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名が二つある男
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「リュート様、リュート様。 えへへ、リュート様ぁ」
「……なに?」
「えへへへ、なんでもないでーす。 名前呼んだだけでーす」
「ああそう……」
あれからというもの、メリルの甘えん坊ぶりは今までよりも更に激しくなった。
ずっと腕に絡み付き、延々と名前を呼んできている。
かれこれ一時間ほどずっと。
いい加減鬱陶しくなってきた。
「ねえメリル、そろそろ離れてくれない? 昨晩から若干風邪っぽいんだよね。 うつっちゃうかもしれないからさ、あまり近づかない方が……」
「え!? 大丈夫なんですか!? ちょっと失礼しますね」
言って、メリルは自分の額を俺の額にくっつける。
「────!」
メリルの美少女顔と瑞々しい唇が目の前に迫ってきた途端、また動悸が激しく……。
「うーん、熱は無さそうな感じが…………あれ? 上がってきた?」
「ああもう、良いから離れろって! ホントにうつるぞ!」
なんだか異様に気恥ずかしくて、俺は無理矢理メリルを引き剥がした。
メリルは「むー」とリスのように頬を膨らませるが、流石にうつされたくないのか、距離を…………ポスン。
「……へ?」
「わかりました、もうくっつきません。 でもその代わりに膝枕させてください。 それで手打ちにしてあげます」
うっわ、女の子の太ももってこんな柔らかくてスベスベしてるのか。
今まで意識しないようにしてたけど、やっぱりメリルって魅力的な女の子だよな。
顔は勿論良いし、スタイルも抜群。
貴族然としつつも慎ましやかな性格と包容力。
どこをとっても完璧な女の子だ。
これでメンヘラ気質じゃなかったら……。
やば、なんか鼻血出そう。
「い……いや、でも膝枕は流石に恥ずかしいって言うか」
「リュート様、女の子がここまで言ってるんですよ? 観念して膝枕されてください」
「……はい」
圧しに負け、俺は一度上げた頭を大人しく太ももに預けた。
その時、ふと目の前に座るラセルさんと目があった。
「リュート殿、此度は大変世話になった。 お陰で命拾いした、感謝する」
「ううん、無事でよかったよ」
「ふっ……これでも腕はそれなりに自信があったのだかな。 不甲斐ないばかりだ」
落ち込む必要はない。
ラセルさんとは剣を交えていないが、隙のない足運びや指のタコを見ればわかる。
この人は強い、間違いなく強い。
それこそ、父さんやセニアに負けずとも劣らない程度に。
しかし、今回は相手が悪かった。
俺に戦技や魔法を使わせたぐらいだからな。
むしろ、よく持ちこたえたもんだと評価したいところだ。
「あいつら妙に強かったし、しょうがないんじゃない?」
「いや、だが……」
「……もう良いじゃないですか、この話はここまでで。 リュート様のお陰でみんな無事だったんですから。 なのでこの件はここに置いていきましょう。 ねっ、ラセル?」
メリルがそう告げるも、どうしても自分を赦せないのか。
「ですが、自分がお嬢様を御守りできなかったのは事実です。 やはりその責はしっかりと負うべきで……」
その言葉にメリルは一瞬悲しげな表情を浮かべたが、次の瞬間。
わざとらしく頬を膨らませて、こう反論した。
「むー! 私が良いって言ってるんですから良いんですー! わかりましたね、ラセル!」
「……お気遣い痛み入ります、メリル様」
お互い言いたいことを言い終え、良い雰囲気を醸し出しているが、間に挟まれている俺は若干居心地が悪い。
何か話題はないだろうか。
そしたらこの居心地の悪さを少しは紛らわせられるのに。
……あっ、そうだ。
「ローエンさん、身体はホントに大丈夫? あれだけの怪我したんだしさ、そろそろ馬車の運転、ラセルさんに代わってもらったら?」
「ほっほっほ、問題ありませんぞリュート様。 リュート様の治癒魔法のお陰でこうしてピンピンしておりますからな。 王都までもう少しですので、このままじいにお任せくだされ」
