、判断が難しい。
 大型の魔物や魔法師レベルの魔力量をメリルが持っていたら良かったんだが。
 と、どう探すべきか模索していた最中。
 数十メートル先から、森でそうそう聞くハズのない金属音が木霊した。
 
「ん……? この金属と金属がぶつかるような音って、もしかして……」

 嫌な予感がした俺は、その音の出所に滑空。

「囲め! そいつをここから逃がすな! なんとしても息の根を止めろ!」

「いい加減死にやがれ!」

 あそこか!
 近づくにつれ激しくなる怒号の真上を陣取った直後、真下に向けて急降下した。

「ぐわあっ!」

「な、なんだ!?」

 戦場のど真ん中にスーパーヒーロー着地で降り立った際に放たれた衝撃波で、ローエン達を襲っていた何者かどもを吹き飛ばした俺は、ゆっくり立ち上がって。
 
「貴殿は……」

「無事か、ラセルさん」

 一人で十人近くを相手取り、疲労を顔に滲ませているラセルさんを守るよう、俺は山賊と思われる奴らにアイテムボックスから取り出したアダマンタイトエッジを構え、立ち塞がる。

「自分は大丈夫だ。 だが、ローエン殿とお嬢様は……」

 馬車の中を一瞥すると、血を流しているローエンが横たわっていた。
 重症だが一応は一命を取り留めているようで、胸元が上下に動いている。
 しかし、肝心のメリルが見当たらない。

「メリルは?」

「すまない、リュート殿。 奴らに拐われた」

「……! ……そうか」

 俺はあまり人を殺すことを良しとしている人間じゃない。
 ヤクザの世話になっていた時ですら、なるべく人を傷つけないよう気を付けてきた。
 これは自分が清い人間でいる為の最後の砦であり、良き人間でいる為の誓いだ。
 出来るだけ破りたくはない。
 けど、今回は別だ。
 こいつらは俺の大事な人達に手を出した、傷つけた、苦しめた。
 よって、手心を加える必要は一切ない。
 魔物や獣を刈るのと同じように、蹂躙するのみだ。

「なら、ここからは僕が相手をするよ。 ラセルさんは馬車を守っててくれ」

「なに? だが……いや、了解した。 お嬢をよろしく頼む、リュート殿」

 俺は頷くと、敵の集団に向かってゆっくり歩きだした。
 すると、山賊らしき奴らの一人が、群れのリーダーらしき男に耳打ちを……。

「兄貴、どうします? こいつ、明らかにヤバいですぜ。 ここは一旦引いて、ボスに報告した方が……」

「ばか野郎! 俺らの仕事は邪魔者を皆殺しにすることだろうが! なのに逃げ帰るだなんて冗談じゃねえ! 良いからさっさと構えやがれ!」

「へ、へい!」

 こっちとしちゃ逃げ帰ってくれた方が追跡しやすいから有難いんだが、殺る気ならしょうがない。
 さっさと皆殺しにして、メリルを助けに行くとしよう。

「てめえら、相手がガキだからって油断すんじゃねえぞ! こいつは今まで戦ってきた奴とは比べもんにならねえくらいつええ! 気合い入れてけよ!」

 へえ、どうやらこいつら、ただの山賊じゃないみたいだな。
 随分と訓練が積まれている。
 でなければ、明確な指示がなかったのにも関わらず、訓練された動きで散会し、お互い一定の距離を保って俺を取り囲んだりは出来ないだろう。
 これは明らかに山賊の動きじゃない、集団戦闘を得意とする騎士や軍人に通じるものがある。
 一体何者だ、こいつら。

「今だ、やれ!」

 兄貴と呼ばれた男が声を荒げた瞬間、十人近くの男どもが同時に襲いかかってきた。
 どいつもこいつも無口の癖にタイミングにズレが無い。
 大したもんだ。
 どれだけ訓練を積んだらこんな事が出来るのか、皆目見当もつかない。
 どおりでラセルさんが苦戦するハズだ。
 そこらの騎士なら尚更、対応は難しいだろう。
 だがしかし、今回は相手が悪かったな。
 ただの格上程度ならこの戦法で間違いはないが、相手は残念ながらこの俺。
 魔法もさることながら、剣術も他の追随を許さないリュート=ヴェルエスタが相手なのだ。
 この程度の連携、児戯でしかない。

「悪くないね。 でも、それじゃあ僕は殺せないよ、お兄さん達。 ……戦技オーバルアーツ・一閃虚空」

 振り払いから、鞘へと戻すまでの時間がおよそ一秒足らずという神速の居合い斬り、一閃虚空。
 これを受けて生き残れる者など、この世に存在しない。  
 たとえ、世界最強と名高い存在、魔王であろうとも。
 
