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ゆっくり立ち上がったと思ったら・・・やけにゆっくりと歩いた・・・。



それでもキッチンまで来て、隣に立つ俺の隣で・・・キョロキョロとしている。
すぐそこに包丁があるのに、キョロキョロとしていて・・・。



「目、悪いのか。」



「うん・・・ちょっと・・・。」



「眼鏡かけろよ。」



「眼鏡かけても・・・そこまで視力は上がらなくて・・・」



それを聞いて、よく分からないけど何かの病気なのかと思った。



「目もろくに見えねー奴が包丁なんて持つんじゃねーよ。
俺が怪我するだろ。」



そう言うと、真知子の動きがピタッと止まった。
俺は、性格が悪い・・・。
どうしても、性格が悪い・・・。
いつもみたいに兄貴の真似をすればいいけど、飯田のオッサンと真知子の前でしても無駄なような気がするので・・・やめた。



俺がやろうと、包丁に手を伸ばそうと少し手を動かした時・・・



「ありがとう・・・。」



真知子が、そう言った・・・。
まだ俺は手をほとんど動かしていなくて・・・。



俺が代わりにやろうとしていることなんて分からないはずなのに・・・



真知子が、俺にお礼を言った・・・。



兄貴の真似をしている時はお礼を言われるけど、“俺”にお礼を言う奴なんて初めてで・・・。
それに、何に対してお礼を言われたのかよく分からなかった・・・。



真知子が嬉しそうに笑いながら、俺を見る・・・。



「小太郎君は、優しいね・・・。」



そんな、信じられないことを・・・言った。
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