治癒魔法じゃなく再生魔法なんだが、ここは突っ込まないでおこう。
なにせ、この世界の回復魔法は怪我の治りを促進させるだけで、再生魔法みたいな元の状態に復元させる魔法はないからな。
根掘り葉掘り聞かれてまた驚かれるのは目に見えてる。
初めの頃はみんなの反応を見るのが楽しかったけど、最近はちょっと煩わしくなってきたし。
「うん、わかった。 なら僕は少し寝るね。 またなんかあったら起こして」
「承知しました。 お休みなさいませ、リュート様」
「おやすみなさーい」
みんなの声を聴きながら、俺は目蓋を閉じた。
髪を撫でるメリルの手が気持ちいい。
まるで母親にあやされているような、そんな感覚に────
「────リュート様。 リュート様、着きましたよ。 起きてください」
「ん……」
目を覚ましたら、目の前にはメリルの整った顔があった。
なんで俺、馬車で、しかもメリルに膝枕されて寝てたんだっけ。
ああ、そうか。
道中また襲われるといけないから、無事送り届ける為同行する事にしたんだけど、特に問題はなさそうだったから仮眠をとったんだった。
「……おはよう、メリル」
「ふふ、おはようございます、リュート様。 よく寝てましたね」
「俺、どのくらい寝てた?」
「そうですね。 ざっと四時間ぐらいでしょうか」
どおりで太陽が沈みかけてる筈だ。
馬車の車窓に夕日が射し込んできていて、めっちゃ眩しい。
「四時間も……? よく途中で起きなかったな、そんな長い時間。 ……ところで、今ってどこら辺? もうそろそろ王都近郊に着く感じ?」
「いえ……? もう王都に着きましたよ。 今は門の前で順番待ちしてる所です」
「ふーん、そう。 王都……王都ね。 ………………王都!?」
王都と聞いて飛び起きた俺は、窓にへばりついて外を見渡す。
メリルの言った通り、前方には堅牢な門が待ち構えており、後方には待機列がズラリと並んでいた。
「………………」
「どうかしたんですか、リュート様? なんだか顔色が優れないようですけど」
そりゃ顔色だって悪くなる。
なにしろ王都での俺は、Sランク冒険者。
辺境貴族の息子リュートではなく、冒険者カズトの名で通っているのだ。
絶対に知られるわけにはいかない。
もしそれをメリルが知ったら、根掘り葉掘り質問してくるに違いない。
そしていずれ父さんと母さんにバレてしまうんだ。
内緒でギルドに登録して、数年間セニアの代わりに高難度クエストをこなしていた事を。
それだけはなんとしても阻止したい。
バレたら絶対怒られるから。
「別になんでもないよ。 馬車酔いしただけ」
「はぁ……」
微妙にまだ不安げなメリルの視線に気づかないフリをして窓から離れると、示し合わせたように馬車が動き始めた。
「やっと街に入れますねー」
「ああ、そうだな」
ゆっくりと進む馬車の車窓から見える門が、徐々に近づいてくる。
そして、前に並んでいた馬車三台が門を通りすぎた後、遂に俺達の番がやってきた。
「お勤めご苦労様です、騎士様」
「おお、メリル様。 ようやくお帰りになられましたか。 旦那様が心配しておられましたよ。 予定の時刻になっても帰ってこないと」
「えっと……実は途中で賊に襲われまして、それで……」
「なんと! それは誠ですか!?」
驚きを隠せない様子の衛兵に、もう一人の騎士が話しかけた。
小声すぎて何を話しているのかは全く聞こえないが、恐らくは今の話に関わりがあるのだろう。
話終えた騎士はメリルに敬礼すると、相棒と頷き合い、街の奥へと消えていった。
「ここ最近賊が増えているとの報告が方々からあがっていましたが、よもやメリル様まで被害に遭われるとは……これはなんとしても警備の強化を急がねば。 それにしても、よくご無事でしたね。 いくらラセル殿が強いとはいえ、怪我も無しとは……」
「ふふーん! 当然です! なにしろ私にはこのお方!」
え、ちょ……。
「リュート様がついてますからね! リュート様にかかれば山賊なんかちょちょいのちょい、なのです!」
おいいいい!
