264 / 1,121
最後の詰め 4
しおりを挟む
「誤魔化そうとしても無駄だ。
あれは女性だな。そもそも、前から違和感はあった。
少年であるにしては、所作が綺麗すぎる。
決め手は貸し出したあの衣装。
あれは、女性特有な身体の曲線に沿う様、作られておる代物故、男が身に付けるのは無理だ」
そう言われ、あえてあの衣装が選ばれたのだと知った。
背中を汗が伝う……。
もう、確信を持たれてしまっている……。サヤを少年だと言い張るのは、もはや無理だった。
だが、異界から来た少女である。
なんてことは口に出来ない。
「性別を偽っていた理由は何だ。
政治的利用を、懸念してであろうとは思う。サヤは、その様な立ち位置の者であるのだろう?
念入りに身元を隠すための処置なら、あれの背後が気になるのは仕方あるまい」
「違います。サヤに背後などございません。天涯孤独の、少女ですよ。
性別を偽っていたのは、ここで彼女を保護する上で必要な処置であったというだけです。
俺のセイバーンでの立ち位置が、そうせざるを得なかったというだけなのです」
「其方が保護する理由があったということだろう。
それは何だと聞いておる」
「彼女がそれを望んだというだけです。ギルに託そうとはしたのです」
「……つまり、あの娘には、ここに居なければならない理由がある。ということだな」
追撃の手を緩めてくれる気はない様子だ。
焦る気持ちがジリジリと胸を焼くが、慌てるなと、必死で自分に言い聞かせた。
「聞けば、土嚢もあの娘の発案であるそうだな。
解せぬ……あれだけの知識を持つものを放逐する国というのが、想像出来ん。
この近隣ではないのだろうとは思うが」
「そこは申し上げた通りですよ。海の彼方にある島国です。
潮の流れに翻弄されて、帰り方も分からない、遠い地だ。
ただそれに、政治的な理由はありません。
たまたま、運悪く、そうなってしまっただけです」
「それはあの者が自分でそう申しておるだけであろう?
その言葉を鵜呑みには出来ぬ」
言葉が、胸に突き刺さる。
言っていることは真実で、俺がサヤの手を引かなければ、彼女はきっと、ここに居なかった。
だが、それを信じてもらう手段が無い。
どうすれば良いのか分からず、焦る気持ちと不安が、大きく育っていく……。
「だが……」
そこで姫様は、困ったという風に、大きく息を吐いた。
「あの者の行動理由が、其方並に、読めん」
そう言ってから、長椅子の背もたれに身を任せた。
「私の身代わりを言い出し、身を危険に晒した。自らだ。
高貴な生まれなら、その様には行動すまいよ。自身の身を守ることを優先するはずだ。
普段も普通に、従者として振舞っておるしな……それを苦にする様子もない。まるで知識量と、行動が、合致せぬ。
その知識についてもそうだ。
見返りも求めぬ……甚だ不可解だ。
何か交渉してくるかと隙さえ伺わせても、全く無頓着であるしな。
本気でただ、そうしたくてそうしておる様にしか、見えぬ。意味が分からん」
姫様のお手上げだと言った態度に、他の二人も苦笑を浮かべた。
それで、少しだけ場の空気が緩む。
サヤのことを、政治的に利用する為に、勘ぐっているのではない様子に、俺は姫様が何を聞き出そうとしていたのかが、分からなくなくなる。
正直、どう答えて良いやら困り、眉を寄せた俺に、姫様までしかめっ面になった。まだ分からぬのかこいつは。と、いう時の顔だ。
「そもそも、疑われたくないなら、特殊な知識など晒さねば良い。
つまりあえて出したのだ! 王家の病を言い当て、我々に恩を売った理由がある筈ではないか⁉︎
其方も其方で、特別なその知識の出所を簡単に晒しよる……もう少し慎重に行動すべきだぞ⁉︎
一体何を考えておるのだお其方らは! だいたい、この様な企てを……」
「姫様……その様な物言いを致しますと、まるで詰問されているかのようですわ」
言葉を重ねようとした姫様を、リーカ様がやんわりと止めた。