 チンッ。

「がっ!?」

「……ッ!」

 刀身を鞘に納めた刹那、俺に襲いかかってきた十人足らずの敵は全て両断され、肉塊へと姿を変えた。
 一定のリズムで降りしきる血の雨。
 その雨音が響く最中、俺はゆっくりと瞼を見開き、一閃虚空の範囲外だった為に殺し損ねた一人に焦点を当てた。

「ひ、ひいいいい!」

「あ……」

 逃げられちゃった。
 あーあ、ぬかったなぁ。
 少し前の俺だったら獲物を取り逃すなんてミスしなかったのに、何やってんだか。
 やっぱりあれが原因か?
 魔物退治をセニアやサイラスに丸投げしたせいでまともに戦う事も無くなったから、感覚が鈍く……。
 まあ良いや。
 これはこれでメリルの追跡が楽になったし、存分に利用してやるとしよう。

痕跡強調ルートディスターブ

 追跡用のスキルを発動させると、今しがたあいつが踏んだ草が淡く光り始めた。
 他にも足跡が沢山あるな。
 余りにも数が多くて把握しにくいが、見た感じさっき倒した奴の倍の足跡があるようだ。
 この小さな足跡はメリルのか。
 時間が経っているせいで痕跡が薄くなっているが、これならなんとかなりそうだ。
 最悪、逃亡した男の痕跡もある。
 どう転んでもメリルの元には辿り着けるだろう。

「ラセルさん、ちょっとお姫様助けに行ってくるから、あとよろしくね」

「わかった、任せておけ。 それと貴殿には必要無いかもしれぬが、くれぐれも気を付けて行くと良い。 罠が待ち構えている可能性があるからな」

 罠、ね。
 まあ何を仕掛けてきてもどうせ何一つ効果は無いだろうが、折角ラセルさんがこう言ってくれているのだ。
 反論なんかせず素直に頷いておこう。

「うん、ありがと。 じゃっ、行ってきます!」

 これだけの人数を殺したとは思えない年相応の笑顔でそう告げると、俺は死体を飛び越え獣道に入っていった。
 目指すは逃亡した男が逃げ込む先。
 それまでは存分に生を謳歌するが良い。
 短い生を、な。






「はあっ、はあっ! な、なんなんだ……なんなんだよ、あのガキは! 化物じゃねえか! だから俺は言ったんだ! あのガキには関わるのはよそうって! ちくしょうが!」

 おっ、目標発見。
 思いの外足が遅いからいつの間にか追い付いてしまっていた。
 いや、普通の人はこんなもんか。
 俺が規格外過ぎるんだな、うん。
 
 にしても、こいつ何処に行くつもりだ。
 延々と森の奥へと入っていく。
 そっちは確か崖しか…………ああ、なるほど。
 なんとなくこいつらのアジトが何処かわかったかもしれない。
 こいつらのアジトは恐らく……。

「……やった。 やったぞ、洞窟だ! これで生き残れる! あいつも追ってきちゃいねえ! 後はあそこに逃げ込めさえすれば……!」

 森を抜けた先に聳える崖に、洞窟がある。
 洞窟の手前には見張りが二人。
 やはりあそこがこいつらの潜伏場所か。
 さて、メリルの足跡らしき痕跡もあの洞窟に延びている事から、あそこにメリルが連れ込まれたのは明白。
 だとしたら、ここで下手に騒ぎを起こしたらメリルに危害を加えられかねない。
 ここは慎重に慎重を期すべきか。
 となれば、まずはこいつが森を出る前に始末しておく必要があるな。

「おーい! おーい、誰か助け……!」

 森の出口に差し掛かった男が助けを求めたその刹那。
 俺は木の枝から飛び降りて、男の背中を斬りつけた。

「ぎゃあああああ!」
 
 ちょ、おいおい!
 断末魔デカすぎだろ、こいつ!
 
「ん? 今何か聞こえなかったか?」

「そうか? 空耳だろ」

「いや、今のは絶対空耳じゃなかった。 森に何か潜んでいるに違いない。 ……少し見てくる。 何かあったら援護頼む」

「おう」

 今のでどうやら感付かれたらしい。
 見張りの一人がこちらに歩いてきている。
 だがこれは好機。
 このまま誘き寄せて一人倒し、間髪いれずもう一人を瞬殺すれば潜入する事が可能となるハズ。
 であれば、一先ずこの死体を茂みに隠して……。