なにしてくれてんだ、この女!
折角バレないよう顔を背けてたのに!
「リュート……? どこかで聞き覚えがあるような……あれは確か……」
そりゃ聞き覚えあるでしょうよ!
これでも一応貴族な上、英雄と謳われる剣聖の息子なのだ。
末端の騎士だって、そりゃあ知ってる。
「…………って、なんだ。 カズトじゃないか。 おい、カズト。 そんなところでなにしてんだよ。 仕事か?」
「へ……? カズト……さん?」
やめろ。
困惑と興味津々を混ぜ合わせた目でこっちを見るな。
「あの……このお方の事、ご存じなのですか?」
「ええ、もちろん。 なんたってカズトは齢十にしてかの四大魔物を討ち滅ぼし、たった四年という歳月でSランクに昇格してしまった伝説級の冒険者ですからね。 城下町に住む者で彼を知らない者など居ません。 我々騎士団も常にマークしてますよ」
「へぇ」
う……。
「それは後でじっくりと話を聞きたいところですね。 ね、カズト様?」
「あ、後でね……」
「はい! 楽しみにしております!」
「フッ」
メリルには冒険者だった事を知られ、衛兵にはリュートの名を知られる始末。
予想しうる中で最も最悪な状況に陥ってしまった。
「衛兵殿、もう行ってもよろしいですかな?」
「ああ、これは申し訳ない。 どうぞ、通ってくれ」
「では失礼致します。 はっ!」
ローエンさんが鞭をしならせると、嘶いた馬が馬車を引き始めた。
「……カズト、どんな事情があるか知らんが、今後は偽名なんか使うなよ。 お前も今や高名な冒険者なんだ。 自分を貶めるような真似だけはするんじゃないぞ」
「うっす……」
一応両方本名なんですけど、と絶対に信じてもらえない事を漠然と考えていた最中、隣からねちっこい視線が────
「……なに?」
「いいえ? なんでもありませんよぉ? ふふふ」
胃が痛い……。
「……なに?」
「えへへへ、なんでもないでーす。 名前呼んだだけでーす」
「ああそう……」
あれからというもの、メリルの甘えん坊ぶりは今までよりも更に激しくなった。
ずっと腕に絡み付き、延々と名前を呼んできている。
かれこれ一時間ほどずっと。
いい加減鬱陶しくなってきた。
「ねえメリル、そろそろ離れてくれない? 昨晩から若干風邪っぽいんだよね。 うつっちゃうかもしれないからさ、あまり近づかない方が……」
「え!? 大丈夫なんですか!? ちょっと失礼しますね」
言って、メリルは自分の額を俺の額にくっつける。
「────!」
メリルの美少女顔と瑞々しい唇が目の前に迫ってきた途端、また動悸が激しく……。
「うーん、熱は無さそうな感じが…………あれ? 上がってきた?」
「ああもう、良いから離れろって! ホントにうつるぞ!」
なんだか異様に気恥ずかしくて、俺は無理矢理メリルを引き剥がした。
メリルは「むー」とリスのように頬を膨らませるが、流石にうつされたくないのか、距離を…………ポスン。
「……へ?」
「わかりました、もうくっつきません。 でもその代わりに膝枕させてください。 それで手打ちにしてあげます」
うっわ、女の子の太ももってこんな柔らかくてスベスベしてるのか。
今まで意識しないようにしてたけど、やっぱりメリルって魅力的な女の子だよな。
顔は勿論良いし、スタイルも抜群。
貴族然としつつも慎ましやかな性格と包容力。
どこをとっても完璧な女の子だ。
これでメンヘラ気質じゃなかったら……。
やば、なんか鼻血出そう。
「い……いや、でも膝枕は流石に恥ずかしいって言うか」
「リュート様、女の子がここまで言ってるんですよ? 観念して膝枕されてください」
「……はい」
圧しに負け、俺は一度上げた頭を大人しく太ももに預けた。
その時、ふと目の前に座るラセルさんと目があった。
「リュート殿、此度は大変世話になった。 お陰で命拾いした、感謝する」
「ううん、無事でよかったよ」