ハッとした姫様が、視線を泳がせてそっぽを向く。唇を尖らせて、何やら不満そうながらも押し黙った。
リーカ様は、そんな様子の姫様を微笑ましく眺めてから、俺に視線をやり、優しくにっこりと微笑みを浮かべて。
「レイシール様、姫様は、サヤを心配なさっておいでなのですよ。
どう解釈しても、明らかに高貴な生まれ……その様な方が、性別まで偽って、従者をされているのです。
まだ、成人前である様子ですし……一人親元を離れるには、いささか早すぎますわ。ならば、何か理由があるはず。
そもそも、共のお一人もいらっしゃらない状態で保護したというのは、不可解すぎます。政治的な陰謀があるのではと考えると、王家で保護した方が良いのではないかと、そう思われたのです」
そんな風に言われ、考え至らなかったことに呆然とした。
あ、ああ……そう、か。そういう風に解釈する場合も、あるよな……。
つい、知識目的な、悪意ある者の懸念にばかり意識がいっていた。
俺の様子に姫様は、手間のかかる奴だと肩をすくめる。
そうしておいてから、もう一度。今度は少しゆっくりと、喋り出した。
「……正直、相当な恩を……借りを作ったと思うておるのだ。
ここに出向いた時、私は……今のこの様な形など、想像だにしておらなんだ。
リカルドのこともだ。
あれは……姉上の死から、人が変わってしまったのだとしか……。は、はじめは、何か考えがあってのことだと、思うておったのだぞ⁉︎ しかしな、十年にも渡って、あの態度を貫かれた。何の説明もなしにだ!
……信じ通すことをしなかった私も、不甲斐なかったのだが……」
居心地悪そうに、そっぽを向いたまま、姫様が言う。
だが、あそこまで徹底して演じられてしまうと、正直信じきれないと思うのだよな。
俺はたまたま、運が良かっただけだ。
「正直少し、自暴自棄になっていた……。
其方を無理矢理、巻き込もうとしておったのも……事実、私の意思だ。
途中まで私は……我欲のために暴走しておった」
ポツポツと語る姫様。
自分の非を認める発言に、俺は少々驚く。
はじめの方の姫様は、どこか演技をされている風であったと、俺も思っていた。
サヤを暗に引き抜こうとされてみたり……俺を無理やり近衛にするといった発言をしてみたり、姫様らしくなかった。
だが途中から、その様子は薄れ、今は、特に違和感も無くなっている。
「気持ちが変わったのは、其方が、ただひたすら昔のまま、お人好しであったからだ。
だんだん、罪悪感が強まっていった……更にあのサヤだ。
其方に輪をかけ、お人好し。二人揃うと危なっかしくて仕方がないわ。
駆け引きも何もなしに、病のことをサラリと言われ、其方は優しいから、心配するなと囁かれ、挙句、私の身代わりまで!
其方も相変わらず……思いもよらぬ手法で、私が王となる為の手段を作り出しよるし……。
……まぁ、なんだその……反省、したのだ。
もっと、信じれば良かったのだと。
何もかも、私が、臣を、信じ切らなかったことに起因している。
リカルドとて、私が本気で信を示しておれば……打ち明けてくれたやもしれぬ」
姫様の告白に、俺はふんわりと、気持ちが和らぐのを感じていた。
ああ、やはり姫様は、素晴らしい方だ。有耶無耶に、誤魔化しておけば良いものを、こうして晒し、認めているのだから。
「それでだな……その……何かの形で、其方らに褒美を与えたいと思うておる。
とはいえ、其方はまだ成人前であるし、其方の希望もある。
それでとりあえず、其方にとっては重荷であろう、サヤのことを、こちらで引き受けようかと思い至ったわけだ。
悪いようにはせぬ。あの娘は賓客として扱おう。状況報告も送る。
まだ何か問題があるというなら、隠さず申せ、対処する」
そんな風に真摯に言われ、途方にくれた……。
姫様は、本気でサヤを案じて下さっているように思えた。
王となられる方であるから、国のことを優先するお立場だ。今のこの言葉が絶対ではないだろう。
