15 / 646
14
しおりを挟む
「理由が無ければ納得できないと言うのであれば、投資だと思ってくれていい。私は優秀な人材を埋もれさせておくほど馬鹿ではないからな」
雪也が疑っていることを、弥生も理解している。わかっていて、雪也を引き取ったのだ。その覚悟はこの程度で引き下がるほど弱いものではない。
弥生は触れていた頬から手を離すと、雪也の流れるような黒髪を撫でる。その温もりに雪也はハッと目を見開いた。
「お前は忘れているだけだ、無条件に与えられる温もりというものを。だがそれでも良い。気が済むまで疑っていい。それをどう覆すかは、私の役目だからな」
微笑み、雪也を見るその瞳は、どこか懐かしかった。性別も年齢も、何一つとして重なるものはないというのに、懐かしくて、懐かしくて、雪也の心が騒めく。
「できる事ならば、大切にされることを知ってほしい。無条件に愛されることを知ってほしい。そしていつか、今度はお前が誰かにそれを与えられれば良いと思う」
揺れ動く雪也に弥生は気づいていた。弥生だけではなく、その場にいた優も紫呉も。迷子のように揺れる瞳に、どうして気づかずにいられるだろうか。
当たり前に与えられるものがあったはずだ。子供らしく無邪気に笑い、愛され、それが永遠に続くと信じていた日々が、きっと彼にもあっただろう。だが、どういう理由かは知らないが、それは奪われ、苦界に堕ちた。
雪也が疑っていることを、弥生も理解している。わかっていて、雪也を引き取ったのだ。その覚悟はこの程度で引き下がるほど弱いものではない。
弥生は触れていた頬から手を離すと、雪也の流れるような黒髪を撫でる。その温もりに雪也はハッと目を見開いた。
「お前は忘れているだけだ、無条件に与えられる温もりというものを。だがそれでも良い。気が済むまで疑っていい。それをどう覆すかは、私の役目だからな」
微笑み、雪也を見るその瞳は、どこか懐かしかった。性別も年齢も、何一つとして重なるものはないというのに、懐かしくて、懐かしくて、雪也の心が騒めく。
「できる事ならば、大切にされることを知ってほしい。無条件に愛されることを知ってほしい。そしていつか、今度はお前が誰かにそれを与えられれば良いと思う」
揺れ動く雪也に弥生は気づいていた。弥生だけではなく、その場にいた優も紫呉も。迷子のように揺れる瞳に、どうして気づかずにいられるだろうか。
当たり前に与えられるものがあったはずだ。子供らしく無邪気に笑い、愛され、それが永遠に続くと信じていた日々が、きっと彼にもあっただろう。だが、どういう理由かは知らないが、それは奪われ、苦界に堕ちた。
3
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
SS大集合!(大?)
十時(如月皐)
BL
リクエストいただいた小話や突発的に書きたくなった小話など、本当にSSとよべるお話の集まりです。書いたら更新、します!
「望んだものはただ、ひとつ」等、既刊の長編のお話に関するSSはこちらではなく、新しいのを作ります。
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。
彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。
だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。
どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
【BL】水属性しか持たない俺を手放した王国のその後。
梅花
BL
水属性しか持たない俺が砂漠の異世界にトリップしたら、王子に溺愛されたけれどそれは水属性だからですか?のスピンオフ。
読む際はそちらから先にどうぞ!
水の都でテトが居なくなった後の話。
使い勝手の良かった王子という認識しかなかった第4王子のザマァ。
本編が執筆中のため、進み具合を合わせてのゆっくり発行になります。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
底辺冒険者で薬師の僕は一人で生きていきたい
奈々月
BL
冒険者の父と薬師の母を持つレイは、父と一緒にクエストをこなす傍ら母のために薬草集めをしつつ仲良く暮らしていた。しかし、父が怪我がもとで亡くなり母も体調を崩すようになった。良く効く薬草は山の奥にしかないため、母の病気を治したいレイはギルのクエストに同行させてもらいながら薬草採取し、母の病気を治そうと懸命に努力していた。しかし、ギルの取り巻きからはギルに迷惑をかける厄介者扱いされ、ギルに見えないところでひどい仕打ちを受けていた。
母が亡くなり、もっといろいろな病気が治せる薬師になるために、目標に向かって進むが・・・。
一方、ギルバートはレイの父との約束を果たすため邁進し、目標に向かって進んでいたが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる