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「アシェル様、いかがなさいましたか?」
 何か不手際でもあっただろうかと顔を曇らせる侍従は、しかしチラと式典の時間を気にするように広間へ視線を向けた。やはりもうすぐ式典が始まるのだろう。予定では王と王妃が玉座に座ってから、この大扉をくぐって第一連隊が入室し、王の前に膝をつく。つまり、このままここに居ては非常に邪魔だということだ。
「私はノーウォルトとはいえ三男だ。この式典に参加する資格はない。王妃様がお呼びなら式典後に窺うから、早く別の場所に行かないと――」
「問題ございません、アシェル様」
 早く、始まってしまう前にどこか邪魔にならない場所へ行かなければと焦るアシェルに、侍従はそんなことかと笑みを浮かべ、彼の言葉を遮った。
「王妃様から、アシェル様も式典に参加するようご命令でございます。何もご心配なさる必要はございません」
 式典に参加するようにとの命令? なぜ、そんな命令が……。
 己の妹であるが、考えていることがさっぱりわからない。眉間に皺を寄せて考え込むアシェルに、時間が無いと車輪を止めていた手を肘掛けに移動させて、侍従は同僚に目配せをして急ぎ大広間に入った。そして数分も経たぬうちに玉座に近い場所に立つ侍従が式典用の煌びやかな杖を床に打ち付ける。
 ドンッ、と鈍い音が響き渡り、騒めいていた声が一斉に静まり返った。
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