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第21話 ノジャ、拐われる
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セランヌタワーに戻ると、ブリュアさんがいた。
俺より二つ多くギルドを周ったはずなのに、早く着いているとは驚いた。
「久しぶりだな。皐月」
「げ。ブリュア……」
皐月はあからさまに嫌そうな顔をした。
「酷いなあ。少しは嬉しそうにしたらどうだい」
「会って嬉しい相手ならそうするさ」
皐月はブリュアを一瞬睨んだ。
「さあさあ、仁と粋が待っているよ」
「ああ、わかっているよ。じゃあな、伊吹」
皐月はそう言って、エレベーターのある方へ向かった。
俺はそれを見送ると、タワーの入口を見つめた。
「ノジャのやつ、大丈夫かな」
「迷うようなことはないと思うけど」
「いや、結構迷うと思うけど」
「家の形や傷が違うから、わかりやすいと思うけど」
「それはブリュアさんがすごい」
十五分ほど待つが、ノジャはまだ来なかった。ノジャは女の子だということで、一番近いギルドにしたのだが、まだ帰ってこなかった。
「うーん。ちょっと探してみるかな」
「わかった。入れ違いにならないように、俺はここにいるよ」
ブリュアさんは頷き、外へと出ていった。
五分もしない内に、ブリュアさんが戻ってきた。
「伊吹。大変かもしれない」
「何かあったのか?」
「誘拐されたみたい」
「刺客が現れたのか!」
ブリュアさんは首を横に振り、こう続けた。
「街の人が見ていてね。数人の男と、ノジャらしき人がどこかへ行くのをね」
「ギルドの人ではなく?」
「ギルドの人間は顔が広いから、一緒にいたのがギルドの人間ならわかるさ。だから、知らんやつらに連れて行かれたらしい」
「探しに行かないと!」
「そうだな。まずは、手伝ってくれそうな人がいるから、それを当たろう」
俺とブリュアさんは再びギルドへと向かった。
晶と皐月がいたギルドへ行った。
晶はまだ受付にいた。
「どうかしたの?」
「連れの女の子が拐われちゃったんだよね」
ブリュアは呑気に答えた。
「それは大変じゃない! コリッツなら、いるわよ」
晶はそう言って、二階に上がっていった。
「人を見つけるのが上手い人がいてね。そいつを頼ろう」
晶と青年が降りてきた。
ピンク色のボブヘアに、薄いピンク色のタートルネックを着ている青年だった。深い緑色の瞳がこちらを見た。
「女の子が誘拐?」
「そうなんだよねえ。ねえ、コリッツ。何とかできるか」
「詳細を教えて」
ブリュアさんは、ノジャの見た目と、ノジャを連れて行った複数の男の話をした。
「ノジャって子の持っていた物はある?」
「着ていた服を預かっているよ」
ブリュアさんがそう言って、ウエストポーチからノジャが出会った時に着ていた服を出した。
「女性の服を勝手に貸すのは気が引けるがね」
ブリュアさんが渋りつつもコリッツに渡した。
「そういう場合ではないだろ」
コリッツは服を手に取り、目をつむった。
数秒だろうか。目を開けて、左の方を向いた。
「西のギルド近く」
「さすが、コリッツ」
「何でわかるんだ?」
「コリッツは思念を読み取るのに長けてるんだ」
そんな話をしていると、階段から物音がした。階段の方を見ると、もう一人青年が降りてきた。
深緑色の無造作な髪に、黒い瞳、太い黒縁メガネが目立つ。
「何か事件でもあったのか?」
青年が話しかけると、コリッツが説明をした。
「ふーん。何か大した事じゃなさそう」
青年はそう言った。
「いや、複数の男に拐われているんだぞ」
俺がツッコむと、青年は唇に手を当てて、傾げた。
「複数の男って、種族はわかりそうか?」
「有鱗族と、見た目魔族。あと、女性も一緒らしいよ」
ブリュアさんが答えると、青年は目を一瞬深くつむってから俺をじっと見た。
「有鱗族ねえ。見た目で判断したんじゃない?」
「可能性はあるかな。でも、小さな女の子を拐って身代金ってこともあるだろ」
コリッツが言葉を続ける。
「竜鬼の勘は当てにしてるけど、か弱い女の子なんだぞ。俺たちがよく知ってる強い女子たちとは違うんだから」
「そうそう。ノジャはなーんもできないからね」
