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「はい。」



「財閥のことなんて抜きにしても、私はやっぱり幸治君との赤ちゃんが欲しいよ・・・。」



「はい。」



「綺麗で正しく生きることは凄く大変です~・・・っ」



私の嘆きに幸治君は楽しそうに笑い、私の唇にチュッ────...とキスをしてから身体をソッと離した。



幸治君の身体が離れてしまったことに寂しくなっていると、幸治君は私の身体に掛け布団を優しく掛けた。



「俺、ちょっとシャワー浴びてきます。」



さっきお風呂に入ったはずの幸治君が急にそんなことを言ってきて、私が生理中だったこともあるのでソレかなと思い頷くと・・・



幸治君が分かりやすく意地悪な顔で笑った。



そして私の身体に掛けた布団をトントンッとし・・・



「俺がいない間に“いけないコト”をしないで早く寝てくださいね。
俺はお風呂場でコレを沈めてきますけど。」



それを聞き、私は慌てて口を開いた。



「私も行く!」



心だけではなく私の“いけないトコロ”も寂しいのかさっきからピクピクと動いてしまっていて、幸治君にどうにかして欲しくてそう吐き出した。



なのに、幸治君はまた掛け布団をトントンッとして・・・



「遅くなると身体に良くないですからね。
早く寝てくださいね。」



「私も行きたいよ~・・・。」



「俺だけ“いけないコト”をしてイってくるので、一美さんはイかないでください。」



「なんで・・・!?」



「お仕置き。」



意地悪な顔で笑い続ける幸治君が私のことをベッドに残したまま立ち上がった。



「あの人との“いけない夢”を見たことと、避妊をしないという“いけないコト”をしたお仕置き。
おやすみなさい。」



爽やかすぎるくらい爽やかに笑う幸治君が部屋から出ていこうとし、私は慌てて立ち上がりバタバタと幸治君の後を追う。



「待ってよ~・・・!!」



私の足音だけではなくリビングの方からは桜が大暴れしている音がし、それには今日も心配になってくる。



「下の階の人、大丈夫かな・・・。
桜だけじゃなくて私達も連日のように夜に大運動会してるけど・・・。」



私も洗面所に入り扉を閉めると、幸治君が不思議そうな顔をしながら私を振り向いた。



「言ってませんでしたっけ?
下の階は弁護士事務所の事務所として使用している部屋らしいので、夜は誰もいませんよ?」



「そっか~、オフィス街にあるマンションだと結構そういう事務所があるんだよね~・・・って、そうじゃなくて!!」



「お嬢様のノリ突っ込み・・・っ」



大きく笑った幸治君の後に私もお風呂場に入った。



「そういうことは教えてよ~!
男の子ってみんなこうなのかなぁ。
あと私に言ってないことは何かある?」



「どうだろう・・・。」



シャワーのお湯を確認し、シャワーで私の身体を先に温めてくれる幸治君が真剣な顔で悩み・・・



「あ。」



何かを思い出したように口を開いた。



「先日の土曜日に行った病院の出張で、前もそこで会った一美さんの後輩の女の人と会いました。
お母さんが芸能人だっていう女の人。」



「佐伯さんだね。
佐伯さんからも何も聞いてないや。」



「他に2人いて、今思うと増田ホールディングスの人達です。
佐伯さんが会社の人と言っていたので。
もっとしっかり挨拶しておけば良かった。」



困ったように笑った幸治君が私のことをジッと見てきた。



「たぶん、“純”がいましたよ?」



「え・・・!!?」



「めっちゃリアクション良いじゃん。」



「だって・・・え!?園江さんも一緒にいたの!?」



「たぶん。綺麗で格好良いお姉さんで、芸能人みたいな人だったから。」



「それ、園江さんだ・・・絶対に園江さん!!
え~・・・佐伯さん、園江さんと旅行かな~。」



幸治君からシャワーを受け取り、今度は幸治君の身体にシャワーをかける。



「あともう1人って誰だろう、若松さんかな。
幸治君より少し年上の男の子。」



「いや、もっとちゃんとした大人の男の人だった。
一美さんよりも年上に見える感じ。
結構格好良い男の人。」



「園江さんと並ぶとみんな“結構格好良い”になっちゃうからな~・・・。」



シャワーを立て掛け2人でシャワーを浴びていく。
それから幸治君の背中に片手で触れ、もう片方の手で“いけないトコロ”をソッ────...と握った。



「手伝ってくれるんですか?
ありがとうございます。」



「うん。」



「俺は一美さんのことは手伝いませんけどね!!」



「えぇ~・・・じゃあ、自分でするからいいもん。」



「やめた方がいいですよ。
“女の子の日”は中が傷つきやすいから我慢って毎月のように言ってるじゃないですか。」



「でも、もう本当に終わるところだから・・・。」



「まだ終わってないならやめた方がいいですって!!
今日は大人しくここまま寝ましょう!!」



「意地悪・・・。」



「意地悪じゃないですよ!!」



凄~く意地悪な顔で幸治君が笑い・・・



「お仕置きです!!」



「それが意地悪なの~・・・!!!」



少しだけ残っていた不安や怖いという気持ち、それが温かいシャワーと一緒に流れていくようで。



お風呂の中に幸治君と私の笑い声が響き渡る。



その向こう側で桜が大暴れしている音も微かに聞こえ、我が家の夜はまだもう少し続いていく。



楽しいなと、幸せだなと思う。



やっぱりそう思う。



こんな毎日が当たり前のように続いて欲しいと、当たり前のようにそう願った。



若者ではない31歳の私だけど、そんな綺麗な夢を見た。
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