「どうだ、何かあったか?」

「うーん……特には…………ッ!」

 木陰に近づいてきた見張りが俺の存在に気付いたが、もう遅い。

「なんだ、おま……がっ!」

「おい! 一体どうし……!」

 もう一人が異変を察知した頃には、既に男は切り裂かれ、絶命。
 そして、流れる動きで弓へと装備を変更した俺は、仲間を呼ばれる前に弦につがえた矢で戦技を放った。

「一射必中!」

「ぐっ!」

 流石はどれだけ距離があっても必ず相手に当たる戦技である。
 吸い込まれるよう男の額を見事貫いた。
 
 よし、邪魔な敵は一通り片付いたな。
 これで楽に潜入が出来そうだ。

「んじゃ、潜入ミッション開始と行きますかね。 待ってろよ、メリル。 今助けてやるからな」

 と、俺は武器を暗殺向きのナイフに替え、気配を殺して洞窟に侵入した。
 洞窟は一本道ではなく網の目状に広がっているらしく、度々分かれ道に遭遇したが、どの道に敵が居るのか察知出来る俺は、敢えて敵の居る道を選び…………暗殺。

「おりゃ!」

「う……」

 暗殺、暗殺、そのまた暗殺を繰り返し行い、誰一人逃すことなく皆殺しにしていった。
 ある時は暗殺者が如く物陰から忍び寄り動脈を切り裂き。
 またある時は、小石で誘き寄せた所で急所を刺して暗殺を遂行していく様は、まさに稀代の暗殺者。
 そのうち、法で裁けないクズをこうして暗殺して回る暗殺者ライフをやるのも悪くないかもしれない、と思い始めた頃。
 奥から男数人の声が聞こえてきた。

「ボス、この娘はこれからどうするんで?」

「ああ、暫くは我々で隠し通す予定だ。 依頼主が必要とするその時までな」

「その時っていつなんです? この小娘ってかなり良いとこのお嬢ちゃんなんすよね? だったらいつまでも隠してはおけないんじゃあ……」

「そう長くはかからないらしい。 近々準備が整うと言っていたからな。 数週間って所だろう」

 依頼主? 
 準備……?
 やはりこいつら、山賊なんてちんけなもんじゃない。
 山賊に扮した傭兵や犯罪集団の類いか?
 なんにせよ、メリルを好きにさせる訳にはいかない。
 相手が何者だろうと、こいつらはここで……。

「へっ、ならあの剣聖の命もあと数週間ってわけっすね。 ざまあねえぜ」

「な……!」

 こいつらの本当の狙いはメリルじゃなく、父さんか!
 でもなんの為に父さんを狙う?
 どこの誰が依頼したか知らないが、こんな辺境の貴族を殺してなんの得があるというのだ。
 見当もつかない。

「どうして……どうしてこんな事をするんですか、あなた方は! 一体狙いはなんなんですか!」

 ああくそ、メリルのやつ、なにしてんだ。
 この状況でそんな挑発したら……。

「言うわけないだろ。 これだからお嬢様は」

「ふひひっ、ボスぅ。 どうせこの女、利用価値がなくなったら殺すんですよねぇ? だったらもったいねえし、俺が好きにしちまって良いですかい?」

「ひっ!」

「ああ、構わないぞ。 やりたい奴はも今のうちやっておけ。 こんな上玉、そうそうお目にかかれねえからな」

「あざーっす!」

 メリルに迫る幾つもの魔の手。
 そのおびただしく、気持ちの悪い手つきに悪寒を感じたメリルは、後退りしながら顔を青ざめさせる。

「やだ……こないでください! こないで! いやあっ!」

「おい、暴れんな! お前ら、身動きできないよう両手と押さえとけ」

 メリルの股を開こうと彼女の膝に触れた男の指示で、仲間二人がメリルの両手を床に縛り付けた。
 身動きが全く出来ないメリルの服を脱がそうと、仲間の一人が胸元に手を伸ばす。

「誰か……誰か助けて! いや……私のはじめてがこんな人に奪われるなんていや! 助けて、誰か! ……リュート様、助けて…………」

「へへっ、好きなだけ泣き叫べよ! その方が興奮するからよ! んじゃ、いっただっきまーす」

「い……いやああああ!」

 こいつら、よほど殺されたいらしいな。  
 ああ、良いぜ。  
 お望みどおり殺してやるよ。
 俺の許嫁に手を出した事、後悔させてやる!

「その薄汚い手を離しやがれ! ライトニングレイン!」

 物陰から飛び出すなり、雷撃の雨をメリルに襲いかかる男どもにふらせると、

「ぐあああああっ!」

 数多の雷は瞬く間に、三人の下衆の命を刈り取った。
 焦げ臭い匂いが漂っている。
 人間って焼くとこんな吐き気を催す匂いを発するのか。
 今後はあまり人間は焼かないようにしよう。

