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「“普通”以下の家で育っていた俺には分からないと言われるでしょうけど、俺は生まれてきてくれた子どもに“財閥の為に子作りをした”とは言いたくありません。」
「それは・・・私だってそうだよ・・・。」
「パパとママが愛し合った先にママのお腹に命が宿って、その命が生まれてきてくれた家がたまたま財閥の分家の“家”で。
パパとママがその財閥を大切にしている気持ちと同じように、子どもにも財閥を大切に思う気持ちを当たり前のように抱いて貰って、当たり前のように財閥に携われる人間になって欲しいなと、今は部外者の俺は思います。」
幸治君がそう言って、次々と涙が流れる私の涙を両手で受け止めてくれる。
「綺麗事だって星野社長には言われましたけど、まだ結婚も出来ていない若者が綺麗な夢を見ることを年配者が阻止するのではなく、綺麗な夢が叶うように助けて欲しいと言ったら、“俺はそこまで年配者じゃねーよ”とそこにめちゃくちゃ怒られました。」
「青さんにそんなお願いをしたの・・・?」
「星野社長から色々と言われたのでついお願いしちゃいました。
一美さんに言えない分を俺に色々と言ってきていて。」
「そうなんだ・・・。」
泣きながら大きく笑ってしまった。
青さんは幸治君からのそんな綺麗なお願いを聞いてどんな風に思ったのだろうと想像をしたら面白くなってしまって。
「俺は一美さんのお父さんに会ったことはありませんけど、一美さんは“そういう子ども”だったことを俺は“羽鳥さん”から聞いているので夢で終わるとは思っていません。
昔も今もお嬢様も大変なんだなと思っていますけど、俺は一美さんのことを“可哀想な人”だなんて1度も思ったことはありません。」
「うん、私は可哀想じゃないもん。」
「はい、知ってます。」
「青さんにもそう言った?」
「言いました。
でも、青さんは一般的な“良い家”に生まれた人だと思うから。
“普通”以下の家のことも“お嬢様”の家のことも“可哀想”に見えてしまう“普通”の家の人なんですよね。」
「理解してくれないかな?」
「理解して欲しいとは思いまけんけどね。
だって、“普通”以下の家のことなんてどんなに口で説明したって他の人には分からないし。
しかも、その家の中でも長子なのか中間子なのか末っ子なのかによってまた違う問題を各々抱えてるし。」
「そっか、そうだね・・・その通りだね。」
出会った時から幸治君は“こういう子”だった。
私とは違う“普通”ではない家で育った子。
そんな幸治君に両手を伸ばすと、幸治君が私の身体に身体を重ねてくれた。
大人の男の人になった幸治君の身体をギュッと強く抱き締める。
「良い子に育ったね・・・。
良いお父さんとお母さんと“パパ”が、幸治君が良い子になる“元”を育ててくれたんだね。」
「一美さんもそうだと思いますよ?