「ふっ……これでも腕はそれなりに自信があったのだかな。 不甲斐ないばかりだ」
落ち込む必要はない。
ラセルさんとは剣を交えていないが、隙のない足運びや指のタコを見ればわかる。
この人は強い、間違いなく強い。
それこそ、父さんやセニアに負けずとも劣らない程度に。
しかし、今回は相手が悪かった。
俺に戦技や魔法を使わせたぐらいだからな。
むしろ、よく持ちこたえたもんだと評価したいところだ。
「あいつら妙に強かったし、しょうがないんじゃない?」
「いや、だが……」
「……もう良いじゃないですか、この話はここまでで。 リュート様のお陰でみんな無事だったんですから。 なのでこの件はここに置いていきましょう。 ねっ、ラセル?」
メリルがそう告げるも、どうしても自分を赦せないのか。
「ですが、自分がお嬢様を御守りできなかったのは事実です。 やはりその責はしっかりと負うべきで……」
その言葉にメリルは一瞬悲しげな表情を浮かべたが、次の瞬間。
わざとらしく頬を膨らませて、こう反論した。
「むー! 私が良いって言ってるんですから良いんですー! わかりましたね、ラセル!」
「……お気遣い痛み入ります、メリル様」
お互い言いたいことを言い終え、良い雰囲気を醸し出しているが、間に挟まれている俺は若干居心地が悪い。
何か話題はないだろうか。
そしたらこの居心地の悪さを少しは紛らわせられるのに。
……あっ、そうだ。
「ローエンさん、身体はホントに大丈夫? あれだけの怪我したんだしさ、そろそろ馬車の運転、ラセルさんに代わってもらったら?」
「ほっほっほ、問題ありませんぞリュート様。 リュート様の治癒魔法のお陰でこうしてピンピンしておりますからな。 王都までもう少しですので、このままじいにお任せくだされ」
治癒魔法じゃなく再生魔法なんだが、ここは突っ込まないでおこう。
なにせ、この世界の回復魔法は怪我の治りを促進させるだけで、再生魔法みたいな元の状態に復元させる魔法はないからな。
根掘り葉掘り聞かれてまた驚かれるのは目に見えてる。
初めの頃はみんなの反応を見るのが楽しかったけど、最近はちょっと煩わしくなってきたし。
「うん、わかった。 なら僕は少し寝るね。 またなんかあったら起こして」
「承知しました。 お休みなさいませ、リュート様」
「おやすみなさーい」
みんなの声を聴きながら、俺は目蓋を閉じた。
髪を撫でるメリルの手が気持ちいい。
まるで母親にあやされているような、そんな感覚に────
「────リュート様。 リュート様、着きましたよ。 起きてください」
「ん……」
目を覚ましたら、目の前にはメリルの整った顔があった。
なんで俺、馬車で、しかもメリルに膝枕されて寝てたんだっけ。
ああ、そうか。
道中また襲われるといけないから、無事送り届ける為同行する事にしたんだけど、特に問題はなさそうだったから仮眠をとったんだった。
「……おはよう、メリル」
「ふふ、おはようございます、リュート様。 よく寝てましたね」
「俺、どのくらい寝てた?」
「そうですね。 ざっと四時間ぐらいでしょうか」
どおりで太陽が沈みかけてる筈だ。
馬車の車窓に夕日が射し込んできていて、めっちゃ眩しい。
「四時間も……? よく途中で起きなかったな、そんな長い時間。 ……ところで、今ってどこら辺? もうそろそろ王都近郊に着く感じ?」
「いえ……? もう王都に着きましたよ。 今は門の前で順番待ちしてる所です」
「ふーん、そう。 王都……王都ね。 ………………王都!?」
王都と聞いて飛び起きた俺は、窓にへばりついて外を見渡す。
メリルの言った通り、前方には堅牢な門が待ち構えており、後方には待機列がズラリと並んでいた。
「………………」
「どうかしたんですか、リュート様? なんだか顔色が優れないようですけど」
そりゃ顔色だって悪くなる。
なにしろ王都での俺は、Sランク冒険者。
