【完】秋の夜長に見る恋の夢

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「凄い・・・寝た・・・。」



定時後にすぐに私だけの屋敷に帰りシングルベッドに倒れ込んだ。
そしたら19時から23時半まで爆睡をしてしまっていた。



また不思議な夢を見た。
武蔵と出会ってからの夢を。
きっと、美化や脚色されていないような夢を。



お昼休みに“武蔵”と会い、退職願を出したと言われ全てがどうでもよくなってしまったから力が抜けて寝てしまった。
あんなに心底嬉しそうな顔で、心底幸せそうな顔で、そんなのは“武蔵”の顔で・・・。



私が婚約をしてから会うことは出来なくなっていた“武蔵”だった。



武蔵は言っていた。



武蔵は言っていたから・・・。



4月の誕生日で私の30歳の誕生日も終わった。
桜の花が全て散ったような日だった。
約束の日は、立冬の11月7日まで。



約束の日を迎えたら結婚をする。



武蔵は好きでもない人と、結婚をする。



本当は去年の11月7日までだった。
“覚悟が足りていない”
父親からそう言われ1年延期になった。



武蔵は好きでもない人と結婚なんてしない。



10年も前から決まっていた私と。



私は製薬業界の頂点に君臨し続けている会社の社長の娘、加賀小町。



親族で代々受け継いできた会社。
私が二十歳の時、私の婚約者である武蔵を次の社長に就任させることが決まった。



代々、社長となる親族達は親が決めた相手と結婚をしている。
入籍日は立冬の日の11月8日。



最低最悪なことに、武蔵は好きでもない私とだった。



武蔵は好きでもない人と結婚なんてしない・・・。



そんなの、しない・・・。



言っていた・・・。



そう言っていた・・・。