【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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「秋の夜長に恋の夢を見せてくれるって、頷いたのに・・・。」 



だから、受け入れてくれたのかと思っていた。



てっきり、受け入れてくれたのだと、そう思ってしまった・・・。



昨日だって泊まってくれて・・・。



眠るだけだけど私と一緒に寝てくれて・・・。



私とは子作りは出来ないようだけど、それでも今は色々な方法があるから・・・。



武蔵は好きでもない人とそういうことは出来ないと言っていたから、そういうことは出来ないと・・・。



武蔵は・・・



武蔵は・・・



今は好きな人がいる・・・。



そういうことをしていた好きな人がいる・・・。



「彼女だって、いた・・・。」



19歳の誕生日の日の夢を見て、31歳の今見ても武蔵はやっぱり心底嬉しそうな、心底幸せそうな顔をしていた・・・。



そして・・・



武蔵の目は恋の色をしていた・・・。



31歳の今見ても、そう見えた・・・。



だからもう1度頑張ろうと思った。



屋敷を出てからは会社で仕事のことしか話していなかったからか、武蔵は私を皆と同じように“小町さん”と呼んで敬語だったけど。



そんな武蔵に私も“矢田さん”としか呼べなかったけど。



でも、秋の夜長に恋の夢を見せてくれると、そう頷いてくれたから・・・。



今度は、戦おうと思った。



恋の芝居での戦いではなくて、恋の戦場で。



利き手ではない左手1本しか残っていなかったけれど、それでも戦いを止めるように私は育てられていなかったようだから・・・。



討たれるその時まで・・・。



討たれるその時まで・・・。



私は戦う・・・。



左手もなくなってしまったようだけど・・・。



まだ、心は微かに動いている・・・。



明日・・・



明日、武蔵は研究本部長と話し合うと言っていた。



明日、その前に私も武蔵と話し合う。



私の器に溜まっていた物はもうないけれど。
だから何も研ぎ澄まされていないけれど。



まだ、討たれていない・・・。



まだ、きっと討たれてはいない・・・。



そう思っていた時・・・



私だけの屋敷の扉、その扉の鍵が・・・



外から、開けられた音が聞こえた・・・。
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