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32話 追及 クレマンside

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 クレマンは、ドミニクと一緒に学舎がくしゃへ戻ると… 
 他の友人たちの前で、ギヨームと、ギヨームの作り話を広げた3人を追及ついきゅうした。

「僕と従妹が浮気をしたという作り話を、君たちが学園中に広めただろう?!」 

「何を言っているんだ、クレマン? なぜ僕が作り話なんかするんだ?! 今朝けさから僕につっかかったりして… なんか変だぞクレマン?!」
 最初はヘラヘラと笑い、ギヨームは誤魔化ごまかそうと否定していたが… 

「僕が証人だよ、ギヨーム! 君は講義室で、そっちの3人と楽しそうにおしゃべりしていたよね?」
 クレマンの隣からドミニクは面倒くさそうに、作り話を広げた3人を指さした。

「……っ!」
 ギョッ… と目をむくギヨーム。
 その場にいても、普段は幽霊ゴーストのように静かで孤立こりつしているドミニクが、話に参加するとは思わなかったのだろう。

 ギヨームの作り話を広げた3人を、クレマンはお前たちも同罪だとにらんだ。

「君らもギヨームの仲間になって、僕と従妹が変な関係だと、汚いうわさを流しただろう?! 僕は君たちのことも、合わせて学園側に報告するつもりだからな! 友人だと思っていたのに、がっかりだよ!!」
 運良くドミニクが見ていたから、今回は真実がわかったけれど… これで何も明かされなかったら、こいつらはずっと… 悪ふざけして、誰かをおとしいれて楽しんでいたに違いない!
 こんなことは絶対に許さないからな!!
 
 滅多めったに怒ったことのない、おだやかなイメージを持つクレマンが、別人のように怒り狂っている姿を見て… 周囲にいた友人たちは、それほどクレマンの怒りが強いのかと戸惑とまどっている。
 
「オ… オレたちはギヨームの話が作り話だなんて、知らなかった!」
「僕もだよ! 友だちだろ? 信じてくれよクレマン?!」

「だってギヨームから… クレマンがパトリシアのをしていたと聞いたから… 信じたんだ!」
 作り話を広めた3人が、それぞれ自分の言いわけをする。
 その中にクレマンにとって、とんでもない内容が混じっていた。

「僕が、従… 従妹とキスなんてするわけ、ないじゃないか!!」
 なんでパトリシアとキスしたことになっているんだ?! まさか… こんなうわさまで、ミレイユの耳に届いているのか?! ああ、クソッ…!! これじゃぁミレイユの唇に、キスできないじゃないか?!
 ……いや、その前に… こいつらを何とかしないと?!

 クレマンは本気で腹をたてて、怒鳴どなった。

「…だけどオレは… クレマンが図書室で、キスしていたと聞いて…!」
「僕も… クレマンが図書室へ行くのは、本棚ほんだなに隠れてパトリシアとキスするためだと… 聞いたから!!」

「僕は午後から講義が無い時は、いつも図書室にいるけど…? パトリシアが来たことは、一度もないよ? 確かにクレマンは1人でいつも来ているけれどね? なんなら図書室の司書に聞くと良いよ」
 クレマンの隣に立ち、ドミニクがクレマンの無実を証明した。

「ドミニクの言う通りだ!」
 僕はパトリシアの我がままに疲れはてた時は、パトリシアなら絶対に行かない別館にある図書室へ、避難ひなんすることが多かった。
 まさか、それがパトリシアとキスするために、図書室へ行ったことになっているなんて?!

 クレマンの怒りは頂点に達し、熱くなった頭から湯気ゆげがでそうなほど、赤くなった。

「いいか、君たち?! だいたいクレマンは、大好きな婚約者のミレイユに、『唇にキスしたら嫌われるかも知れない』と、いじらしくキスは我慢しているのに… そんなうそを信じたら、クレマンがかわいそうじゃないか?!」
 援護えんごしようとドミニクが口をはさみ、クレマンの本心を代弁だいべんしたのは良いが… これには怒りとは別の意味でクレマンは赤くなって、恥じらう顔から湯気ゆげを出した。

「ド… ド… ドミニク////////…っ?!!」

「……」
 周囲で事のり行きを見守っていた、何人かの友人たちは… クレマンに『がんばれ!』と微笑む。


 話を学園中に広げた3人は、ギヨームから話を聞いたからだと簡単に白状したため… 他の友人たちの前で、3人がギヨームから聞いた話を、ドミニクの証言とらし合わせることが出来た。
 ギヨームが流したパトリシアとの浮気話は、全部うそだと証明され、クレマンは汚名おめいらすことに成功する。

 
「……」
 パトリシアが退学した後だったのが、僕には幸運だったな…! もし彼女がいたら、きっとミレイユを傷つけるために、ギヨームの作り話をつごうよく利用していたに違いない! そして僕は混乱と醜聞しゅうぶんの中に、突き落とされていたかも……?! うわぁ……

 従妹の邪悪じゃあくさに気づかなかったら、どうなっていたかを想像して… クレマンは背筋せすじが寒くなり、ブルッ… と身体を震わせた。

 そこで… 2度とそんな変なうわさが流れないように…

「従妹のパトリシアは、コッドソール伯爵家のシャルルきょうと近いうちに結婚するために、すでに学園を退学している」
 …とその場にいた友人たちに報告した。


 後は作り話を流し、クレマンの名誉めいよを傷つけた4人の処分を、学園側に報告しゆだねることで終わりにして… これで勉強に集中できると、クレマンはホッ… と胸をなでおろす。




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