だから一美さんは当たり前のように財閥のことを大切に思っているんだと思います。
お父さんとお母さんが子ども達の次に財閥のことを大切にしていたから。」
幸治君がそう言いきった。
「“羽鳥さん”の24歳の誕生日の日、“羽鳥さん”のお母さんが吐き出した言葉はソレでしたからね。」
「うん・・・そうだね・・・そうだったね・・・。
私の幸せのことを考えたら財閥なんて“クソ”みたいな存在って言ってたね。」
幸治君に抱き締めて貰いながら笑うと、幸治君も楽しそうに笑った。
「俺は“中華料理屋 安部”の常連客だった“羽鳥さん”のことが大好きでしたからね。
“羽鳥さん”との思い出は何だって覚えてますよ。」
「うん、ありがとう。」
女としての私の身体、そこに残されている時間のことを考えると凄く怖かった。
でも、幸治君が抱き締めてくれている私のこの身体はこんなにも楽になって・・・私の心がこんなにも軽くなった。
でも、そんな中でも沸き上がってくる強い気持ちは・・・
「私はやっぱり、幸治君との赤ちゃんが欲しいよ・・・。」
だった。
「それは・・・私だってそうだよ・・・。」
「パパとママが愛し合った先にママのお腹に命が宿って、その命が生まれてきてくれた家がたまたま財閥の分家の“家”で。
パパとママがその財閥を大切にしている気持ちと同じように、子どもにも財閥を大切に思う気持ちを当たり前のように抱いて貰って、当たり前のように財閥に携われる人間になって欲しいなと、今は部外者の俺は思います。」
幸治君がそう言って、次々と涙が流れる私の涙を両手で受け止めてくれる。
「綺麗事だって星野社長には言われましたけど、まだ結婚も出来ていない若者が綺麗な夢を見ることを年配者が阻止するのではなく、綺麗な夢が叶うように助けて欲しいと言ったら、“俺はそこまで年配者じゃねーよ”とそこにめちゃくちゃ怒られました。」
「青さんにそんなお願いをしたの・・・?」
「星野社長から色々と言われたのでついお願いしちゃいました。
一美さんに言えない分を俺に色々と言ってきていて。」
「そうなんだ・・・。」
泣きながら大きく笑ってしまった。
青さんは幸治君からのそんな綺麗なお願いを聞いてどんな風に思ったのだろうと想像をしたら面白くなってしまって。
「俺は一美さんのお父さんに会ったことはありませんけど、一美さんは“そういう子ども”だったことを俺は“羽鳥さん”から聞いているので夢で終わるとは思っていません。
昔も今もお嬢様も大変なんだなと思っていますけど、俺は一美さんのことを“可哀想な人”だなんて1度も思ったことはありません。」
「うん、私は可哀想じゃないもん。」
「はい、知ってます。」
「青さんにもそう言った?」
「言いました。
でも、青さんは一般的な“良い家”に生まれた人だと思うから。
“普通”以下の家のことも“お嬢様”の家のことも“可哀想”に見えてしまう“普通”の家の人なんですよね。」
「理解してくれないかな?」
「理解して欲しいとは思いまけんけどね。
だって、“普通”以下の家のことなんてどんなに口で説明したって他の人には分からないし。
しかも、その家の中でも長子なのか中間子なのか末っ子なのかによってまた違う問題を各々抱えてるし。」
「そっか、そうだね・・・その通りだね。」
出会った時から幸治君は“こういう子”だった。
私とは違う“普通”ではない家で育った子。
そんな幸治君に両手を伸ばすと、幸治君が私の身体に身体を重ねてくれた。
大人の男の人になった幸治君の身体をギュッと強く抱き締める。
「良い子に育ったね・・・。
良いお父さんとお母さんと“パパ”が、幸治君が良い子になる“元”を育ててくれたんだね。」
「一美さんもそうだと思いますよ?
だから一美さんは当たり前のように財閥のことを大切に思っているんだと思います。
お父さんとお母さんが子ども達の次に財閥のことを大切にしていたから。」
幸治君がそう言いきった。
「“羽鳥さん”の24歳の誕生日の日、“羽鳥さん”のお母さんが吐き出した言葉はソレでしたからね。」
「うん・・・そうだね・・・そうだったね・・・。
私の幸せのことを考えたら財閥なんて“クソ”みたいな存在って言ってたね。」
幸治君に抱き締めて貰いながら笑うと、幸治君も楽しそうに笑った。
「俺は“中華料理屋 安部”の常連客だった“羽鳥さん”のことが大好きでしたからね。
“羽鳥さん”との思い出は何だって覚えてますよ。」
「うん、ありがとう。」
女としての私の身体、そこに残されている時間のことを考えると凄く怖かった。
でも、幸治君が抱き締めてくれている私のこの身体はこんなにも楽になって・・・私の心がこんなにも軽くなった。
でも、そんな中でも沸き上がってくる強い気持ちは・・・
「私はやっぱり、幸治君との赤ちゃんが欲しいよ・・・。」
だった。
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