【完結】イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜

夜須 香夜(やす かや)

文字の大きさ
上 下
20 / 77

第20話 伊吹、皐月と出会う

しおりを挟む
 ドーム状の建物だけが並ぶ街中を歩いている。道は整えられた白いレンガでできている。
 一面が白い。汚れも所々あるが、白いのは確かだ。
 建物の軒数を数えながらでないと、迷いそうだ。
 交差点に着いて、俺は買い物に行った時に買った方位磁石で方向を確かめた。
「方向音痴じゃなくても迷いそうだな。ノジャは大丈夫かな」
 独り言を呟いてから、右に曲がった。
 ノジャたちから別れて、二十分した頃にギルドであろう場所に着いた。周りと同じ白いドームなのは一緒だが、大きさが違った。三倍はある。遠くからでも、頭部が見えていた。
 俺は扉をノックした。
「どうぞー」
 という声がしたので、中に入って行った。
 中もやはり白い壁で囲まれていて、デクストラタウンで見たギルドと同じように受付があった。
「ギルド、イマジンへようこそ」
 茶髪で猫耳の女性が立っていた。髪は二つ括りを下に垂らしている。
「あの、仁と粋という人に頼まれて皐月って人を探しているんです」
 俺は簡潔に要件を言った。
「ああ、皐月。仁さんたちに頼まれたのね。あなた、名前は?」
「伊吹です」
「伊吹! 下界から連絡が来ていた人ね」
 俺は首を傾げた。
「ギルド内で情報の共有をしているのよ。火星に向かっていて、ブリュアとウルイァで護衛をしているって。私はしょう。皐月ならここにいるわよ」
「そうなんだ! ありがとう」
 気になるワードがあった気がするが、今は急いでいるので、皐月が受付に来るのを待った。

 ソファに座って待っていると、二分くらいだろうか、一人の青年がこちらに来た。
 オークル色のボブヘアだが、前髪だけ茶髪だった。普通の人だ。魔族かヒュー族か、モモさんと一緒の色人いろびとか。そろそろわかってきたが、猫耳族以外は見た目だけでは種族がわからないことだ。神だったという例もブリュアさんで経験している。
「君が伊吹か?」
「そうだけど。皐月はあなたか?」
「そうだよ。晶から聞いた。大変みたいだな。セランヌタワーに帰るよ」
 セランヌタワーとは、俺たちが地球から転移してきた高層の建物のことだ。
 俺は皐月と一緒にセランヌタワーに帰ることにした。

「伊吹は異世界人なんだな。この世界に来て、驚いたか?」
「もちろん。杏奈に助けてもらわなかったら、死んでたかも」
「杏奈……姉さんに会ったんだな」
「え?」
 俺は皐月の見た目をまじまじと見てしまった。杏奈は猫耳族だよな。姉弟で種族が違うことってあるのか?
「あ、俺たちはミックスルーツじゃないよ。義理の姉弟なんだよ」
 ミックスルーツというのは異種族結婚した夫婦の間に生まれた子どものことらしい。
「俺は魔族。見た目だけだと、もう誰が何の種族かなんてわからないから、気にしなくて良いよ。伊吹以外にも異世界人がいるしさ」
「なるほどな。街の人から見れば、俺は魔族に見えるかもしれないのか」
「そういうこと。まあ、下界ではそこまでまだ考えられていないけど」
 天界と地球などでは考え方が違うようだ。
「伊吹の世界では種族差別はあったのか?」
「まあ、ちょっと」
「どこもそうだよなあ」
 俺たちは会話しながら、セランヌタワーへと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...