辺境貴族の息子リュートではなく、冒険者カズトの名で通っているのだ。
絶対に知られるわけにはいかない。
もしそれをメリルが知ったら、根掘り葉掘り質問してくるに違いない。
そしていずれ父さんと母さんにバレてしまうんだ。
内緒でギルドに登録して、数年間セニアの代わりに高難度クエストをこなしていた事を。
それだけはなんとしても阻止したい。
バレたら絶対怒られるから。
「別になんでもないよ。 馬車酔いしただけ」
「はぁ……」
微妙にまだ不安げなメリルの視線に気づかないフリをして窓から離れると、示し合わせたように馬車が動き始めた。
「やっと街に入れますねー」
「ああ、そうだな」
ゆっくりと進む馬車の車窓から見える門が、徐々に近づいてくる。
そして、前に並んでいた馬車三台が門を通りすぎた後、遂に俺達の番がやってきた。
「お勤めご苦労様です、騎士様」
「おお、メリル様。 ようやくお帰りになられましたか。 旦那様が心配しておられましたよ。 予定の時刻になっても帰ってこないと」
「えっと……実は途中で賊に襲われまして、それで……」
「なんと! それは誠ですか!?」
驚きを隠せない様子の衛兵に、もう一人の騎士が話しかけた。
小声すぎて何を話しているのかは全く聞こえないが、恐らくは今の話に関わりがあるのだろう。
話終えた騎士はメリルに敬礼すると、相棒と頷き合い、街の奥へと消えていった。
「ここ最近賊が増えているとの報告が方々からあがっていましたが、よもやメリル様まで被害に遭われるとは……これはなんとしても警備の強化を急がねば。 それにしても、よくご無事でしたね。 いくらラセル殿が強いとはいえ、怪我も無しとは……」
「ふふーん! 当然です! なにしろ私にはこのお方!」
え、ちょ……。
「リュート様がついてますからね! リュート様にかかれば山賊なんかちょちょいのちょい、なのです!」
おいいいい!
なにしてくれてんだ、この女!
折角バレないよう顔を背けてたのに!
「リュート……? どこかで聞き覚えがあるような……あれは確か……」
そりゃ聞き覚えあるでしょうよ!
これでも一応貴族な上、英雄と謳われる剣聖の息子なのだ。
末端の騎士だって、そりゃあ知ってる。
「…………って、なんだ。 カズトじゃないか。 おい、カズト。 そんなところでなにしてんだよ。 仕事か?」
「へ……? カズト……さん?」
やめろ。
困惑と興味津々を混ぜ合わせた目でこっちを見るな。
「あの……このお方の事、ご存じなのですか?」
「ええ、もちろん。 なんたってカズトは齢十にしてかの四大魔物を討ち滅ぼし、たった四年という歳月でSランクに昇格してしまった伝説級の冒険者ですからね。 城下町に住む者で彼を知らない者など居ません。 我々騎士団も常にマークしてますよ」
「へぇ」
う……。
「それは後でじっくりと話を聞きたいところですね。 ね、カズト様?」
「あ、後でね……」
「はい! 楽しみにしております!」
「フッ」
メリルには冒険者だった事を知られ、衛兵にはリュートの名を知られる始末。
予想しうる中で最も最悪な状況に陥ってしまった。
「衛兵殿、もう行ってもよろしいですかな?」
「ああ、これは申し訳ない。 どうぞ、通ってくれ」
「では失礼致します。 はっ!」
ローエンさんが鞭をしならせると、嘶いた馬が馬車を引き始めた。
「……カズト、どんな事情があるか知らんが、今後は偽名なんか使うなよ。 お前も今や高名な冒険者なんだ。 自分を貶めるような真似だけはするんじゃないぞ」
「うっす……」
一応両方本名なんですけど、と絶対に信じてもらえない事を漠然と考えていた最中、隣からねちっこい視線が────
「……なに?」
「いいえ? なんでもありませんよぉ? ふふふ」
胃が痛い……。
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