ブリュアさんがそう付け加えた。
何もできないは言い過ぎな気がするけれど。
俺より二つ多くギルドを周ったはずなのに、早く着いているとは驚いた。
「久しぶりだな。皐月」
「げ。ブリュア……」
皐月はあからさまに嫌そうな顔をした。
「酷いなあ。少しは嬉しそうにしたらどうだい」
「会って嬉しい相手ならそうするさ」
皐月はブリュアを一瞬睨んだ。
「さあさあ、仁と粋が待っているよ」
「ああ、わかっているよ。じゃあな、伊吹」
皐月はそう言って、エレベーターのある方へ向かった。
俺はそれを見送ると、タワーの入口を見つめた。
「ノジャのやつ、大丈夫かな」
「迷うようなことはないと思うけど」
「いや、結構迷うと思うけど」
「家の形や傷が違うから、わかりやすいと思うけど」
「それはブリュアさんがすごい」
十五分ほど待つが、ノジャはまだ来なかった。ノジャは女の子だということで、一番近いギルドにしたのだが、まだ帰ってこなかった。
「うーん。ちょっと探してみるかな」
「わかった。入れ違いにならないように、俺はここにいるよ」
ブリュアさんは頷き、外へと出ていった。
五分もしない内に、ブリュアさんが戻ってきた。
「伊吹。大変かもしれない」
「何かあったのか?」
「誘拐されたみたい」
「刺客が現れたのか!」
ブリュアさんは首を横に振り、こう続けた。
「街の人が見ていてね。数人の男と、ノジャらしき人がどこかへ行くのをね」
「ギルドの人ではなく?」
「ギルドの人間は顔が広いから、一緒にいたのがギルドの人間ならわかるさ。だから、知らんやつらに連れて行かれたらしい」
「探しに行かないと!」
「そうだな。まずは、手伝ってくれそうな人がいるから、それを当たろう」
俺とブリュアさんは再びギルドへと向かった。
晶と皐月がいたギルドへ行った。
晶はまだ受付にいた。
「どうかしたの?」
「連れの女の子が拐われちゃったんだよね」
ブリュアは呑気に答えた。
「それは大変じゃない! コリッツなら、いるわよ」
晶はそう言って、二階に上がっていった。
「人を見つけるのが上手い人がいてね。そいつを頼ろう」
晶と青年が降りてきた。
ピンク色のボブヘアに、薄いピンク色のタートルネックを着ている青年だった。深い緑色の瞳がこちらを見た。
「女の子が誘拐?」
「そうなんだよねえ。ねえ、コリッツ。何とかできるか」
「詳細を教えて」
ブリュアさんは、ノジャの見た目と、ノジャを連れて行った複数の男の話をした。
「ノジャって子の持っていた物はある?」
「着ていた服を預かっているよ」
ブリュアさんがそう言って、ウエストポーチからノジャが出会った時に着ていた服を出した。
「女性の服を勝手に貸すのは気が引けるがね」
ブリュアさんが渋りつつもコリッツに渡した。
「そういう場合ではないだろ」
コリッツは服を手に取り、目をつむった。
数秒だろうか。目を開けて、左の方を向いた。
「西のギルド近く」
「さすが、コリッツ」
「何でわかるんだ?」
「コリッツは思念を読み取るのに長けてるんだ」
そんな話をしていると、階段から物音がした。階段の方を見ると、もう一人青年が降りてきた。
深緑色の無造作な髪に、黒い瞳、太い黒縁メガネが目立つ。
「何か事件でもあったのか?」
青年が話しかけると、コリッツが説明をした。
「ふーん。何か大した事じゃなさそう」
青年はそう言った。
「いや、複数の男に拐われているんだぞ」
俺がツッコむと、青年は唇に手を当てて、傾げた。
「複数の男って、種族はわかりそうか?」
「有鱗族と、見た目魔族。あと、女性も一緒らしいよ」
ブリュアさんが答えると、青年は目を一瞬深くつむってから俺をじっと見た。
「有鱗族ねえ。見た目で判断したんじゃない?」
「可能性はあるかな。でも、小さな女の子を拐って身代金ってこともあるだろ」
コリッツが言葉を続ける。
「竜鬼の勘は当てにしてるけど、か弱い女の子なんだぞ。俺たちがよく知ってる強い女子たちとは違うんだから」
「そうそう。ノジャはなーんもできないからね」
ブリュアさんがそう付け加えた。
何もできないは言い過ぎな気がするけれど。
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