single tear drop

ななもりあや

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修羅の妄執

修羅の妄執

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「あの、鳥飼さん」

橘さんがわざとらしく咳払いした。

「人妻を口説かないで頂けますか?」

「口説いて何が悪い」

「未知さんは遥琉の………」

「そんなこと分かってるよ。なぁ、未知。遥琉と別れて俺のところに来る気はないか?」

【へ!?………】

最初、僕を困らせようとして冗談を言ってるのかと思った。
でも、鳥飼さんの目は真剣そのもので。
瞳を真っ直ぐに覗き込まれて、にっこりと微笑み掛けられた。

あのあとすぐに電話で呼び出された鳥飼さん。何事もなかったように帰っていった。
隣の部屋に用意して貰った布団に横になるなり、疲れがどっと押し寄せてきて、五分と経たず眠りに落ちた。


夜中に人の気配を感じてふと目が覚めた。
昨日まで彼と子供たちで川の字で寝ていたから、てっきり一太がトイレに行きたくなったのだと思った。
でも薄暗い部屋の中はしーと静まり返っていて物音一つしなかった。

【あっ、そうだ。彼も一太も遥香もいなかったんだ】

橘さんと柚原さんは、和泉さんと同じ部屋で横になってるはず、だからこの部屋には僕以外誰もいない。
いないはずなのに・・・。
寝返りも打てないのはどうして?
寝ぼけ眼で周囲を確認し、自分が誰かに抱き締められていることに気が付いた。

【嘘・・・・・】

冷水を掛けられたかの様に背筋が凍りつき、眠気が一気に覚めた。
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