けれどそれでも、どうしようもなくなった時以外は、サヤを守って下さるだろうということは、伝わった。
サヤが、ただの流浪の民であったならば、それで良かった……。
けれど……サヤは異界の民。
この秘密は、流石に、言えない。
姫様であるが故に、言えない。
この娘の知識はこの国を左右する。
土嚢が既にそうだ。湯屋だって、手押しポンプだって、この国を大きく変えるだろう。
それをサヤ本人が、望んで提供するなら、とやかく言うつもりはない。
けれど、こちらの世界の者が、サヤの知識を搾り取ろうとするかもしれないことが、恐ろしかった。
王家に保護して貰えば、サヤの身は安全だろう。
だが、サヤの心を守ってもらえるか……サヤの意に沿わないことを強要したりしないか……。
姫様がどれほど心を砕き、サヤを保護してくれたとしても、ルオード様や、リカルド様が近くにいらっしゃるのだとしても、安心できない。
皆、サヤよりは国を優先するだろうからだ。
俺だってこの国の者だ。その気持ちは分かる。サヤから溢れる知識に、目を眩ませないとは言い切れないと思う。でも……俺はサヤを守りたかった。
サヤは、何の犠牲もなく、知識を晒しているのではない。
彼女はきっと、何も言わない。一人で耐えようとするのだろう。
正しい保証のない知識を、震えながらでも、求める人に、与えようとするのだろう。
王家や、世界を変えてしまう重圧を、一身に背負って……。
そんな健気な娘を、誰かの手に委ねたくない……。俺自身の手で、力で、守りたい。
けれど……。
俺は、剣も握れない。
今回の様に、争いの場に赴くことが出来ない俺が、彼女を守るだなんて……出来るのかと考えると、気持ちが揺らいだ。
姫様なら……公爵家の方々なら、それが出来ると思う。
だがその姫様や、公爵家の方がそれを強いた場合はどうなる?
サヤに知識を晒せと、強要してきた時、俺は、守れるのか?
コンコン……
思考に引っ張られて視線を床に落としていた俺の耳に、扉を叩く、訪の音が聞こえた。
リーカ様がスッと動いて、来訪者の確認に行く。
程なくして、連れて来られたのは……サヤだった。
あれは女性だな。そもそも、前から違和感はあった。
少年であるにしては、所作が綺麗すぎる。
決め手は貸し出したあの衣装。
あれは、女性特有な身体の曲線に沿う様、作られておる代物故、男が身に付けるのは無理だ」
そう言われ、あえてあの衣装が選ばれたのだと知った。
背中を汗が伝う……。
もう、確信を持たれてしまっている……。サヤを少年だと言い張るのは、もはや無理だった。
だが、異界から来た少女である。
なんてことは口に出来ない。
「性別を偽っていた理由は何だ。
政治的利用を、懸念してであろうとは思う。サヤは、その様な立ち位置の者であるのだろう?
念入りに身元を隠すための処置なら、あれの背後が気になるのは仕方あるまい」
「違います。サヤに背後などございません。天涯孤独の、少女ですよ。
性別を偽っていたのは、ここで彼女を保護する上で必要な処置であったというだけです。
俺のセイバーンでの立ち位置が、そうせざるを得なかったというだけなのです」
「其方が保護する理由があったということだろう。
それは何だと聞いておる」
「彼女がそれを望んだというだけです。ギルに託そうとはしたのです」
「……つまり、あの娘には、ここに居なければならない理由がある。ということだな」
追撃の手を緩めてくれる気はない様子だ。
焦る気持ちがジリジリと胸を焼くが、慌てるなと、必死で自分に言い聞かせた。
「聞けば、土嚢もあの娘の発案であるそうだな。
解せぬ……あれだけの知識を持つものを放逐する国というのが、想像出来ん。
この近隣ではないのだろうとは思うが」
「そこは申し上げた通りですよ。海の彼方にある島国です。
潮の流れに翻弄されて、帰り方も分からない、遠い地だ。
ただそれに、政治的な理由はありません。
たまたま、運悪く、そうなってしまっただけです」
「それはあの者が自分でそう申しておるだけであろう?
