枯葉と帆船

みらいつりびと

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枯葉の積もった林の中の道

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 枯葉の積もった林の中の道を通る。何かをついばんでいた数羽の鳥が驚いて、羽根をはためかせ飛び去った。枯葉とその下で土を持ち上げている霜柱を馬車が踏み、砕ける音が耳に快い。
 林を抜けるとテムズ川が見えた。僕はその上をどんなに多くの船が慌ただしく走っても、悠々閑々としてそれらを受け入れるこの川が好きだった。
 川沿いの道には、早起きの漁師たちが大勢働いている。彼らは、他に遅れまいと急いで漁船を出して行った。また貨物船に積荷を運び込むのに忙しい数人の男たちもいた。そして、ひょっこりどこからともなく現れた少女がコリーを連れて散歩していた。彼女はその大きな犬をちょっと持て余しているように見えた。
 川で上りの船と下りの船が行き交うときに、ふたつの船の水夫が互いに手を振り合って挨拶していた。
 対岸には高い建物が林立している。中でも一番目につくのは煉瓦造りの円塔で、大時計をつけていた。

 母がその気になると、事態は一変した。父はこの好材料を持って親戚の間を奔走し、熱心に説いて、移住を認めさせた。
 母のおせっかいな友人のエミールさんが、ある日突然やって来て、アメリカなんかへ行くのはやめなさいと騒いだ事件があった。その時彼女は、この植民地のことをさんざん罵倒してみせた。放っておくといつまで経っても黙りそうにないので、母があなたの言うとおりかもしれないけれど、それでも私達は行くんです、と極めて落ち着いた口調で言った。エミールさんはてっきり母が同意すると思っていたらしい。彼女は母が困っていると聞いてやって来たのだ。古い情報だった。彼女は不機嫌になって、出されていた紅茶を一息で飲み干し、帰った。
 僕は父と母が和解したのを見てほっとしていた。アメリカに行く気になった。音楽学校へ行くことはきっぱりと諦めた。才能があるのかどうかもわからなかったし。
 話が決まると父は、手際よく準備を進めた。まるでこの時を待ち望んでいたかのように、すぐさま役所を辞めた。家財を売った。大切にしていた絵画も手放してしまった。彼は絵画の価値を知っていたようで、値段の交渉はしっかりとしていた。
 父は喜々として旅立ちの準備に打ち込んでいた。
 僕にはイギリスに思い残しがあった。
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