「え……? その声はもしや……」

「よう、無事かメリル。 助けにきたぞ」

「リュ……リュート様ぁ!」

 安堵したのか、メリルは涙をポロポロ溢す。
 そんな中、ハッと意識を取り戻したリーダーらしき男は、惨状を再確認した後、怒りの表情で俺を睨み付ける。

「な……なんだてめえは! なにもんだ!」

「俺? 俺はただの暗殺者だよ。 犯罪者を殺して回ってるフリーの暗殺者だ」

「暗殺者、だとぉ? ふざけやがって……おめえら、なにしてやがる! そのガキをさっさと殺せ!」

「おう」

 見張りと思われるガタイの良いおっさん二人の内、一人が俺に殴りかかってきた。

「ふん!」 

 振り下ろされたボディービルダーのような拳が、俺の顔面にクリーンヒット。
 確かな手応えに、おっさんはニヤリと口角を上げたが、すぐに表情は一変。
 信じられないと言わんばかりの顔に変わった。
 何故なら自慢の拳が全く効いていないからだ。

「これで終わりか? なら次は俺の番だな。 おらあっ!」

「ッ!?」

 攻守交代。
 攻めに転じた俺のボディーブローをもろに食らったデカブツは、まるで紙切れのように吹っ飛び、壁に激突。
 その衝撃で落ちてきた落盤の下敷きになった。

「………………」

 余りにもあり得ない光景にリーダーの男ともう一人のおっさんは立ち尽くす。
 が、俺は間髪いれず、隣で恐怖の色を滲ませるおっさんの玉を蹴り上げた。
 するとおっさんは、悶える時間もなく天井に突き刺さり、微動だにしなくなった。
 
「す、凄い……これがリュート様の本当の実力……」

「なんなんだよ……なんなんだよ、こいつは! なんでこんな化物が、こんなちんけなとこに居やがんだ! 話とちげえじゃねえか!」

 話……?

「……おい」

「ひいっ!」

「今のどういう意味だ。 誰がアンドリューさんを狙ってる。 洗いざらい吐け。 そしたら苦しませずに殺してやるよ」

 と、脅したのがどうやら良くなかったらしい。

「こ……こうなったら!」

「きゃあ!」

 脅しが効きすぎたのだろう。

「い、一歩でも近づいてみろ! この女を殺すぞ!」

 男はメリルの首筋にナイフを押し付け、人質にしてしまったのである。
 メリルの首筋から一筋の血液が流れているのが見てとれた。
 一歩でも動いたら本気でメリルを殺す。
 そう思わせるだけの気迫が男にはあった。
 これじゃあ動けそうもない。
 なら動かずに殺せば済む話なんだけど。

「リュート様、ごめんなさい……私…………」

「大丈夫だ、俺……じゃなかった。 僕がなんとかするから落ち着いてくれ、メリル」

「……はい」

 メリルは俺を信じて耐えてくれている。
 後は……。

「何をごちゃごちゃ言ってやがる! なめてんのか!」

「別になめてなんかいないって。 ただメリルを落ち着かせたかっただけで、他意はないよ。 安心してくれ。 だからさ、ほら。 あんたも少し落ち着いて……」

「うるせえ! ごたくは良いからさっさと下がりやがれ! 本当に殺すぞ!」

「はぁ……そうか。 なら、その前に一つアドバイスしてやる。 ……そこから絶対に動くなよ、

「……!」

 こくこくと頷くメリル。
 その様子に嫌な予感がした男は咄嗟に。

「お前、なにするつもりだ! 下手な真似はするんじゃねえ! てめえの女がどうなっても……! ま、待て! わかった、じゃあこうしよう! こいつはあんたに返す! だから命だけは助けてくれ! 頼む!」

 今更後悔しても、もう遅い。
 あんたの未来は既に確定しているんだから。

「残念、時間切れだ」

 地獄へご案内だ、クズ野郎。

「やめ……!」

 男が最後の命乞いをした次の瞬間。

 ドサッ。
 
 切り落とされた頭が地面に落下。
 
「メリル!」

 解放されたメリルが、駆けつけた俺の胸元に倒れ込んできた。

「無事か、メリル?」

「はい……ありがとうございます、リュート様。 ですが、今のは一体……」

 背後に転がる生首を一瞥しながら尋ねたその言葉に、俺はあっけらかんとこう答えた。

「ああ、なんて事はない。 ただの風魔法だよ。 それでこいつの首だけ切り落としただけだ。 簡単だろ?」

「…………ふっ、ふふ。 ふふふふふふ」

「な、なんだよ?」

「どこが簡単なんですか、もう。 普通そんな事、出来ないですよ? ホントにもうリュート様は……」

 あ、これもダメなの?
 難しいな、一般的な魔法の使い方ってのは。
 こりゃ学園生活が始まるまでになんとしても、年相応の魔法の扱い方を学ばないと……。

「ふふ…………本当に、貴方が許嫁でよかった。 愛してますよ、リュート様。 これからも、ずっと」

「お、おう」

 メリルに抱き締められると、また心臓の動きが激しくなってきた。
 なんだろう、これ。
 やっぱりなんかの病気なのかな。
 明日病院行こ。
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