その言葉を鵜呑みには出来ぬ」
言葉が、胸に突き刺さる。
言っていることは真実で、俺がサヤの手を引かなければ、彼女はきっと、ここに居なかった。
だが、それを信じてもらう手段が無い。
どうすれば良いのか分からず、焦る気持ちと不安が、大きく育っていく……。
「だが……」
そこで姫様は、困ったという風に、大きく息を吐いた。
「あの者の行動理由が、其方並に、読めん」
そう言ってから、長椅子の背もたれに身を任せた。
「私の身代わりを言い出し、身を危険に晒した。自らだ。
高貴な生まれなら、その様には行動すまいよ。自身の身を守ることを優先するはずだ。
普段も普通に、従者として振舞っておるしな……それを苦にする様子もない。まるで知識量と、行動が、合致せぬ。
その知識についてもそうだ。
見返りも求めぬ……甚だ不可解だ。
何か交渉してくるかと隙さえ伺わせても、全く無頓着であるしな。
本気でただ、そうしたくてそうしておる様にしか、見えぬ。意味が分からん」
姫様のお手上げだと言った態度に、他の二人も苦笑を浮かべた。
それで、少しだけ場の空気が緩む。
サヤのことを、政治的に利用する為に、勘ぐっているのではない様子に、俺は姫様が何を聞き出そうとしていたのかが、分からなくなくなる。
正直、どう答えて良いやら困り、眉を寄せた俺に、姫様までしかめっ面になった。まだ分からぬのかこいつは。と、いう時の顔だ。
「そもそも、疑われたくないなら、特殊な知識など晒さねば良い。
つまりあえて出したのだ! 王家の病を言い当て、我々に恩を売った理由がある筈ではないか⁉︎
其方も其方で、特別なその知識の出所を簡単に晒しよる……もう少し慎重に行動すべきだぞ⁉︎
一体何を考えておるのだお其方らは! だいたい、この様な企てを……」
「姫様……その様な物言いを致しますと、まるで詰問されているかのようですわ」
言葉を重ねようとした姫様を、リーカ様がやんわりと止めた。
ハッとした姫様が、視線を泳がせてそっぽを向く。唇を尖らせて、何やら不満そうながらも押し黙った。
リーカ様は、そんな様子の姫様を微笑ましく眺めてから、俺に視線をやり、優しくにっこりと微笑みを浮かべて。
「レイシール様、姫様は、サヤを心配なさっておいでなのですよ。
どう解釈しても、明らかに高貴な生まれ……その様な方が、性別まで偽って、従者をされているのです。
まだ、成人前である様子ですし……一人親元を離れるには、いささか早すぎますわ。ならば、何か理由があるはず。
そもそも、共のお一人もいらっしゃらない状態で保護したというのは、不可解すぎます。政治的な陰謀があるのではと考えると、王家で保護した方が良いのではないかと、そう思われたのです」
そんな風に言われ、考え至らなかったことに呆然とした。
あ、ああ……そう、か。そういう風に解釈する場合も、あるよな……。
つい、知識目的な、悪意ある者の懸念にばかり意識がいっていた。
俺の様子に姫様は、手間のかかる奴だと肩をすくめる。
そうしておいてから、もう一度。今度は少しゆっくりと、喋り出した。
「……正直、相当な恩を……借りを作ったと思うておるのだ。
ここに出向いた時、私は……今のこの様な形など、想像だにしておらなんだ。
リカルドのこともだ。
あれは……姉上の死から、人が変わってしまったのだとしか……。は、はじめは、何か考えがあってのことだと、思うておったのだぞ⁉︎ しかしな、十年にも渡って、あの態度を貫かれた。何の説明もなしにだ!
……信じ通すことをしなかった私も、不甲斐なかったのだが……」
居心地悪そうに、そっぽを向いたまま、姫様が言う。
だが、あそこまで徹底して演じられてしまうと、正直信じきれないと思うのだよな。
俺はたまたま、運が良かっただけだ。
「正直少し、自暴自棄になっていた……。
其方を無理矢理、巻き込もうとしておったのも……事実、私の意思だ。
途中まで私は……我欲のために暴走しておった」
ポツポツと語る姫様。
自分の非を認める発言に、俺は少々驚く。
はじめの方の姫様は、どこか演技をされている風であったと、俺も思っていた。
サヤを暗に引き抜こうとされてみたり……俺を無理やり近衛にするといった発言をしてみたり、姫様らしくなかった。
だが途中から、その様子は薄れ、今は、特に違和感も無くなっている。
「気持ちが変わったのは、其方が、ただひたすら昔のまま、お人好しであったからだ。
だんだん、罪悪感が強まっていった……更にあのサヤだ。
其方に輪をかけ、お人好し。二人揃うと危なっかしくて仕方がないわ。
駆け引きも何もなしに、病のことをサラリと言われ、其方は優しいから、心配するなと囁かれ、挙句、私の身代わりまで!
其方も相変わらず……思いもよらぬ手法で、私が王となる為の手段を作り出しよるし……。
……まぁ、なんだその……反省、したのだ。
もっと、信じれば良かったのだと。
何もかも、私が、臣を、信じ切らなかったことに起因している。
リカルドとて、私が本気で信を示しておれば……打ち明けてくれたやもしれぬ」
姫様の告白に、俺はふんわりと、気持ちが和らぐのを感じていた。
ああ、やはり姫様は、素晴らしい方だ。有耶無耶に、誤魔化しておけば良いものを、こうして晒し、認めているのだから。
「それでだな……その……何かの形で、其方らに褒美を与えたいと思うておる。
とはいえ、其方はまだ成人前であるし、其方の希望もある。
それでとりあえず、其方にとっては重荷であろう、サヤのことを、こちらで引き受けようかと思い至ったわけだ。
悪いようにはせぬ。あの娘は賓客として扱おう。状況報告も送る。
まだ何か問題があるというなら、隠さず申せ、対処する」
そんな風に真摯に言われ、途方にくれた……。
姫様は、本気でサヤを案じて下さっているように思えた。
王となられる方であるから、国のことを優先するお立場だ。今のこの言葉が絶対ではないだろう。
けれどそれでも、どうしようもなくなった時以外は、サヤを守って下さるだろうということは、伝わった。
サヤが、ただの流浪の民であったならば、それで良かった……。
けれど……サヤは異界の民。
この秘密は、流石に、言えない。
姫様であるが故に、言えない。
この娘の知識はこの国を左右する。
土嚢が既にそうだ。湯屋だって、手押しポンプだって、この国を大きく変えるだろう。
それをサヤ本人が、望んで提供するなら、とやかく言うつもりはない。
けれど、こちらの世界の者が、サヤの知識を搾り取ろうとするかもしれないことが、恐ろしかった。
王家に保護して貰えば、サヤの身は安全だろう。
だが、サヤの心を守ってもらえるか……サヤの意に沿わないことを強要したりしないか……。
姫様がどれほど心を砕き、サヤを保護してくれたとしても、ルオード様や、リカルド様が近くにいらっしゃるのだとしても、安心できない。
皆、サヤよりは国を優先するだろうからだ。
俺だってこの国の者だ。その気持ちは分かる。サヤから溢れる知識に、目を眩ませないとは言い切れないと思う。でも……俺はサヤを守りたかった。
サヤは、何の犠牲もなく、知識を晒しているのではない。
彼女はきっと、何も言わない。一人で耐えようとするのだろう。
正しい保証のない知識を、震えながらでも、求める人に、与えようとするのだろう。
王家や、世界を変えてしまう重圧を、一身に背負って……。
そんな健気な娘を、誰かの手に委ねたくない……。俺自身の手で、力で、守りたい。
けれど……。
俺は、剣も握れない。
今回の様に、争いの場に赴くことが出来ない俺が、彼女を守るだなんて……出来るのかと考えると、気持ちが揺らいだ。
姫様なら……公爵家の方々なら、それが出来ると思う。
だがその姫様や、公爵家の方がそれを強いた場合はどうなる?
サヤに知識を晒せと、強要してきた時、俺は、守れるのか?
コンコン……
思考に引っ張られて視線を床に落としていた俺の耳に、扉を叩く、訪の音が聞こえた。
リーカ様がスッと動いて、来訪者の確認に行く。
程なくして、連れて来られたのは……サヤだった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる